著者 : アン・ズルーディ
埋葬した死体を数年後に掘り出すギリシャ聖教会の改葬の儀。骨の白さが魂の潔白を証明するという迷信がある。そぼ降る雨の中、ヴリシ村のある墓から出てきたのは豚の骨だった。墓の主は四年前に死んだ高名な詩人サントス・ヴォラキス。遺された妹と娘はその事態に動揺を隠せない。さらに改葬の五日後、「サントスの死体が見つかった」との報が。ヴリシを訪れた探偵ヘルメスは、一連の出来事の裏に隠された真実を明かすべく捜査を開始。高潔な詩人と敬われていたサントスの本当の姿が明かされ、驚愕の事実が露呈する。エーゲ海を舞台にした本格サスペンス第五弾。
エーゲ海に浮かぶカルコス島には、今日も“悲しみの聖母”のイコン(聖画像)が起こす奇跡を求めて大勢の観光客が訪れていた。島に立ち寄った「太った探偵」ヘルメスは、イコンが偽物であると気づき、調査を始める。同じころ島に一人しかいないイコン作家の死体が見つかる。篤い信仰を集める、本物の“悲しみの聖母”の行方、生まれてはいけなかった禁忌の子、ロマの民が十年ぶりに島を訪れた理由などの秘密が暴かれたとき、ヘルメスは永遠に許されぬ罪に苦しむ人々の存在を知るのだった。はたして“悲しみの聖母”が起こした奇跡とは?大好評サスペンスの第四弾。
現代化の波が押し寄せるギリシャの街アルカディア。パンデリス親子もまた、さらなる利益を求めて観光客誘致に躍起となり、人里離れてひとり静かに暮らしているガブリリス老人の土地を、ヴィラ建設地にしようと目論んでいた。そんななか、ガブリリスがひき逃げ事故で命を落とす。折しも故郷に戻ってきた太った男ヘルメス・ディアクトロスは、友人ガブリリスを偲びつつ、真相の究明に乗り出す。地元の警察、マスコミ、開発者…各々の利権や欲望が露呈し、事件は意外な結末を迎える。娘を黄金に変えた古代ギリシャのミダス王の悲劇が、再び現代に繰り返される。
エーゲ海に浮かぶティミノス島。うららかな春の日、ひとりの女性が、崖の下からもの言わぬ姿となって発見される。警察は、漁師の妻である女性が、夫が漁に出ている間不貞をはたらいていたという噂をもとに絶望の果てに自殺したと結論づけ捜査を放棄する。数か月後、島に風変わりな男がやってくる。でっぷりと太った体に白いスーツとスニーカー。高価な鞄を携え、名前をヘルメス・ディアクトロスと名乗った。男は漁師の妻の死を究明するため、アテネの機関から遣わされて来たと言う。しかし、男の捜査の前には島の古い因習や淀んだ人間関係が立ちはだかっていた。