制作・出演 : 伊福部昭
2004年に91歳で亡くなった伊福部には根強いファンがいて、キングレコードでも10枚に及ぶアルバムがリリースされている。今回は彼の名を冠した音楽祭のライヴ。映画のための作品と管弦楽曲からアピール性の高いものが選ばれているので、伊福部ワールド入門にはぴったり。
東西が混交する地平で南と北の風土を幻想する。現れ方こそ違え、ともにカラダの底に浸み込んだいわば骨がらみの音だ。長くお蔵入りしていた伊福部の出世作の録音が興味深い。音の立ち現れるさまを確かめるごとく、ゴツと音楽に共振していく。その情動の形がいい。
『ゴジラ』のテーマであまりに有名な伊福部昭だが、ここではオリジナルの吹奏楽作品「吉志舞」や代表的な管弦楽作品の吹奏楽編曲版など、吹奏楽による伊福部ワールドが展開されている。特有のリズムと日本的な旋律がどこか懐かしく、気分が高揚してくる。
発売元
キングレコード株式会社卒寿を祝いながら、1930、40、50、80年代の代表的作品で、この作曲家の軌跡を追ってみようという企画の記録。親しみ易い作風の中に、この作曲家が込めた多彩さと入念さを確認できる。日フィルものっており、会場の熱気も相当なものだ。「釋迦」は初録音。
民族楽派などと呼ばれもするが、伊福部の場合、それは多層的で、ここでも、日本的なもの、東南アジア的なものが強く反映していて、さらにそれが重層している。(2)は82年の作だが、そうした作風は基本的に変わっていない。真に個性的な作曲家だ。演奏も不足はない。
ひさびさのゴジラもの(91年)と東映アニメの名作(63年)が並んでも実に調和がとれていて奥深い展開が連関しているのはさすがというほかない。どちらも2003年晩夏の録音。情景全体、空の動きと人や動物の脈動さえも描き出されている。偉大なる音楽家ゆえの作。
伊福部と芥川が師弟関係にあったことを考慮して聴くと、芥川が伊福部からどのような影響を受け、その上で自らの語法をどう構築していったかが分かるように思える。日本の現代歌曲も面白いものだと、この1枚を聴いて認識を新たにした。
伊福部のごく初期の作品を集めたアルバムです。民族派とか土俗派とかいわれますが、もっと広く原日本的なバーバリズムともいえるスケールをもっている人です。広上の小気味よいリズム感とダイナミックな指揮が、曲の深層をみごとにつかみだしています。
まずは画期的な企画に拍手。只今絶好調の広上が作曲者監修の下、手兵の日フィルを振る。これで演奏が悪かろうはずがない。後世に残る仕事である。収録の2曲は、日本人特有の土着リズムと美意識が見事に表現された傑作。「バラン」の世界を彷彿とさせる。
《サロメ》はお馴染みワイルド原作の濃艶猟奇物語をバレエ化した大作。伊福部の音楽の「まっすぐな」持ち味とは異質に感じられる題材で、さすがにコッテリと官能したたり落ちたりはしないが、ゴツゴツ煽り立てるリズムと音色の野趣が案外妖しく危ない。
「伊福部昭のSF交響ファンタジーか、どれどれ」とCDをスタートさせたら、鳴り出したのはバリバリのトロンボーンによる「ゴジラ」。その後も出るわ出るわ、キングギドラやキングコング。つまるところは、伊福部映画音楽メドレー。イキのいい演奏が楽しい。
発売元
キングレコード株式会社日本のちょっと古い曲が流行っててうさん臭いが、伊福部氏の場合は素直に受け入れたくなるから不思議。評論家の軽い言葉とは裏腹に、氏の飾らない解説からもその音楽からも、時代のリアリティとバイタリティがずっしりと伝わってくるからだ。