著者 : アリス・ホフマン
見分けのつかぬ家がずらりと並ぶロングアイランド郊外の新興住宅地。その一角の朽ちかけた家に、一人のシングルマザーが引っ越してきた。彼女の名はノラ・シルク。8歳の息子と生後11カ月の赤ん坊を連れてやって来た。離婚を罪悪のように考えるお堅い住人は、ノラに冷やかな視線を投げかける。彼女は専業主婦の輪に入れてもらえず、息子は学校でいじめられる。それでもノラはひるまない。おしゃれでセクシー、開放的なその生き方に、やがて大人も子どもも、男も女も魅了され、それまでの人生を捉え直すようになる。そしてある日突然、一人の主婦が家を飛び出してしまった…。自分らしい新しい人生を求めるシングルマザーが平凡な町に吹きこむ自由の風を、マジカルに描く感動作。
なぜか男と別れた女性ばかりがやってきて住みつく町、フロリダ州ヴェリティー。この町では、猛烈な暑熱と湿気に襲われる五月になると何かが狂い出す。海亀たちは街灯の明かりを月光ととりちがえ、街路を横切り移動を始め、あげく車につぶされてしまう。人も頭がおかしくなってしまうのだ。ルーシーとジュリアンが出会い、すべてが一変したのも五月だった。ある日、ルーシーの12歳の息子キースが失踪した。おりしも、ひとりの若いシングルマザーが殺され、赤ん坊が消える事件が町を騒がせていた。いくら“ヴェリティーの町いちばんの悪ガキ”でも、キースがまさか殺人までするはずがない。愕然とするルーシーの前に現われたのは、近寄りがたい雰囲気の警察官、ジュリアンだった。やがて、反発しあう二人の心に奇妙な変化が…。空想と現実を巧みに織り合わせるストーリーテラーが、人生のマジカルな瞬間を紡ぐ感動のハメット賞受賞作。
もう二百年以上も前から、オーウェンズ家の女たちは町で悪いことがあると罪を着せられてきた。苔むした家、女たちが作る不思議な調合薬、不気味な黒猫たち。事故で幼親を失ない、伯母たちにひき取られたサリーとギリアン。学校では友達から“魔法使い”と恐れられ、イジめられ、孤立した二人はいつもこの家の“魔力”から逃れ、自由になりたいと願う。奔放な妹は家を出、慎重な姉は孤独な青春を送り、やがて結婚する。二人の女の子を産み、育てている姉の元に数年ぶりに妹が帰ってくる。しかし彼女の車には男の死体が積まれていた…。
ボストンの北方、美しい海辺の町。天文学者の父親、カメラマンの母親、子供2人で暮すファレル家を、ある日突然悪夢が襲った。5年前の輸血で原因で、娘のアマンダがエイズを発症したのだ。驚き、怒り、悲しむ家族。感染を恐れる隣人たち。パニックに陥る学校。その中で、アマンダは女子体操の選手として全力をつくそうとする。ジョーゼフ・ヘラー、カート・ヴォネガットらがその才能の感嘆した作家が清冽な美しい文体で描きあげる、感動の長篇。