著者 : アラン・ライトマン
診断診断
ボストンの情報提供会社で出世街道を歩んでいた40歳のビル・チャーマーズは、ある夏の朝、通勤途中の地下鉄で、突然下車すべき駅名も自分の会社名も、自分の名前すら分からなくなる記憶喪失に襲われる。覚えているのは「最小の時間で最大の情報を」という会社のモットーだけだった。深夜、浮浪者のように町をさまよったあげくビルは記憶を取り戻し、インターネットのチャットで“大学教授”と不倫する妻といつもEメールで語りかけてくる14歳の息子の待つわが家へ帰り着く。が、ビルの悪夢は始まったばかりだった。この日をさかいに、ビルの両手の感覚がなくなりはじめ、原因不明の麻痺はさらに足から全身へと進行していった。病院はビルに無数の検査を施し、つぎつぎと新しい医者を紹介するものの、決して診断を下そうとしない。そしてついにビルは会社をクビになる。サラリーマンを襲った悪夢と悲劇をカフカ的世界を通して描いた全米図書賞候補作。
アインシュタインの夢アインシュタインの夢
1905年、26歳のアインシュタインはスイスのベルン特許局で勤務しながら、革命的な物理学理論の研究にうちこんでいた。それは、彼の生涯でももっとも輝かしい年といわれるほど重要な論文がつぎつぎに発表された一年だった。特殊相対性理論の完成を目前にしたアインシュタイン。だが彼は、夜ごと奇妙な夢に悩まされていた。夢に出てくる異世界では、時間が循環したり、静止したり、逆流したり、しゃっくりしたり、目に見える次元になったり…と、ありとあらゆる奇妙な様相を見せる。夢と現実が重なりあうとき、この世界までもが変容を余儀なくされていった。現役物理学者が専門的知識と比類なき詩情、卓抜な想像力を融合させて、アインシュタインが見たかもしれない数々の夢を流麗に描きあげ、英米読書界に衝撃を与えた話題の傑作。
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