著者 : イアン・マキューアン
独身男のチャーリーは、母親の遺産で最新型アンドロイドを購入した。名はアダム。どんな問題も瞬時に最適解を出すアダムのAI能力を利用して、チャーリーは上階に住む美しい女子学生ミランダと恋仲になる。だが人に言えない過去を秘めた彼女に、アンドロイドのアダムが恋心を抱きはじめる。AIと人間は愛し合えるのか?自我を持った機械に恋路を邪魔されたチャーリーに、アダムを壊す権利はあるのだろうか?架空の1982年を舞台に繰り広げられる、未来の社会問題へのユーモラスな示唆に富んだ長篇。
13歳の夏、作家を夢見るブライオニーは偽りの告発をした。姉セシーリアの恋人ロビーの破廉恥な罪を。それがどれほど禍根を残すかなど、考えもせずにー引き裂かれた恋人たちの運命。ロビーが味わう想像を絶する苦難。やがて第二次大戦が始まり、自らが犯した過ちを悔いたブライオニーは看護婦を志す。すべてを償うことは可能なのか。そしてあの夏の真実とは。現代英文学の金字塔的名作!
誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。胎盤を通して味わうワイン、ポッドキャストで学ぶ国際情勢、そして父ではない男が囁く愛の言葉と、ある不穏な計画ー。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと洞察が冴える極上の長篇小説。
法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官のもとに、信仰から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数ヵ月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、やがて特別な絆が生まれるがー。二つの人生の交わりを豊かに描きながら、重い問いを投げかける傑作長篇。
英国国教会主教の娘として生まれたセリーナは、ケンブリッジ大学の数学科に進むが、成績はいまひとつ。大好きな小説を読みふける学生時代を過ごし、やがて恋仲になった教授に導かれるように、諜報機関に入所する。当初は地味な事務仕事を担当していた彼女に、ある日意外な指令が下る。スウィート・トゥース作戦ー文化工作のために作家を支援するというのが彼女の任務だった。素姓を偽って作家に接近した彼女は、いつしか彼と愛し合うようになる。だが、ついに彼女の正体が露見する日が訪れたー。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら展開する、ユニークで野心的な恋愛小説。
マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界ー。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。