著者 : キャンディス・キャンプ
あんな嘘をついた報いだー伯爵令嬢カミラは馬車の中でため息をついた。病に伏せる祖父を安心させるため、婚約者がいるなどとつい口にしてしまったのは先日のこと。そのせいでこうして祖父の屋敷へ“いもしない婚約者”を紹介しに行くはめになり、あげく考え事に耽っていたせいで道に迷ってしまった。途方に暮れたカミラは通りすがりの見知らぬ男に道を尋ねた。男の名はベネディクト。端整な顔つきながら大柄で無骨で傲慢そのものの男だが、ひょんなことからカミラはベネディクトに、偽りの婚約者を演じてもらうことになり…。
白い薔薇で飾られたその舞踏会場で結婚式後の祝宴が開かれ、ライラは花嫁である幸せそうな親友の姿を壁際から眺めていた。親友が嫁いだのは社交界でも有名なモアランド公爵家。その変わり者揃いの公爵家の面々と、ライラもすっかり仲良くなっていたーただ一人、コンスタンティンをのぞいて。末男の彼は調子がよく世慣れていて、堅物なライラと正反対。顔を合わせればついいがみ合ってしまうのだ。そのとき「踊ってもらえますか?」と声をかけられライラは振り向いた。そこにはコンスタンティンが目を煌めかせて立っていて…。
モアランド公爵家のアレックスはその日、双子の兄弟が営む調査所にたまたま一人でいた。そこへ、帽子を深々とかぶって顔を隠した、小柄な紳士が依頼に現れるーと思いきや、なんとその紳士は男装した、黒髪の美しきレディ。どうやら気がついたときにはいっさいの記憶をなくしていたらしく、「自分を探してほしい」という。しかし手がかりは身につけていた指輪やロケットのわずかな所持品と、そこに記されていた“サブリナ”という名前だけ。行くあてのない彼女をひとまず公爵家に連れて帰ることにしたアレックスだが…。
幼い息子と慎ましく暮らすメリンダは、職に困っていたところ料理人を探している屋敷があると聞きつけ、さっそく応募することに。だが屋敷の主人ダニエル・マッケンジーは、容姿端麗ながら極度の女嫌いで気むずかし屋。なんとか採用してはくれたものの、メリンダへの態度は冷たく、傲慢そのものだ。それでも彼女の持ち前の明るさが、荒れ放題だった屋敷と心閉ざしたダニエルをじょじょに変えていき…?キャンディス・キャンプ作『愛という名の贈り物』ほか、ペニー・ジョーダンが描く公爵との恋『恋に落ちた天使』など、豪華3作収録のアンソロジー!
代々続くスコットランドの治療師の娘メグは、先祖より伝わる習わしに従って結婚せず、自立した生活を送っていた。ある日、馬車に乗った男性と目が合い、その瞬間に強いときめきを感じる。彼はイングランドから来たマードン伯爵ー近隣一帯の大地主で、小作人を次々と立ち退かせていると噂の冷血漢だった。彼の悪評を聞いて想いを抑えようとするメグだったが、伯爵も美しいメグに惹かれていて、再会したふたりは衝動のままに唇を重ねてしまう。しかし、身分も価値観も違う彼らの恋はすれ違うばかりで…