出版社 : 中央公論新社
バウィラノス軍の侵攻を食い止めた新将軍アシュラウルは不敗の防衛体制を築くことで聖戦という名の殺戮の終結を目指すだが、久々の勝利に酔いしれる王達は更なる勝利を要求するのだった暗澹たる思いを抱いて敵情視察に出たアシュラウルの前に現れたのはいまやバウィラノスの執政となった最愛の妻モアラの姿だった。
オイル・ロード防衛の任を帯びペルシャ湾に派遣された日本艦隊。そこに、暴発した一部イラン軍がシルクワーム・ミサイル多数を撃ち込んだ。突然の飽和攻撃で、旗艦「しらね」を失い、空母「信濃」も深手を負ってしまう。あまりの犠牲に、艦隊の帰投を命ずる日本政府。しかしこの間、東アジア情勢に深刻な緊張が生じていた。南沙諸島の権益をめぐり米中が衡突、米機動部隊艦載機が中国空軍機を撃墜してしまったのだ。母国をめざす「信濃」の行く手には、続々集結を開始する米中空母の艦影が。
カイムジェサ帝国との決戦に向けて戦備を整える神皇帝アシュラウル。その足元をすくうかのようにニーヴァン王エルダーンが叛旗を翻した。人間の野心とはかくも激しく、愚かしいものなのか。苦い想いを胸に、アシュラウルは単身陰謀渦巻く王都へ飛ぶ。だがそれは、さらなる騒乱の序章にすぎなかった。
〈奎〉国が奇襲により、〈衛〉国を大破した巨鹿関の戦いから半年。〈魁〉国の和議によって一旦は保たれた中原の秩序だが-。太宰・冰子懐を通じ〈魁〉国の実権を握ろうと謀る〈征〉公・魚子吾。短期に力を回復し、中原の表舞台へ討って出んとする〈衛〉公・耿無影。興隆する時代の勢いはとどめようもない。各地に広がる不穏な噂に、奇怪な天変地異。〈魁〉国の滅亡は天意なのか?中国ヒロイック・ファンタジー待望の第2弾。
時の杜高校三年の美少女殺害にはじまる連続殺人事件に第六の犠牲が。精神分析医鰐渕吾郎を襲った鹿頭の怪人は、しかし駆けつけたFM・TIMEの守衛によって射殺された。明らかになる殺人者の意外な素顔。一方、時の杜ホテルの地下に潜入した里見捜査官は、暗闇の中で出会った、実はボケていなかったバード爺さんから驚くべき真相を聞かされる。四十八年前の“姫神の大祭”で何があったのか。時の杜転覆計画とは。次々と明らかになる秘密。が、時の杜の真の悲劇はまだ闇の中にある。
深刻化するエネルギー危機の打開策として、日本政府が東南アジア某国で推進した液化天然ガスプロジェクト。そのプラントが何者かに襲撃され、日本へ向かうLNGタンカーも国籍不明の武装船に狙われる。政府は重大な決意を秘め、強引な国会運営で日本初の原子力空母出撃を決定。…鼻をつくジェット燃料の臭い、甲板員を圧倒する轟音と熱風、そして時折り頬をなでる潮風。激しい訓練に明け暮れる乗組員と艦載機パイロットを乗せ、戦後の日本が保有する最強の軍事力「信濃」は一路南へ。
1998年、横須賀に入港した艦番号も艦戦機も見あたらぬ一隻の大型空母。日米首脳の間で交わされた空母購入の密約がついに実現したのだ。米海軍に派遣され着艦資格を得た空自パイロットが集められ、空母乗り組みを経験した海自隊員も横須賀へ。搭載機F4Jファントム改と、VTOL戦闘攻撃機ファイティング・ハリアーの実戦配備も着々と進む。度重なる湾岸戦争に端を発した深刻なエネルギー危機のさなか、日本初の原子力空母「信濃」に関わった男たちの壮絶な運命は…。
華と呼ばれる中原が5国に分裂した五王時代、士太夫・耿家の庶子無影は自らの1族を滅して衛国王位を簒奪。再従兄弟以上に離れた彼を実の兄のように慕ってきた耿淑夜は、1族の仇とその命を狙い、失敗。半死半生で追われる身となったところを夜光眼の戎族、赫羅旋に拾われて、魁国の商家にかくまわれる。2人の確執を核に中原に戦いの火の手が上がる。新しい中国歴史小説の旗手が織りなす壮大なヒロイック・ファンタジー第1巻。
時の杜転覆を計画した美少女、地元FM局の人気DJ、時の杜病院院長、県警の女性刑事、わずかの間に4人もの犠性者を出した時の杜地区で、またもや凶行が。5人目の被害者は街の長老、十文字隼人であった。しかも時を同じくして、女性ばかり5人が行方不明に…。時の森の巨大な地下洞窟に出入りする美女たち、土中に埋められていた時の杜ホテルの1,2階部分、そして49年ぶりの“姫神の大祭”とは。里見捜査官の鋭利な頭脳と果敢な行動が神秘のベールを引き剥がしてゆく。
