1990年2月発売
三代目 桂三木助名演集 一三代目 桂三木助名演集 一
三代目・桂三木助が死ぬまで守り続けた“美学”を感じとりたいなら、やはり「芝浜」を聴くしかない。“江戸前”の味を精魂かたむけて追究した、その成果がここにある。ただ、その三木助美学に心をひかれるか、反発を感じるかは、もちろん聴き手の自由だ。「三井の大黒」は昭和35年11月の収録。その二ヶ月後に黄泉へ旅立った。つまり、最後の高座がこれというわけだ。さすがに辛い。
八代目 三笑亭可楽名演集 一八代目 三笑亭可楽名演集 一
三笑亭可楽の落語に、どうもなじめなかった。子供の頃の話だ。渋さなんていうものが理解できるようになってから、この人の芸が少しずつ面白くなった。もっとも、今だってどこまで“渋さ”がわかっているかは……。それはさておき「うどんや」「反魂香」などは、この人でなければ、と思う。「らくだ」は迷うなあ。志ん生もあるし。それにしても不思議な味を持った落語家だった。
八代目 桂文楽名演集 一八代目 桂文楽名演集 一
ひとつの噺を高座にかけるまで、三年以上もかけたという。ノートにきっちりとストーリーを書き、添削を重ね、ようやくあの格調高い“文楽の芸”が完成したのだ。いわば、完成品のみを提供し続けたわけだ。その結果が29席の持ちネタとなった。やはり、なんといっても『明烏』だろう。文楽をしのぐ『明烏』は、まず当分あれわれないと思う。それくらい完成された、至極の芸なのだ。