制作・出演 : フィラデルフィア管弦楽団
1,000円でオーマンディとフィラデルフィアの「ロマンティック」を楽しむ。考えようによっては、いや深く考えなくてもこれはお得だ。彼らはこの曲をこんな風に演奏していたんだ、と考えるだけでもよい。豪華絢爛なブルックナーだが、辻褄はあっている。
いわゆるオーマンディ・サウンドは、メロディアスな名曲にこそ効能が現れる。甘美なショパン(ダグラス編曲)、優雅なドリーブ、それぞれの旨味を熟知した歌いまわしで魅了する。よく鳴るオケも魅力のひとつ。オーマンディ絶頂期の名演といえる1枚だ。
オーマンディの演奏はことさら深刻でもないし思索的でもないけれど、だからといって底の浅い音楽ではない。音楽のあるべき響き方を求め続けた指揮者といえる。「英雄」の正当的な表現にそれがよく表われている。バーンスタインの「レオノーレ」も鮮烈。
オーマンディといえば、デザート専門みたいな扱いを受けているが、メイン・ディッシュだって凡百の指揮者の及ぶところではない。オケをあやつる腕は確かだし、決して悪どい味付けをしないところがミソ。スコアの改変には時代を感じるが、清朗な良さがある。
(1)は小澤初期の録音で、世界初CD化。これはオーケストラがそれほどうまくはないし、録音もシャリシャリ気味だが、演奏そのものは後年のものよりもいい。こっちの方が音楽の流れがに勢いがあるのだ。(2)のミュンシュは後半になって本領が発揮されている。
オーマンディはチャイコフスキーを得意にし、「悲愴」は5回も録音していた。ここで聴かれるのは3回目の録音。雄渾な棒さばきでフィラデルフィア・サウンドを駆使して、シンフォニックな魅力を表出している。この価格で価値ある演奏が聴けるのはうれしい。
3曲とも演奏団体が異なるが、総じて明るく、弦楽器の光沢のある豊かな響きが典雅な雰囲気を醸し出している。モーツァルト2曲はやや旧タイプの正統的な演奏だが、「四季」には時々「ンッ!?」と思う瞬間があり、結構侮れない(特にチェンバロ)。
59年収録とは思えないほど新鮮な音。ワーグナーの音楽の中には、明・暗の二面性が混沌としているが、明の部分に光を当てた演奏なら何といってもオーマンディだ。フィラデルフィアoをフルに鳴らした豊麗なサウンドの世界は、いまだに輝きを失っていない。
58,63年の録音だからハイファイとはいかないが、音色的にはとてもきれいで十分幸せになれる。ストコフスキー、オーマンディの長期政権で確立されたフィラデルフィア・サウンドと細部までみごとにかみあうアンサンブル。1000円は絶対にお買い得。
「展覧会の絵」と「シェエラザード」というロシア物の双壁がなんと1000円という廉価で登場。ダイナミックな音響と表現の多彩さで知られるオーマンディならではの滋味にあふれた秀演である。オケの醍醐味が十二分に伝わる1枚だ。ジャケットの写真もなかなかいい。
オーマンディはこれらの曲を得意としていて、数年後RCAに再録音している。音はその方が良く(5)など多少聴き劣りする。しかし演奏のコンセプトはほぼ同じ。(1)などこの方が溌剌としていて良いくらいだ。コストパフォーマンスの高い名盤としてお薦めしたい。
バーンスタインがフランス国立oを指揮した近代フランス作品。(2)の色彩感と躍動感は期待したほど派手ではないが管楽器の音色が際立ち、十分魅力的。同じフランスものながら後半のオーマンディが持つオーソドックスなカラーとの対照性が面白い。
カラヤンしかり、オーマンディしかり。やはり並の指揮者ではこうした曲を楽しませられない。少しもイヤ味にならずにツボを心得た表現は、強烈な個性には欠けるものの、オケがとびきり上等なこともあって、ゴージャスな喜びを与えてくれる。名匠の技だ。
まるで学校の音楽の授業の教材用という選曲。要するにオーケストラ入門なのだ。手元にスコアを置いて聴くにはもってこいだろう。演奏者も断る必要がないほど一流の人たち。50年代の録音はヒスが少し気になるが。