1997年9月22日発売
聖歌には美しい曲がたくさんあり、中には名曲のフレーズを聖歌に取り入れたものもある。これは、そんな素敵な聖歌の数々を合唱とオーケストラで演奏した意欲的なアルバム。惜しいことに鑑賞用には洗練度不足な気もするが、一緒に歌えばきっと楽しい。
この手のアルバムは宗教者の方々が聴くのだろうか。曲そのものにはよく書かれたものもあるが、編曲の多くはあまり感心できない。歌唱の中にも、聴くのにつらいものもあり、せっかくの聖歌の歌詞が伝わらないものも。敬虔な、というよりは明るい聖歌だ。
参集者一同が心を合わせて唱和する。すべからく信仰の基本であり、神聖な儀式を彩る調べでもある。ここでは歌の上手い下手は問題にならないのである。当盤には黒人霊歌を含めアメリカ、イギリス起源の比較的新しい曲に日本語の訳詞をつけた聖歌を収録。
ア・カペラのグレゴリアン・チャントとはだいぶ、趣を異にする。聖歌とは何?無宗教者にはふだん馴染み薄いが、標題曲のタイトル通り、人生の海の嵐などに出会ったとき、平安を与えられ、随分助けられるものだろう。グレゴリアンが人々に支持されたように。
全7集の『聖歌100選』のうち第5集では、「証し・宣教・再臨」をテーマに、『讃美歌集』にも含まれる(5)をはじめ、15曲が収められている。演奏形態は独唱または合唱で、伴奏は小オーケストラが主体。キリスト教主義の学校の教材としては適したシリーズ。
日教基団の「讃美歌」のほかにも、讃美の「歌集」が作られているが、当CDには、若者の気持ちを燃えたたせる聖歌や、日常のなかで皆で親しくうたえる聖歌など、讃美・祈り・献身をうたう「青年聖歌」が収められている。これを聴いたら、元気が出てきた。
この新盤は音質がずいぶんと生々しくなり、それは評価にも大きく影響する。この2曲はブルックナーの交響曲のような巨大な解釈で、特に第1の方は通常の演奏は大きく異なったものだ。朝比奈が長い時間をかけて到達した世界だけに、その味わいは格別だ。★
85年のライヴ録音だが、12年前にして朝比奈は既にここまでスケールの大きな音楽を創っていたのだと改めて感服した。音楽は常に悠々と流れ、すべての音符は暖かく息づいている。今、「運命」の2楽章をこれほど豊かに響かせる指揮者は恐らく皆無だろう。
最初に出たCDは、もっと柔らかい音だったと思うが、この新盤ではずいぶんと生々しくなった。第7は例によって繰り返しをすべて敢行し、巨大な構成の中に素朴な情熱が渦巻く演奏。技巧的な第8は朝比奈流の解釈と多少相性は悪いが、それでも平均以上だ。