出版社 : 中央公論新社
朝鮮戦争末期、佐世保港の灯を見降ろす丘で米軍水兵が変死した。39年後、事件の真相を追って甥の青年が来日。彼は、当時外人バーのバーテンだった柏村と唐崎を横浜に訪ね、叔父の親友が遺した証言をもとに、二人を鋭く追求する。そこで明かされた事実から、柏村の胸にも、事件当夜不審な動きをしていた唐崎への疑惑が…。だが嫌疑を残したまま唐崎が殺された。ハーバーライトの揺れる港街に、時を経て浮び上がる殺人の謎。長篇推理。
宇宙サミットに招かれた子供たち5人の乗るシャトルにテロ攻撃が。コクピットは大破、飛行士を失った機体は月へ向け暴走。放熱パネルの損傷で温度が上り始めた機内では、自力帰還を主張する少年が、ひそかに通信システムを破壊してしまった。テロリストに自家用シャトルを奪われ、アフリカに不時着したハスミ退役空軍大佐は、連絡を絶った子供たちを救出するため、意外な作戦を提示。日本製シャトル“HOPE”が月軌道へ向かう。近未来アクション。
大阪「海遊館」で葉子の父、名取興業社長の事故死についての疑惑をほのめかした元社員・今泉が、東京ベイエリア「葛西臨海公園」で殺された。彼は、葉子の夫で現社長の輝夫を疑い、水族館に手がかりを捜していたのだ。連続殺人の容疑がかかる輝夫は、今泉の足跡をたどり鳥羽水族館に赴いた。だが輝夫も、風船の揺れる自宅の一室で変死体に。輝夫の残したジュゴンの観察メモに秘められた真相とは…。八木沢警部補の推理が冴える。
果てなき消耗戦のまま膠着状態の戦局がついに動いた。我が伊号潜水艦の殊勲により、米側は空母二隻を失い、残るは旧式小型のレンジャーのみに。この敵機動部隊の弱体化を衝き、〈大和〉以下の戦艦群がガダルカナル沖へ突入、46サンチ巨砲は米軍基地を爆砕し、さらに戦艦ワシントンをも直撃する。勇躍進出した雷電隊も、その大出力発動機と重武装にものを言わせ、敵陸海航空隊と死闘を展開。かくして戦局は重大転機を迎えるのであった。
戦後初めて日本を親善訪問するソ連極東艦隊。だが、艦隊に随伴の補給艦を、自軍バックファイア爆撃機が対艦ミサイルで撃沈。出迎えの海自八八艦隊に囲まれたソ連側の旗艦・スラヴァ級巡洋艦の至近距離でも、巡航ミサイル訓練弾が炸裂した。さらに、海自護衛艦は、合流した両国艦隊に高速で接近する魚雷の航走音を探知。最新鋭のアクラ級原潜まで繰り出し、友軍艦隊を攻撃するソ連。ペレストロイカ後の軍内部にいったい何が…。
華やかなパーティに日米の軍人が集う感謝祭の夜、三沢・厚木・横田の三基地を完全武装の陸自部隊が急襲し、これを無血占領した。破局を迎えた米国との経済対立、核燃料処理施設への米軍機墜落などに業を煮やした日本政府が、基地返還を求めて危険な一歩を踏みだしたのだ。奪還を宣言、軍事行動を開始する米国。だが、先制攻撃でステルス爆撃機B-2の放った対地ミサイルは、国産VTOL艦上戦闘機「海燕」によって撃破されてしまう。
政治的事情で日本の防衛ラインを強行突破した第7艦隊に対艦ミサイルが殺到。無弾頭の攻撃であったが、米軍はイージス艦、空母「インディペンデンス」ほか多数を失う。両軍の被害を最小にし、政治解決を望む自衛隊の戦術で、奇妙な様相を呈する戦争。しかし、徒らに時を費やす頑なな両国首脳と、すでに多大の犠牲を出した米軍の空挺部隊及び海兵隊の投入により、ついに本格的な地上戦が…。日米双方の誤算はいかなる結末を生むのか。
下田の別荘地で、少女が暴漢に襲われて崖から墜死した。別荘にいて、助けを求める少女に気づいたはずの楠本富尼助夫妻は、大量の血痕を残して失踪。さらに富之助の妻の死体が奥多魔湖に浮かんだ!ついに警視庁の大曽根警部は友人の名探偵・滝に協力を要請。「安徳天皇阿蘇潜幸説」の懸賞論文に取り組んでいた滝は、富之助が平家琵琶に魅せられていたことを知り、演奏会のある壇ノ浦へ赴くが…。安徳伝説が語る、哀しき殺意の真相とは?
