著者 : アーサー・ケストラー
ジョージ・オーウェルが「傑出した小説」と絶賛した。75年ぶりに発見されたドイツ語原本からの初翻訳。 かつて革命の英雄であった主人公ルバショウは、絶対的な権力者「ナンバー・ワン」による粛清の標的にされ、でっち上げられた容疑で逮捕・投獄される。隣の独房の囚人と壁を叩いた音によって会話し、これまでの半生を追想するうちに、革命家としての自分の行動の正当性に対する確信が揺らぎ始める。取り調べを受ける中でルバショウは、犯してもいないグロテスクな罪を自白していく。 アンチ・ユートピア小説であり、ザミャーチンの『われら』、ハクスレーの『うるわしき新世界』、オーウェルの『一九八四年』、そしてブラッドベリの『華氏四五一度』と比較し得る。残念なことに、これらはいずれも、今日に至るまでその現実性を少しも失っていない二十世紀からの警告の声である。(ドイツ語版序文、マイケル・スキャメル) スターリン専制下のソビエト連邦で一九三〇年代後半に行われたモスクワ裁判の犠牲者をモデルとした政治小説である。それと同時に、ドストエフスキーの『罪と罰』や『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』の系譜を受け継ぎ、政治と倫理の問題をめぐる議論の交わされる観念小説でもある。さらには、全体主義的な体制下の監獄で、一人で戦わねばならなかった孤独な人間の心の動きを丹念に追ったサスペンスタッチの心理小説でもある。(「訳者あとがき」より)
独房No.404に収監された元人民委員ルバショフ。覚えのない罪への三回の審問と獄中の回想、壁越しの囚人同士の交信に浮かぶ古参党員の運命。No.1とは誰か。なぜ自白は行われたか。スターリン時代の粛清の論理と戦慄のモスクワ裁判を描いて世界を震撼させたベストセラー。心理小説の傑作(1940年刊)。【解説=岡田久雄】 第一回審問 第二回審問 第三回審問 文法的虚構 訳者あとがき 解 説(岡田久雄)