著者 : エマ・ドナヒュー
1918年、アイルランド・ダブリン。スペイン風邪のパンデミックと世界大戦で疲弊しきったこの街の病院に設けられた“産科/発熱”病室には、スペイン風邪に罹患した妊婦が隔離されていた。孤軍奮闘する看護師のジュリア・パワーのもとへやってきたのは、秘密を抱えたボランティアのブライディ・スウィーニーと、テロリストと疑われる医師のキャスリーン・リン。死がすぐそばで手招きする、急ごしらえの小さな一室で、彼女たちは生命の尊厳を守るために闘いつづけたー名手エマ・ドナヒュー(『部屋』)が描ききった、パンデミック・ケアギバー小説の金字塔。
5歳になったジャックはママと部屋に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。ごはんも、テレビも、字のおけいこも。いつもママがいっしょです。そして、この部屋だけが「世界のほんと」だと思っていましたーーママが外の世界があることを教えてくれるまでは。誘拐され、監禁された少女に、子供ができてしまったら…。極限状況を生き抜こうとする人間の勇気と気高さ。「部屋の中」の天真爛漫なジャックの声が切なく聞こえる。 今日はジャックの5歳の誕生日。 ジャックはママと「部屋」に住んでいます。鍵付きのドアに天窓のある部屋。 ママとシリアルを100こ数えて牛乳をどぼどぼかける朝ごはん。 ママといっしょに見るアニメ(ドーラ大好き!)。 ママに読んでもらう『ぼくにげちゃうよ』(自分でだって読めるけど)。 ママが教えてくれる字のおけいこ。 ジャックは幸せです。だって、ここにママがいるから。 「オールドニック」に見つかりさえしなければ。 そして、この部屋だけが「世界のほんと」だと思っています。 いや、そう思っていましたーーママが外の世界があることを教えてくれるまでは。 誘拐され、監禁された少女に、子供ができてしまったら……。 極限状況を生き抜こうとする人間の勇気と気高さ。 「部屋の中」の天真爛漫なジャックの声が、切なく聞こえてきます。
「部屋」の中で産まれ、部屋の中で育ち、一歩も「外」に出たことがなかったジャック。外は楽しいってママから聞いたのに、ママも苦しそうだし、ぼくもあの鍵のかかった、天窓のある「部屋」に帰りたいと思ってしまうーー。7年間、たった一人で密室にいて、5年間ジャックを育ててきた「ママ」の苦悩と、それを超えるための、人間の決意。世界で絶賛されたベストセラー。ジャックの素直な声は、人類の救いです。 「部屋」の中で産まれ、部屋の中で育ち、5歳になるまで一歩も「外」に出たことがなかったジャック。ジャックは「外」に「世界」があることすら知らないままに育ちました。だから、「脱出」に成功しても、すべてが初めてのことです。 初めて会ったおばあちゃん、おじいちゃん。 初めて食べるたくさんの食べ物(だからちょっとうんちが出なくなっちゃった)。 初めて感じる風(飛ばされそう!)。 初めての遊具(どうやって使うの?) 初めて会う、ママをいじめる嫌な人たち(どうしてママを泣かせるの?)。 外は楽しいってママから聞いたのに、なんでこうなっちゃうんだろう。 だから、ちょっとだけ、あの鍵のかかった、天窓のある「部屋」に帰りたいと思ってしまうのですーー。 7年間、たった一人で密室にいて、5年間ジャックを育ててきた「ママ」の孤独。そして彼女の選択。 極限状態から「解放」されたはずの人間のさらなる苦悩と、再生のための、人間の決意。大きな救いを感じる、世界で絶賛されたベストセラー。