制作・出演 : 東京混声合唱団
最高の音で楽しむために!
長い間にわたって愛唱されている合唱曲をオーケストラと共演した(武満作品を除く)2010年3月のライヴ録音。やや小振りの合唱とオーケストラの音楽的相性はいま一歩で、両者の付き合いの浅さを感じさせるが、聴き手の心を踊らせる演目を堂々とこなす横綱相撲の貫祿は両者ともさすが。再勝負への期待がふくらむ。
“架空の祭り”だというシアター・ピース風の「合唱のためのコンポジション第8番」、絶対的音高がなく、リズムと相対的な音の高低だけで書かれた“しゃべる”合唱曲「4つの絞首台の歌」ときて、ブラームスが“民謡”の世界への橋を渡す。自作自演の域を大きく超えたプログラムの妙、歌手たちが熟した芸で応えるさまに、ただ脱帽。合唱ファン必聴。★
情感の罠にはまりやすい三善+谷川コンビの作品が、少し距離をおいて冷静にうたわれていることが、この盤の大きな魅力といえよう。山田和樹のユニバーサルな音楽性、プロ合唱団らしい透徹した歌唱力が、“熱い”作品群をスタイリッシュな境地へと誘おうとするさまに、思わず襟を正したくなる。
柴田南雄(1916〜1996)は前衛的技法を集大成し、後半生は過去の音楽を混合・総合して新たな方向を示した。民謡や古旋律が交錯し寸劇も入る「銀河街道」には、多様な素材の再構成という創作原理が凝縮されている。充実のブックレットで資料的価値も高い2枚組。
ポップスとしての“社歌”というコンセプトで制作された企画盤。典型的な社歌は1、3、10、15曲目くらいで、ほかは企業のイメージ・ソングの類。萬Z(量産型)の12曲目も社歌だ。発売元、キングレコードの社歌18曲目は戦前の国民歌謡のようだ。歴史を感じる。
人生の盛りという年齢で世を去った小山薫。自己の内なる想いやイマジネーションを突き詰めて追い込んで響きに映し換え音楽のかたちに結晶させるその音楽は、“情念”という懐かしい言葉を強く思い起こさせるが、澄明な響きの美しさが、聴く耳を重くさせない。