出版社 : 中央公論新社
国際企業浅田電気の巨大な組織に生じた“ささやかな”異変。それはまず、名古屋VTR工場長の墜死から始まった。次いで、アトランタ現地法人社長の変死。さらに、両方の事件に疑惑を覚えたアサダ・アメリカ社長吉本の本社召還、そして筆頭専務への抜擢。企業の中枢に何かが起きつつある-。吉本がそう確信した矢先、謎めいた中原中也の詩の一節を遺して第三の死者が…。緻密な構成、大胆な展開、期待の新鋭が贈る絶対の自信作。
泥沼した内戦に明け暮しる西南アフリカ某国。ここに、“ヘルガ”と呼ばれ、反政府ゲリラの守護神と化した一輛のソ連製T55戦車がいた。この戦車を駆り、神出鬼没、次々と政府軍を撃破しているのは、日本人の元外交官だという。事態を重視した日本政府は、陸上自衛隊の人員と、実戦テストを兼ねた90式戦車を密かに送り込む。阿修羅の如き戦いの女神“ヘルガ”と、電子装置の魂である国産最新鋭戦車…日本人同士の凄絶な戦車戦の結末は。
フィリピン沖を日本へと向かう再処理済核燃料輸送船。その護衛にあたる海上保安庁長巡視船が、突然攻撃を受けた。巡視船は対艦ミサイルの直撃で爆発炎上。同時に襲撃された輸送船では、テロリストがブリッジを占拠する。中東産油国の依羅で、原油価格の上昇とプルトニウム入手を狙った、伝説的傭兵バックィン大佐の作戦だ。アラブ側の核武装を恐れて介入するイスラエル特殊部隊、そして奪還をめざす陸海空自衛隊の精鋭も現場海域へ…。
物量をもって押し寄せる敵に対し、過酷な消耗戦を強いられる南東方面。「一刻も早い援軍を」と、主人公風間三飛曹らの双戦隊は、四千キロ彼方のラバウルをめざす。単座戦闘機による前代末聞の長距離洋上飛行だ。途中サイパンで、思いがけずも聯合艦隊旗艦〈大和〉の威容に接し、46サンチ主砲の斉射に畏怖すら感ずる風間。だがそれは、無事に最前線まで進出した彼を待ち受ける、想像を絶した殲滅戦のささやかな序曲にすぎなかった。
燃え立つ炎のような草紅葉に彩られる尾瀬の秋。ドライブの足を伸ばして草原を訪れた人材派遣会社スタッフの美雪は、品のある初老の女性と知り合う。だが彼女は美雪に「亡くなった娘によく似ている」と告げ、手作りのミズバショウの造花を遺して失踪した。一方、奥多摩の山中で美雪にそっくりな女性の死体が発見され、しかもその胸にはミズバショウの造花が…。警視庁捜査課警部の叔父とともに真相を追う、美雪の事件簿4篇。
虚無の暗黒に覚醒パルスが走り、またも出現した不可解な戦場世界。日本列島防衛軍は阿蘇要塞を拠点に、対馬海峡をはさんで半島のスミノフ軍と対している。コード1995の新布陣だ。と突然、不気味なスクランブル警報が鳴り響く。敵装甲重爆撃機〈ウランバートル〉の侵攻だ。大カルデラに水素エンジンの轟音を残し、我が成層圏戦闘機〈槍空〉はまっしぐらに天頂へ…。SF軍略小説。
内戦の続くアフリカ某国で撮影された一枚の写真。そこには、行方不明の日本人外交官と、彼の操縦する反政府軍のT55型戦車が写っていた。スクープを求め、東京からアフリカへ飛ぶルポライターとカメラマン。一方、政府軍を支援するソ連軍事顧問団は、ゲラリ基地壊滅と自国製戦車の破壊を目的に、対戦車ヘリ部隊を送り出す。だが密林の奥には、日本人とロシア人を待ち受ける血も凍る“地獄”が…。第三世界の戦場を描く迫真の長篇。
北海道瀬田寒原野の地霊=犬神が封じられ、原野が犬頭形の陥没と化して半年余。またも頻発する怪事件の霊査を依頼され、オカルトライター兼占い師の稲村虹子は札幌へ飛んだ。原野を鳥瞰する虹子の“魔法の鏡”に映ったものは、黒魔術の謀略によって三たび目覚め、札幌に向けて首を伸ばす巨大な犬の顎であった!凶獣を操る妖艶な女魔術師に挑む“赤い魔女”虹子の凄絶な霊的死闘。『凶獣幻野』ほか〈民遺監〉三部作に続く新シリーズ第一弾。
原潜銀座、対馬海峡に米軍が密かに設置した最新の水中聴音装置DESBEL。これを入手しようと企てるソ連の特殊潜水艇〈ミゼット〉。だが潜水艇の接近は、聴音装置防御用の魚雷発射式機雷を目覚めさせてしまった。被弾しながらも目的の装置を奪取したソ連潜と、国際海峡を封鎖してしまった米軍の機雷により、日米ソ間に極度の緊張が。自衛隊唯一の実戦経験部隊であり、米ソをもしのぐ装備を持つ海自掃海部隊とP-3Cの協同作戦は。
細胞複製制御酵素、すなわち不老不死の可能性を発見した直後に行方不明となった朝倉。その妻菜緒子も誘拐され、彼女の愛人で朝倉の同僚だった達也も襲われる。執拗に達也を襲う製薬企業と自衛隊衛生局特別班。どうやら彼は、不老酵素の情報を封入したカプセルを、知らずに呑んでしまったらしい。達也の体内にある情報を手に入れようと手段を選ばぬ巨大組織。菜緒子を救出し、自らを守るために、達也は一発逆転の奇策を仕掛けるが。
局地群発地震、アベックの連続失踪、跳梁する屍食鬼…、多摩丘陵に怪事件が頻発する。地下壕に埋めた旧日本軍の高射砲を発掘する元砲兵隊長を取材中の共時通信記者田外は、壕内に若い男女の射殺死体を発見。だが眼前で同僚が黒く毛むくじゃらの醜悪な影に貪り食われてしまう。-黙々と屍食鬼を狩る自衛官。陸自〈民族遺産監理室〉最後の霊的謀略とは?司祭服に身を包む美貌の魔術師香月が喚起した〈火の王〉に88式野戦高射砲が火を吹く!
