著者 : イアン・マキューアン
冴えない男と秘密を抱えた美女の間に割り込むアンドロイド。奇妙な三角関係のゆくえは? 独身男のチャーリーは、母親の遺産を使って最新型アンドロイドを購入した。名はアダム。どんな問題も瞬時に最適解を出すAI能力を利用して、チャーリーは上階に住む女子学生ミランダと恋仲になることに成功した。だが彼女は重大な過去を秘めており、アダムは彼女に恋心を抱きはじめる。人工知能時代の生命倫理を描く意欲作!
13歳の夏、作家を夢見るブライオニーは偽りの告発をした。姉セシ -リアの恋人ロビーの破廉恥な罪を。それがどれほど禍根を残すかなど、考えもせずに──引き裂かれた恋人たちの運命。ロビーが味わう想像を絶する苦難。やがて第二次大戦が始まり、自らが犯した過ちを悔いたブライオニーは看護婦を志す。すべてを償うことは可能なのか。そしてあの夏の真実とは。現代英文学の金字塔的名作!
わたしは逆さまになって、ある女のなかにいるーー。胎児が語る人間たちの世界。誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。その耳に届く、愛の囁き、ラジオの音、そして犯罪の気配ーー。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと鋭い洞察、苦い笑いに満ちた、英国の名匠による極上の最新作。
輸血を拒む少年と、命を委ねられた女性裁判官。深い余韻を残す長篇小説。法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官の元に、信仰から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数か月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、特別な絆が生まれるがーー。二つの人生の交わりを豊かに描きながら重い問いを投げかける傑作長篇。
英国国教会主教の娘として生まれたセリーナは、ケンブリッジ大学の数学科に進むが、成績はいまひとつ。大好きな小説を読みふける学生時代を過ごし、やがて恋仲になった教授に導かれるように、諜報機関に入所する。当初は地味な事務仕事を担当していた彼女に、ある日意外な指令が下る。スウィート・トゥース作戦ー文化工作のために作家を支援するというのが彼女の任務だった。素姓を偽って作家に接近した彼女は、いつしか彼と愛し合うようになる。だが、ついに彼女の正体が露見する日が訪れたー。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら展開する、ユニークで野心的な恋愛小説。
マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界ー。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。