フランス帰りのコック島千尋が勤めて三日目のレストランを飛び出すと、街はドラコニア騎士団とアカシャ公国の銃撃戦のまっ最中。拐われかけたアカシャの王女フリーダ姫を助けたばかりに、島は大使館に雇われ、国会議事堂の中央塔に幽閉された幸運の一角獣救出作戦に加わる破目になった。銃火器エキスパートの美少女まり子と新米魔術師大塚を相棒に、ドラコニアの殺人鬼と魔術師に挑む島の活躍が始まる!世紀末アクション第一弾。
昭和12年、上海。海軍陸戦隊の砲撃をものともせず、赤い光を明滅させながら機械のように進む銀白色の敵兵。それは中国軍でも欧米軍でもなかった。このとき初めて、人類は敵エイリアンと遭遇したのだ。真相を隠し極秘に対抗兵器を開発する列強。我が参謀本部も三体の“機神”を製造し、アマ相撲の横綱榊大作、パリに遊ぶ天才飛行士真澄公彦、美貌の名射手白蘭花の3名にこれを託す。機神兵団対エイリアン、今ここに未踏の戦史が刻まれる。
国際企業浅田電気の巨大な組織に生じた“ささやかな”異変。それはまず、名古屋VTR工場長の墜死から始まった。次いで、アトランタ現地法人社長の変死。さらに、両方の事件に疑惑を覚えたアサダ・アメリカ社長吉本の本社召還、そして筆頭専務への抜擢。企業の中枢に何かが起きつつある-。吉本がそう確信した矢先、謎めいた中原中也の詩の一節を遺して第三の死者が…。緻密な構成、大胆な展開、期待の新鋭が贈る絶対の自信作。
泥沼した内戦に明け暮しる西南アフリカ某国。ここに、“ヘルガ”と呼ばれ、反政府ゲリラの守護神と化した一輛のソ連製T55戦車がいた。この戦車を駆り、神出鬼没、次々と政府軍を撃破しているのは、日本人の元外交官だという。事態を重視した日本政府は、陸上自衛隊の人員と、実戦テストを兼ねた90式戦車を密かに送り込む。阿修羅の如き戦いの女神“ヘルガ”と、電子装置の魂である国産最新鋭戦車…日本人同士の凄絶な戦車戦の結末は。
日本の海洋観測衛星の修理を担うスペースシャトルが打ち上げ直後に炎上。それを支援する衛星基地“フリーダム2”でも居住モジュールの爆発が…。シャトル損傷の原因追究に燃える機長のハスミ大佐は、愛機が何者かに狙撃されたことに気づく。一方、フリーダム2の研究員秋山は、観測衛星の実体が極秘配備の軍事衛星で、その原子炉が暴走していることを知った。負傷した同僚に代わり秋山は船外活動へ。だがそこに新たな妨害工作が。
フィリピン沖を日本へと向かう再処理済核燃料輸送船。その護衛にあたる海上保安庁長巡視船が、突然攻撃を受けた。巡視船は対艦ミサイルの直撃で爆発炎上。同時に襲撃された輸送船では、テロリストがブリッジを占拠する。中東産油国の依羅で、原油価格の上昇とプルトニウム入手を狙った、伝説的傭兵バックィン大佐の作戦だ。アラブ側の核武装を恐れて介入するイスラエル特殊部隊、そして奪還をめざす陸海空自衛隊の精鋭も現場海域へ…。
物量をもって押し寄せる敵に対し、過酷な消耗戦を強いられる南東方面。「一刻も早い援軍を」と、主人公風間三飛曹らの双戦隊は、四千キロ彼方のラバウルをめざす。単座戦闘機による前代末聞の長距離洋上飛行だ。途中サイパンで、思いがけずも聯合艦隊旗艦〈大和〉の威容に接し、46サンチ主砲の斉射に畏怖すら感ずる風間。だがそれは、無事に最前線まで進出した彼を待ち受ける、想像を絶した殲滅戦のささやかな序曲にすぎなかった。
燃え立つ炎のような草紅葉に彩られる尾瀬の秋。ドライブの足を伸ばして草原を訪れた人材派遣会社スタッフの美雪は、品のある初老の女性と知り合う。だが彼女は美雪に「亡くなった娘によく似ている」と告げ、手作りのミズバショウの造花を遺して失踪した。一方、奥多摩の山中で美雪にそっくりな女性の死体が発見され、しかもその胸にはミズバショウの造花が…。警視庁捜査課警部の叔父とともに真相を追う、美雪の事件簿4篇。
虚無の暗黒に覚醒パルスが走り、またも出現した不可解な戦場世界。日本列島防衛軍は阿蘇要塞を拠点に、対馬海峡をはさんで半島のスミノフ軍と対している。コード1995の新布陣だ。と突然、不気味なスクランブル警報が鳴り響く。敵装甲重爆撃機〈ウランバートル〉の侵攻だ。大カルデラに水素エンジンの轟音を残し、我が成層圏戦闘機〈槍空〉はまっしぐらに天頂へ…。SF軍略小説。