著者 : ガブリエル・ガルシア=マルケス
この島で、母の死を癒してくれる男に抱かれたい。束の間、夫を忘れて。音楽家の優しい夫と、二人の子宝にもめぐまれ何不自由ない結婚生活をおくるアナ。毎年、母親が埋葬されているカリブ海の島へ出かけるアナだが、人知れず、現地の男と一夜限りの関係を結ぶことを心待ちにしていた。刹那的な関係に心身を燃やすアナが出会った男たちとはーー。ノーベル文学賞作家が最期まで情熱を注いだ未完の傑作。
幾多の激戦の末にスペイン軍を撃破、植民地の軛から中南米諸国を解き放ち、ついに独立へと導いた輝ける将軍シモン・ボリーバル。ラテンアメリカ統合の理想実現に燃えてひた走った英雄は、なぜ失意の迷宮に踏み入らねばならなかったのか?“解放者”と称えられた男。その最後の七ヵ月、コロンビアの大河を暗然と下りゆく死への旅路は。-栄光という闇の深さを巨細に描き切る。
宴席に供されたのは、腹心だった将軍の丸焼き。荷船もろとも爆沈、厄介払いした子供は二千人。借金の形に、まるごと米国にくれてやったカリブ海。聖なる国母として、剥製にされ国内巡回中のお袋。だがお袋よ、ほんとにわしが望んだことなのか?二度死なねばならなかった孤独な独裁者が、純真無垢の娼婦が、年をとりすぎた天使が、正直者のぺてん師が、人好きのする死体が、運命という廻り舞台で演じる人生のあや模様。
蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。
これまでの幾年月を表向きは平凡な独り者で通してきたその男、実は往年夜の巷の猛者として鳴らしたもう一つの顔を持っていた。かくて昔なじみの娼家の女主人が取り持った14歳の少女との成り行きは…。悲しくも心温まる波乱の恋の物語。2004年発表。