著者 : エミリー・ラスコヴィッチ
アイダホアイダホ
アイダホの山中に住む音楽教師のアンは、歳の離れた夫ウエイドのかつての家族のことを何年も思い続けている。九年前、一家が薪を取りに出かけた山で、ウエイドの前妻ジェニーが末娘メイを手にかけ、上の娘ジューンはその瞬間を目撃、ショックで森に逃げこみ失踪した。数年おきに当局から最新のジューンの捜索用写真が送られてくるが、最近のウエイドは若年性認知症の進行により、事件のことも、娘がいたこともわからないときがある。ジェニーは、罰を受けること以外、何も望まず誰とも交わらずに刑に服してきたが、同房になったエリザベスとあることをきっかけにぎこちないやりとりが始まる。アンは夫のいまだ癒えぬ心に寄り添いたいと願い、事件に立ち入ることを躊躇いながらも、一家の名残をたどり、断片を繋ぎ合わせていく…。厳しく美しいアイダホの大自然を舞台に、日常が一瞬で打ち砕かれる儚さ、愛よりも深い絆、贖罪を、静謐な筆致で鋭く繊細に描く。2019年度国際ダブリン文学賞受賞作。
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