醜男、ぐうたら、助平。そんな八卦見足跏堂十六斎に若くてきれいな押しかけ女房がやってきた。思わず足相占いの仕事にも精を出したら、そこへ来たのが時の老中井伊直弼。彼の死を言い当てたことで、攘夷派対開国派の争いに巻き込まれてしまう。歴史上の大物入り交じっての剣劇も当の本人には有難迷惑。足袋屋から紛失した皇族の足型集“禁裏御みあし帖”の行方占いを頼まれて物騒な江戸を逃れていそいそと京に向かった十六斎だが。
和宮替え玉工作の真相を秘める“禁裏御みあし帖”は人手を転々と。折しも和宮降嫁が決行された。岩倉具視・長野主膳の確執、西郷吉之助・武市半平太・桂小五郎の悲願、忍部衆・公儀隠密の暗闘…。降嫁の行列は様々な人の思惑をはらんで中山道を。時を同じくして十六斎も心形刀流の剣士でもある女房・菊絵の死相を案じ、京を離れ江戸へ。死相の薄れる方角をと心がけるうちに行列の後を辿って旅することになった2人に新たな危難が。
高校3年の夏、女生徒がマンションの屋上から落ちて死んだ。受験の悩みか、イジメの問題か。だが、担任教師の亜木子は、彼女が妊娠しており、死の直前に男から呼出の電話を受けていた事実を知る。受験で歪んだ学校では、いったい何が起きているのか。男性教師の不審な行動に疑いを抱く亜木子。彼女は、恋人で大手予備校の人気講師田辺の助けをかり、女生徒の死の真実に迫ろうとするが…。教師の経験を持ち、受験生の母を体験した著者が、入試をめぐる驚愕の現実を背景に描く力作推理。
街の有力者の娘、一色舞子殺害に端を発した“時の杜”の連続殺人。事件の容疑者で検死マニアの病院長が射殺され、男まさりの女性刑事草薙までもが犠性となるに至って、里見捜査官は窮地に。一方、「時の杜タイムス」の情報係には、街の美少女の1人、早川紫音から“私は犯人を見た”というFAXが届いた。…記憶の回復につれ、謎めいた言葉を口にする紫音の母、霧子。密かに森の岩屋を訪れる祖母の歌子。時の杜の美女たちが動き始めるにつれ、ツイン・ピークス的世界の謎が次々と明らかに。
警視庁捜査1課の村岡刑事は、久々の休暇で神戸の旧友を訪ねた。初恋の人・野本由加との再会に甘い期待を抱く村岡だが、北野異人館近くで起きた殺人事件の容疑者を目撃、更に翌日、旧友の妹の恋人だった男の殺害現場の第一発見者となり、警察の厳しい追及を受ける破目に陥った。偶然か、罠か。村岡の容疑を晴らすべく異人館、三宮、ポートアイランドとその足跡を辿る八木沢警部補の胸に由加への疑惑が深まってゆく…。長編旅情推理。
東アフリカ小国の大統領が軍事施設を視察中、突如飛来した巡航ミサイルで爆死。事件に関わる日系製薬会社の研究衛星を調査するため、NASAの飛行士レベッカは軌道上へ。真の攻撃目標が隣接する化学プラントだと気づいた彼女は、BC兵器を巡るアメリカ軍官複合体の謀略を察知。その時、無人衛星から化学弾頭が発射された。悪魔の実験の標的とされたアフリカで、雇われパイロットのハスミは往年の名機F-16を駆り決死の迎撃に向う。
聖地解放を大義名分に、イラク軍がサウジ・アラビアへ侵攻。日韓および欧州諸国からなる国連軍派遣が決定される。消極的な米国をしりめに、民航機、トラック、果てはロシアの巨大輸送機まで動員、奇跡的短時日のうちに大量の兵力を展開した陸海空自衛隊。初の実戦にもかかわらず、中東の戦場では、ストライク・イーグル、90式戦車など最新のハイテク兵器が活躍する。だが国内では、潜入したテロリストにより数千もの犠牲者が。
芝浦のディスコ、渋谷駅前など、相次ぐテロで戦場を上回る死傷者が続出し色を失う政府。湾岸でも、旧ソ連軍の3個師団がロシア政府の統制を離れ、その軍備ごとイラク軍に参加、国連軍は苦戦を強いられる。さらにイラクは、ソ連解体のおり密かに持ち出された戦術核弾頭を手中にしているという。核の恐怖に直面し激戦に消耗する現地部隊、テロの恐怖におびえ日常の基盤が揺らぐ国内。日本人と日本社会が体験する国際貢献の現実とは。
長野県警の里見捜査官は再び語る。「第一の犠性者、一色舞子からの手紙を受け取っていた地元FM局の人気DJ日向基樹が、なんと生放送中のスタジオで射殺された。しかも、鹿頭の怪人に。我々捜査陣への挑戦だよ、これは。-それにしても、この時の杜地区は2つの点で捜査がやりにくい。外部の人間に対して異様に排他的であることと、女性たちが謎めいて美しいことだ。ぼくは、すっかり時の杜の“謎”の虜になってしまったらしいよ」ツイン・ピークス形式の連続長篇ミステリー第2弾。