著者 : アナトール・フランス
ペンギンの島ペンギンの島
ペンギンの国に託して描く人類の愚行の歴史 高徳の聖者マエールは悪魔に唆されて極地の島に向かい、間違ってペンギンに洗礼を施してしまう。天上では神が会議を開き対応を協議、ペンギンたちを人間に変身させて神学上の問題を切り抜けることにし、ここにペンギン国の歴史が始まった。裸のペンギン人に着物を着せるという難題に始まり、土地所有と階級の起源、竜退治の物語、聖女伝説、王政の開始、ルネサンス、革命と共和国宣言、英雄トランコの登場、国内を二分した冤罪事件と続くペンギン国の年代記は、フランスの歴史のパロディであり、古代から現代に至る人類社会の愚行が巧みなユーモアで戯画的に語り直される。ペンギン人の富裕層が主張するトリクルダウン理論への諷刺や、近未来の新格差社会の光景は、21世紀の日本に生きる我々にも痛切に響くだろう。ノーベル賞作家A・フランスの知られざる名作。
南欧怪談三題南欧怪談三題
非ヨーロッパ世界とヨーロッパ世界においてかなりの違いがある「怪談」のあり方。キリスト教の一神教的万物支配から脱しつつかつルネサンスの理性万能主義にも圧されず、限りある存在の人間と外界世界との間に忍び入る“不思議な物語”--そのなかでも南欧を舞台にした怪奇譚三篇を選りすぐり、軽妙な文体で訳した一冊。『亡霊のお彌撒』(A・フランス)『ヰギヱのヴェヌス』(P・メリメ)『鮫女』(G・T・ランペドゥーザ))の三篇を収録。
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