ソヴィエト大使館のほど近く、元総会屋で闇情報誌の編集長が経営するバァ-その名も〈もぐり酒場〉。いかにもヤバそうなこの店の常連たちが拾ってくるのはトラブルばかり。輸入したウイスキーはミサイルに化け、純な“プロレス者”は占領軍の秘密資金ネタに首を突っこんだ。ヤクザの組長の一人娘の家出騒ぎは誘拐事件になっちまい、皇居外周グランプリ・レースにゃ銀行強盗の逃走車が飛び入りして…。連作スラプスティック・コメディ。
横浜へクルーズ中の動く海上都市“クイーン・エリザベス2世号”が、アメリカ海軍の元軍人たちに乗取られた。さらに彼らは、ソ連の最新鋭戦略原潜“レニングラード”と洋上で会合し、核魚雷の弾頭をQE2へと移す。与党ナンバー2の政治家、米国大統領令嬢夫妻らを乗せた豪華客船と、240発の核を搭載した大型原潜。東京湾へと近づく両艦に対し、米軍グリーンベレーと海上自衛隊対潜哨戒機P-3C部隊による攻撃が命令された…。
QE2乗取り呼応して、ソ連のバルト三国で民族主義者が組織的に峰起した。東京とQE2を人質に、核ミサイルの目標をソ連へと変更する横浜沖の原潜“レニングラード”。ソ連は米軍機に擬装したスホーイ-25を東京上空に浸入させるが、乗取り犯から情報を得た航空自衛隊のF-15に迎撃される。たび重なる情報漏れに疑心暗鬼となる米ソ首脳、そして両国情報機関。日本は海上自衛隊潜水艦“ゆきしお”の大胆な作戦にかけるが…。
どうってことのない地方都市に住む、どうってことのない刀根家の人々が、どうってことのない蒸し暑い日に、とんでもない事件に巻き込まれた。妻は不倫のあげく過って殺人を、長女は時効まぎわの犯人と逃避行を。夫は出張先の東京で謎の女と怪しげな行動を、長男は幼い女の子を守って見えざる敵との戦いを。そして姑はバスジャックの人質に…。はたして刀根家の人々にどうってことのない平和な生活は再び戻ってくるのか?
チャイナタウンに変貌した新宿を襲った武装ヘリ。東京湾上テレポート・シティに巣喰う新興暴力団が傭兵部隊を組織し、対立する中国系マフィアに全面戦争を仕掛けたのだ。対都市ゲリラ戦のエキスパートである陸上自衛官・公文梓は、2大勢力殲滅の特命を受け、壮絶な市街戦に巻き込まれて殺された弟の復讐の念を胸に、単身無法地帯と化した新宿に潜入する-。
11年前に演習の標的となって撃沈されたはずの護衛艦“あきつき-44”が、再び玄海灘に姿を現わした。溶け爛れた艦橋、脈打つ砲塔…。乗組員と融合し、変わり果てた姿で異次元との間をさまよいつつそれは北上を続ける。取材に赴いた共時通信記者・田外は、幽霊軍艦を生んだ悪魔の計画『SSB実験』の存在を知る。禍禍しき凶艦を操る陸上自衛隊〈民族遺産監理室〉の壮大な陰謀とは?“田外竜介シリーズ”第2弾、長篇オカルト・アクション。
西南アフリカの某国に内乱が勃発。反政府軍に包囲された臨時首都には、救援機の飛来に望みを託す外国人と、精霊に祈るしか術のない黒人難民がひしめく。その中に日本人農業指導員都筑の姿もあった。慢性的飢餓の街を封鎖するたった2輌のソ連製T55戦車。郊外の病院がそのキャタピラに蹂躪されたとき、凄惨な遺体と瓦礫を前に都筑はこの怪物を倒す戦士と化した…。アフガニスタン内戦を経験した著者が描く迫真の戦闘冒険小説。