著者 : アン・フレイザー
彼との日々は夢のように、 海の色に溶けていった。 「ぼくはアレクサンダー・ディミトリウ。 きみがバルコニーから見ているのには気づいていたよ」 キャサリンは慌てて否定しながら、頬が火照るのを感じていた。 彼は幼い娘が邪魔をしたお詫びにと、キャサリンを食事に誘った。 亡き母の故郷にほど近いギリシアの村で独り静養しているけれど、 わたしがここにいるのは既婚者とデートするためではないわ! しかし、彼が妻を亡くしていると知り、互いに医師であることから ともに感染症の対応にあたるうち、二人の距離は急速に近づいた。 つかのまの恋でいい。私は幸せになれない人間だから……。 そう自分に言い聞かせ、亡き妻を愛する彼にキャサリンは全てを捧げた。 人目を忍んで、めくるめく情熱に身をまかせる二人。やがてアレクサンダーの娘や祖母も含めた家族ぐるみの付き合いが始まり、愛のぬくもりを知るキャサリンでしたが、アレクサンダーの亡き妻の幻影に悩み続けます。そしてついに、せつない片恋は砕け散って……。
難病とわかって絶望に打ちのめされた助産師のエレンは、祖母の家に身を寄せることにし、憧れのショーンと8年ぶりに再会する。17歳のころ彼にキスを拒まれ、屈辱的な思い出となっていたが、今、産科医となった彼から、意外にもデートに誘われた。片想いが叶っても、もう私には未来なんてないのに…。そう思いつつも彼の魅力に屈し、いつしか二人は結ばれたのだった。その後、この病は妊娠が禁物とあって気をつけてはいたけれど、不安になって調べると、エレンのおなかには小さな命が宿っていた。ショーンは病のことを知らないうえに、まだ結婚には興味がないらしい。ああ、どうしよう!エレンの心は、千々に乱れた。
命よりも大切な、おなかの赤ちゃん。 父親の愛は得られないかもしれないけれど。 助産師である私自身が、子供は持てない運命だったなんて……。 妊娠は難しいと知った婚約者は、無情にもアニーのもとを去った。 独りスペインのアンダルシアへの傷心旅行に出たアニーだったが、 旅の終わりに立ち寄った教会で、運命は大きく変わる。 急に産気づいた女性を救って、産科医ラファエルと出会ったのだ。 彼とはなぜか最初から心が通い合い、アニーは生涯の思い出にと、 彼と一夜だけの愛を交わしたーーまさか身ごもるとは思わずに! ところがそれを告げると、ラファエルは冷たくこう言い放った。 「本当に僕の子か? イギリスとスペインで弁護士をさがす」 そしてアニーを探るつもりか、彼女が働く病院へ転職してきたのだ。 著者のアン・フレイザーは看護師でもあり、医師である夫とともに、アフリカやオーストラリア、カナダなどを仕事で訪れてきた経歴の持ち主です。命の奇跡と愛の奇跡ーーたくさんの喜び、悲しみ、そして感動が詰まった、秀逸なロマンスをどうぞお楽しみください。
研修医のオリヴィアは亡夫の遺伝子を継ぐ子を人工授精で身ごもり、その大切な命とともにこれからの人生を歩んでいくつもりだった。しかし運命は残酷にも、彼女から心のよすがを奪おうとしていた。じつは手違いで、おなかの子が我が子でないことがわかったのだ!本当の親にこの子を奪われてしまうかもしれないなんて…。頼れる者もおらず、どうしようもない孤独感に沈んでいると、意外な人物に慰められ、オリヴィアは思わずときめきを覚えたー職場で女性スタッフらが熱い視線を送る美形ドクター、デイヴィッド。だが、彼が全米屈指の財閥出身だと密かに知る彼女は、我が身を戒めた。ただの同情を勘違いしてはだめ。これ以上辛いことに耐えられないから。
サラは生後半年の息子を母に預け、大病院の救急科に復職したが、初日、そこにはなんと1年半前に別れた恋人ジェイミーがいた。彼女が結婚を夢見るようになったとたんに異国へ逃げた彼は、その9カ月後に我が子が生まれたことをまだ知らない。ジェイミーは最初から結婚も子供も望まないと宣言していたから、捨てられて傷心していたサラは、独りで産み育てる決意をしたのだ。彼の優秀な仕事ぶりに再びうずく恋心を必死に戒める彼女だったが、そんなとき運悪く、サラの母が孫息子を連れて二人の前に現れた。赤ん坊の月齢、瞳の色…にわかに自分の子と悟ったジェイミーは、サラの母に冷たく言った。「少しサラと二人にしてもらえませんか?」