制作・出演 : 岩城宏之
イギリスで活躍したドイツ人のヘンデルやロンドンで作曲したハイドンの交響曲なども含んだ、イギリス編の第1巻。充実した解説が付き、初心者でも、BGMなどとして楽しむことができる充実のコンピレーション。
スケール感と鋭い感性が売りのマイヤースも、熟成した大人の音楽を演奏するようになったと感心。ブラームスでは、OEKならではの透明感のあるアンサンブルと誠実な演奏がすがすがしい。前に出過ぎない岩城の棒は、演奏者たちの音楽する喜びを引き出してくれるのだ。
一晩でベートーヴェンの9つの交響曲を全部やってしまおう。しかも同じ指揮者と同じオケで。なおかつそれを、2004年の大晦日から2005年元旦にかけて。という壮大(?)かつ画期的な企画をやってしまったのが岩城宏之。オケはN響メンバー。“振るマラソン”と称するだけあって、演奏家もお客もトライアスロン状態になること必至だが、それゆえに“無我の境地”へ達することができるかもしれぬ。近年の岩城らしく、主観や無用な力みを排し、音楽自体を自然に高揚させる演奏からは、確かに“無我”の響きが聴こえる。
彼女もまた、クラシック音楽の“今様”を目指すひとり。繊細な美声は、確かにポップなバッキング、プラグドの環境でこそ真価を発揮するタイプ。クラシック出身らしく、作品への愛情が強く伝わってくる歌だが、今一歩のアクがあると、より一般から評価されそう。
松村禎三の新曲(OEKの委嘱)「ゲッセマネの夜に」を聴けるのが嬉しい。ユダがイエスを売る場面を、さながら映画の1シーンのごとく、闇に包まれた重苦しい緊迫感で描く。ただ、もう少し演奏に清澄さがあれば。シューベルトはクセのない運びが好印象。
権代の曲は、このオーケストラが持っている響きの透明さを見事に生かしきった作。ブラームスのほうは、ある程度軽さが生じるが、岩城は、テンポ、フレージング、内声部をきちっと作り上げるなどして、ブラームスの持つ充実感やスケール感を生み出している。さすが。
聴く人によってはディズニーの「ファンタジア」を連想しそうな、お伽噺の世界に入ってゆくかのようなジュリアン・ユーのアレンジ(味付けには中国テイストも)が何と言っても話題だろう。しかしそれを精緻に再現する演奏のクオリティが評価されるべきアルバム。
谷川俊太郎の詩に触発された2作。ことばの一語一語に濃密に音で交わる三善の重さに対し、映像のための音楽のようにことばの情景を音でリアライズする武満の軽さが想いに柔らかい。室内オケに縮小された響きと少女を演じる吉行の語りが実にインティメイトだ。
オーケストラ・アンサンブル金沢の2003年の2回の演奏会から現代若手の作品を3作収録(ライヴ)。高木綾子による秀逸なフルート演奏が聴きものの一ノ瀬トニカ作品や、複雑なテクスチャーによるバイオレントな猿谷の難曲など、クオリティの高い演奏で聴かせるのはさすが。
半世紀を越す指揮者生活を重ねる岩城がOEKに注ぎこむ情熱のほどが偲ばれる録音。スタンダードな手堅いアプローチで隅々まで行き届いた采配、それに素直に応えるオケ、結果、作品は自然な流れを獲得する。当たり前のようでいてじつは得難い音楽の悦び。