2012年5月発売
若々しい青春の息吹と濃厚なロマンティシズムが横溢するマーラーの交響曲第1番は、憧憬や挫折など多感な感情が表現された、作曲家の出発点となった記念すべき作品です。誠実味溢れる音楽性で世界中の音楽ファンを魅了し続けたクーベリックがライフワークとしたマーラー演奏は、現在聴いてもまったく色褪せません。フィッシャー=ディースカウが失恋した若者の悲しみと絶望を歌い上げた《さすらう若人の歌》をカップリングしています。
この第4番はマーラーにしては比較的小編成のオーケストラを用いた、珍しく明るい雰囲気を湛えた親しみやすい交響曲で、人間の平穏な心情やメルヒェンティックな世界を清らかで牧歌的に描いています。カラヤンは自ら磨き上げたベルリン・フィルハーモニーの緻密なアンサンブルを駆使して、作品に内在するロマン的情感をあますところなく再現しており、終楽章ではマティスが天国での生活の楽しさを清澄な声で歌い上げています。
作品に内在するロマン的情感と内面から湧き上がる人間の痛切な叫びが、現代人の心に強く訴えかけるマーラーの交響曲第5番。クーベリックが手兵であったバイエルン放送交響楽団とともに完成した交響曲全集からの一枚で、指揮者とオーケストラの一体感が見事に発揮された、熱い情感を漲らせた壮麗でスケール豊かな演奏を繰り広げています。特に映画『ベニスに死す』で用いられたアダージェットの入魂の演奏は胸に迫ります。
中国の詩をテキストにした管弦楽伴奏の6曲の歌曲からなる交響曲《大地の歌》。死を予感し始めたマーラーの晩年の心境を示す東洋的な美と厭世観が漂う作品で、作曲家が最後に到達した簡潔で透明な筆致の冴えは「素晴らしい」の一言に尽きます。作曲家の豊饒さや完全なる調和の世界をカラヤンとベルリン・フィルハーモニーが圧倒的な説得力をもって描き出しており、ルートヴィヒとコロの名唱も特筆に値するものといえるでしょう。
南国イタリアで受けた印象をもとにした、眩いまでに?剌とした晴朗で快活な《イタリア》。ルターのコラールや宗教的な素材が数多く採り入れられた、宗教改革300年祭で演奏するために21歳のときに作曲された《宗教改革》。メンデルスゾーンの2曲の交響曲をカップリングした一枚です。デビュー当初から鬼才として旺盛な指揮活動を展開したマゼールがベルリン・フィルハーモニーを指揮した、明快で輝かしい響きに満ちた演奏でお聴きください。
典型的なロココ風のギャラント様式による流麗で爽やかな、スケールの大きさと優雅な情感を湛えた密度の濃い中期の名作第29番。ウィーン時代の偉大な交響曲群の幕開けとなった、祝典的な曲想が横溢する《ハフナー》。滋味溢れる演奏によって未だ不動の人気を誇る巨匠ベームとウィーン・フィルハーモニーによる、モーツァルトの2曲の交響曲を収録したアルバムです。《フリーメイソンのための葬送音楽》をカップリングしています。
ポリフォニー技法と歌謡性が見事な融合を見せ、内面的な精神性の深まりを感じさせる円熟作《プラハ》は、長大な序奏を置きメヌエットが省かれているのが特徴です。三大交響曲の第1作で明るい力強さのなかに真率な悲しみと清澄な歌謡性が秘められた第39番は、作曲家の「白鳥の歌」とも呼ばれている名作です。モーツァルトの2曲の交響曲を、巨匠ベームとウィーン・フィルハーモニーによる極めて高い完成度を示す演奏で収録した一枚です。?
哀愁を帯びた旋律が古典美の極致を示す、悲愴なパトスを湛える劇的緊張感に満ちた第40番。晴朗かつ雄渾な曲想によって、記念碑的な高みに立つ第41番《ジュピター》。モーツァルトの交響曲創作の最後を飾る名作2曲を収録したアルバムです。アバドとロンドン交響楽団によるこの演奏は、過剰な感情の押し付けを排して古典的な造型感覚を際立たせた、作品の持つ音楽的な純度を明快かつストレートに表現したものといえるでしょう。
標題が示すとおり古典的で簡潔明快な様式美を示す、新古典主義の先駆的な作品である第1番。第二次大戦中に作曲されたものの自由と気高さを表出し、民族的感覚に根ざす豊かな楽想に彩られた第5番。プロコフィエフの交響曲2曲を収録したアルバムです。カラヤンはベルリン・フィルハーモニーの精緻なアンサンブルを駆使して鮮烈な響きや豊かなニュアンスを鮮やかに再現し、20世紀の最も重要な交響曲の真価を明らかにしています。
循環形式の手法によって細部に至るまで有機的に関連付けられ、色彩感に溢れたオーケストラと壮麗なオルガンの響きが効果的に対置されたサン=サーンス円熟期の交響曲第3番。バレンボイムとシカゴ交響楽団が雄大なスケールで表現したアルバムです。オーケストラをシカゴで、オルガンをパリで収録しており、このシンクロ録音は初出当時大いに話題になりました。当時手兵であったパリ管弦楽団を指揮した3曲の管弦楽曲をカップリング。
シューベルトの死の年に完成された、作曲家の音楽的特質が見事に発揮された雄大なスケールと美しい旋律による交響曲《ザ・グレート》には、シューマンが「天国的な長さ」と評した有名なエピソードが残されています。ベームが晩年にドレスデン国立管弦楽団を指揮した演奏会のライヴ録音で収録、この名門オーケストラ特有の豊かでバランスのよい響きを充分に生かし、古い伝統を継承するドイツ的な肌ざわりを持った音楽を聴かせています。
スターリンの死の翌年に作曲され、芸術の自由化を象徴することになったショスタコーヴィチの第10番。新古典主義時代の作品のなかでも、最も古典的な書法による作品として知られるストラヴィンスキーの交響曲ハ調。20世紀中葉にロシアで生まれた2曲の傑作交響曲を、カラヤンがベルリン・フィルハーモニーを指揮した演奏で聴くアルバムです。彫琢された輝かしい音色と洗練の極致ともいうべき響きによる演奏が魅力のディスクといえるでしょう。
チャイコフスキーが不幸な結婚に悩んでいた時期に作曲された第4番は、彼の交響曲のなかでは最も変化に富んだ情熱的な作品として知られています。壮年期のカラヤンと手兵ベルリン・フィルハーモニーによる起伏の烈しいダイナミックなこの演奏は、現在でも眩いまでの輝かしさをまったく失っていません。バレエ音楽の第1作で最も有名な作品として多くの人々に親しまれている《白鳥の湖》の組曲をカップリングしたアルバムです。?
