著者 : エドウィージ・ダンティカ
全米批評家協会賞 小説部門受賞作! 異郷に暮らしながら、故国を想いつづける人びとの、愛と喪失の物語。 四半世紀にわたり、アメリカ文学の中心で、ひとりの移民女性としてリリカルで静謐な物語をつむぐ、ハイチ系作家の最新作品集、その円熟の境地。 「記念日というのは、この本の地震についての話「贈り物」のアニカとトマスの物語からもわかるように、ときにつらいものです。 悲しい記念日は、かつて存在した人や物の不在を大きく膨らませます。この本に収めた短編小説の多くは不在についてのものですが、愛についてのものでもあります。ロマンティックな愛、家族の愛、国への愛、そして他のタイプの厄介で複雑な愛などです。私はその物語の筋をここで明かしたくはありません。それはぜひ、どうぞ、みなさんご自身で見つけだしてください。 ここにあるのは、八つのーー願わくは読者の方々にとって魅力的なーー短編小説です。 私は今、みなさんを、いくつかの独自(ユニーク)な、愛に突き動かされた冒険(アドベンチャー)へと喜んでお迎えいたします。」--エドウィージ・ダンティカ「日本の読者への手紙」より 日本の読者への手紙 エドウィージ・ダンティカ ドーサ 外されたひとり 昔は ポルトープランスの特別な結婚 贈り物 熱気球 日は昇り、日は沈み 七つの物語 審査なくして 訳者あとがき
カリブ海を漂流する難民ボートの上で、 死体が流れゆく「虐殺の川」の岸辺で、 ニューヨークのハイチ人コミュニティで……、 女たちがつむぐ十個の「小さな物語」が地下茎のようにつながり、 ひとつの「大きな物語」を育んでいく。 「クリック?(この話、聞きたい?)」「クラック!(聞かせて!)」 ー物語の始まりを告げる掛け合いの言葉とともに、 現代の〈伝承〉が生まれ出る。 全米図書賞の最終候補となり、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズなど各紙に書評され、著者の評価を確立した短編小説集(1996年)。邦訳は2001年以来の刊行となる(新装復刊)。 海に眠る子どもたち 1937年 火柱 夜の女(ハイチにて) ローズ 失われた合言葉「ピース」 永遠なる記憶 昼の女(ニューヨークにて) カロリンの結婚式
夫は、わたしの身内を拷問した「デュー・ブレーカー」(朝露を蹴散らす者=拷問執行人)かもしれない。わたしが勘づいていることを、夫もまた知っているだろう。いつの日か娘が両親の秘密を知って、アメリカでやっと手にしたこのささやかな幸せが失せる時が来てしまうのだろうか……。 カリブの濃密な夜空に輝く星座のように配置された九つの挿話が、ハイチの社会的記憶を浮き上がらせる。 久しく邦訳が待望されていたエドウィージ・ダンティカの二作目の短篇集(2004年)。 死者の書 セブン 水子 奇跡の書 夜話者(ナイトトーカー) 針子の老婦人 猿の尻尾(1986年2月7日 / 2004年2月7日) 葬式歌手(フューネラルシンガー) デュー・ブレーカー 1967年頃
双子の姉を交通事故で喪った、十六歳の少女。自らの半身というべき存在をなくした彼女は、家族や友人らの助けを得て、悲しみのなかでアイデンティティを立て直し、新たな歩みを始める。全米が注目するハイチ系気鋭女性作家による、愛と抒情に満ちた物語。 「わたしは、本書の日本語版をみなさまに読んでいただけることをとても光栄に思っています。(…)この本が世に出てから一年あまりのあいだに、わたしは何百人もの読者に会いました。十二歳から九十二歳までの年齢層の人びとです。彼らはそれぞれに、この物語にどんなに心を打たれたかをわたしに伝えてくれました。(…)主人公はまだ少女といえる年齢で、その若さは物語のひとつの大事な側面ではありますが、彼女をめぐる物語の全体は、老若男女の別なく誰にも共感できるものと信じます。読者の方々はまた、この本が愛のーーロマンチックな愛と家族の間の愛の両方のーー不思議とともに、生と死について語っていることを喜んでくれています。それに、ボワイエ家の人びととマイアミのハイチ人コミュニティの人びととのつながりや、ボワイエ家の人びとの目に映る生まれ故郷のハイチの姿も楽しんでくれています」--「日本の読者への手紙」より