著者 : アン・ズルーディ
「太った探偵」が活躍するシリーズ第5弾 ギリシャの高名な詩人サントスは、その作品が高く評価されるものの、詩集の売れ行きは芳しくなく細々と生活していた。彼の娘レダがまだ幼い頃に、妻は娘を残して他の詩人と駆け落ちしており、サントスはレダと二人で暮らしていた。そんなある日、サントスはオリーブを喉に詰まらせあっけなく死んでしまう。残された遺書には「自分がふたたび日の光を浴びるまで、誰も何も受け取ることは許されない」と書かれていた。 そして4年後。ギリシャ正教の慣習による改葬の儀の日、掘り返された棺に入っていたのは、なんと豚の骨だった。遺族への遺産相続の手続きもできず、困り果てたサントスのエージェントから真相究明を依頼された「太った探偵」ヘルメスは、やがて意外な事実に突き当たる…。 神々の国ギリシャを舞台に、謎深き「太った探偵」ヘルメスの活躍がますます冴える好評シリーズ第5弾。
巡礼の港町、奇跡のイコンを巡る禁断の物語 1863年、春の大嵐で難破したギリシャ船の乗組員たちを救ったイコン「悲しみの聖母」。小さな港町カルコスに辿り着いたイコンは乗組員たちによって教会に祀られ、奇跡を起こすと評判になる。生き延びた船長の甥はイコン絵師になり、子孫たちも優秀な絵師として名を馳せ、カルコスは巡礼者たちの絶えない町になった。 美術品を愛するヘルメスもまた、評判のイコンを一目見ようと町を訪れる。しかし、ヘルメスの旧友で美術鑑定士のカーラにより、イコンが贋作であることが明らかに。そんな中、イコン絵師の末裔であるソティリスが漂流中の船内で遺体で発見される。ヘルメスは彼の死に疑問を持ち、真相究明に乗り出す。 神話の地ギリシャを舞台に、欲望や嫉妬、憤怒にかられた人々が起こす悲劇。謎の旅行者である「太った探偵」ヘルメスがその謎を解き、裁きを下す好評サスペンスシリーズ第4弾。
現代化の波が押し寄せるギリシャの街アルカディア。パンデリス親子もまた、さらなる利益を求めて観光客誘致に躍起となり、人里離れてひとり静かに暮らしているガブリリス老人の土地を、ヴィラ建設地にしようと目論んでいた。そんななか、ガブリリスがひき逃げ事故で命を落とす。折しも故郷に戻ってきた太った男ヘルメス・ディアクトロスは、友人ガブリリスを偲びつつ、真相の究明に乗り出す。地元の警察、マスコミ、開発者…各々の利権や欲望が露呈し、事件は意外な結末を迎える。娘を黄金に変えた古代ギリシャのミダス王の悲劇が、再び現代に繰り返される。
エーゲ海に浮かぶティミノス島。うららかな春の日、ひとりの女性が、崖の下からもの言わぬ姿となって発見される。警察は、漁師の妻である女性が、夫が漁に出ている間不貞をはたらいていたという噂をもとに絶望の果てに自殺したと結論づけ捜査を放棄する。数か月後、島に風変わりな男がやってくる。でっぷりと太った体に白いスーツとスニーカー。高価な鞄を携え、名前をヘルメス・ディアクトロスと名乗った。男は漁師の妻の死を究明するため、アテネの機関から遣わされて来たと言う。しかし、男の捜査の前には島の古い因習や淀んだ人間関係が立ちはだかっていた。