冒頭に現れる「運命の主題」が全楽章にわたって様々な形で再現し、この主題が全曲を統一する役目を担うチャイコフスキーの第5交響曲。50歳代の後半を迎えた壮年期のカラヤンと彼の手兵ベルリン・フィルハーモニーの覇気溢れる瑞々しい演奏で収録したアルバムです。魔女の呪いによって100年間の眠りに就いた王女オーロラが王子の接吻によって目覚める、ロシア・バレエの《眠りの森の美女》組曲をカップリングしています。
死の直前に完成したチャイコフスキーの辞世の句ともいうべき《悲愴》は、標題が示すとおり人間の抱く内面の苦悩、絶望や悲嘆といった感情を強烈なまでに表出した傑作交響曲です。50歳代の後半を迎えた壮年期のカラヤンと彼の手兵であったベルリン・フィルハーモニーの覇気溢れる瑞々しい演奏で収録した一枚で、ロマンティックな幻想や華やかさを見事に描いた作曲家最後のバレエ《くるみ割り人形》の組曲をカップリングしています。
独奏フルートが華やかに活躍する組曲第2番、有名な《G線上のアリア》の原曲であるアリアを含む第3番。ヨーロッパ各地に起源を持つ様々な舞曲を組み合わせたバッハの管弦楽組曲2曲と、バロックの協奏曲を総決算し次に続く古典派を予告するような独創性をも備えているブランデンブルク協奏曲第5番をカップリングしたディスクです。巨匠カラヤンとベルリン・フィルハーモニーの名コンビによる定評のある演奏で収録しています。
古典的な均整感を漂わせながら民俗的要素を抽象的に昇華させ、絶望感や苦悩が独特の音楽で表現された《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》。オーケストラの各パートを独奏楽器に起用した、華やかな演奏効果で知られる《管弦楽のための協奏曲》。名実ともにバルトークの代表作である2曲の管弦楽曲を収録した一枚です。小澤指揮のボストン交響楽団と、マゼール指揮のベルリン・フィルハーモニーそれぞれの持ち味を聴き比べてください。?
南フランスの牧歌的な背景のなかで繰り広げられる劇付随音楽《アルルの女》、情熱的なスペイン情緒を背景に血と死の匂いに包まれた歌劇《カルメン》。ビゼーの舞台作品からの組曲を収録したアルバムです。アバドと彼が常任指揮者や音楽監督を務めていたロンドン交響楽団による躍動感に富んだ瑞々しい演奏は、今聴いてもまったく新鮮味が失われることはありません。シャープな感性が光る颯爽とした演奏を心ゆくまでお楽しみください。?
ブラームスが4手のピアノ連弾用として作曲し、ドヴォルザークや自らのオーケストラ編曲版によってより広く親しまれるようになった《ハンガリー舞曲集》。この作品に触発されてドヴォルザークがやはり連弾用として作曲し、後に自ら管弦楽用に編曲した《スラヴ舞曲集》。カラヤンがドイツ・グラモフォンにステレオ録音を開始した最初期の録音で、ベルリン・フィルハーモニーを見事にドライヴした熱気溢れる演奏を繰り広げています。?
イプセンの劇への付随音楽《ペール・ギュント》からの組曲、祖国の自然に対する讃美と圧政に苦しむ国民の反抗が表現された愛国的名作《フィンランディア》、トゥオネラ河に浮かぶ美しい白鳥を描いた《トゥオネラの白鳥》。北欧の作曲家グリーグとシベリウスの管弦楽曲集です。独墺系の作品と並んで北欧音楽の指揮にも力を注いだカラヤンは、スケールの大きな緊迫感溢れる圧倒的な演奏を繰り広げ、聴く人を抒情と感動の世界に誘(いざな)います。?