著者 : ウィリアム・サローヤン
僕の名はアラム、九歳。世界は想像しうるあらゆるたぐいの壮麗さに満ちていたー。アルメニア移民の子として生まれたサローヤンが、故郷の町を舞台に描いた代表作を新訳。貧しくもあたたかな大家族に囲まれ、何もかもが冒険だったあの頃。いとこがどこかから連れてきた馬。町にやってきたサーカス…。素朴なユーモアで彩られた愛すべき世界。“村上柴田翻訳堂”シリーズ開始。
最愛の妻を失ったボクサーはつぶやく。「…お前に逢ったことだけが、俺の人生の取り柄なんだ…」(「ディア・ベイビー」)。1セント玉を握りしめた餓死寸前の男は「空中ブランコで宇を飛ぶ…」と心で歌い、「生存許可願を書かなければ」と考える(「空中ブランコに乗った若者」)。平凡な人々が演じる思いがけないドラマを描くサローヤンの代表的短篇を選び集めた1冊。
ギリシア人、イタリア人、メキシコ人、アルメニア人…。さまざまな国から海を越えてやってきた移民たちを受け入れる国、アメリカ。子どもたちは仕事場で、街で、学校で、人生という厳しくもどこかこっけいな現実を、手さぐりで確かめながら生きてゆく。アルメニア系二世であることを誇りとするサローヤンが、自らの少年時代の思い出をこめて描く17篇の少年物語。
九月のある日、その男は新しいキャデラックに乗ってサンフランシスコへ向っていた。男の名はロック・ワグラム。アルメニア系の俳優だ。三十三歳になった今、ロックはどうしようもなく孤独で死んでしまいそうな気がしていた。死の怯えを振り払い、好きな女と結婚し、軍隊に入ろうと故郷へ向かっているのだ。人生と孤独と愛、そして家族の絆をハート・ウォーミングに描いた長編小説。
ある朝、ニューヨーク56番街に中年の劇作家イェップ・マスカットがふらりと戻ってきた。舞台女優の夢を捨て切れぬ妻、ブルックリン・ドジャースが大好きな息子と母親似の娘、そして幼なじみや懐かしい人たちとの再会…。ニューヨークの街を歩くイェップの前に人生のほろ苦さと暖かさ、憂鬱と輝きが浮かび上がる。誰よりも人間を愛し続けた作家、サローヤンの自伝的代表作。
マリブの海辺にある父の家で、僕と父の新しい生活が始まった。父は僕に、僕自身について小説を書くように言った。僕は海を、月を、太陽を、船を知ってはいるけれど、僕自身や世界をほんとうに理解するにはどうすればいいんだろう。-10歳の少年ピートは父親との時に厳しく、時にさわやかな会話を通じて、生きることの意味を学んでゆく。名匠が息子に捧げた心あたたまる詩的小説。
あたしの名前はキラキラヒメ。ニューヨーク・ジャイアンツのエースを目指す9歳の女の子。パパと別れてブロードウェイのスター女優を夢見るママ・ガールに連れられて、ある夜突然、カリフォルニアからニューヨークへやってきたの。気まぐれなママ・ガールは、興奮したり悩んだりで大忙しだけど、あたしはそんなママ・ガールが大好き。この街で一緒に、夢を追いかけてゆくの…。