アルバムのタイトルは『ファンタジー』。バロックから近代までの、イマジネーションの閃きを綴った曲が集められている。それを躁と鬱の対比と捉えた場合、小菅の演奏は鬱よりも躁に美質が光る、いわば“前向きのファンタジー”。とても健康的である。
2005年11月14日、小菅優のカーネギー・ホール・デビューのライヴ録音。カーネギーの小ホール(ワイル・リサイタル・ホール)でのリサイタルで、その演奏には、20歳過ぎとは思えない落ち着きがあり、親密感に満ちている。バッハ(ブゾーニ編曲)の「シャコンヌ」やベートーヴェンの「熱情ソナタ」などの重厚な曲が続くが、その最強音は、決して力ずくにならず、常に程良い大きさで鳴らされる。そしてピアノらしい音色感が素晴らしい。もちろん、ハイドンでの軽快さやリストでの技巧性もとても魅力的である。 2007/01/17 発売