著者 : ケイト・ハーディ
おなかの子の父親アントニオと連絡がつかず、ティアは途方に暮れた。そっとおなかに手をあてる。妊娠6カ月で、赤ちゃんはもう蹴ってくる。相手は王国のプリンスで、私はただのウエイトレス。彼の所在がわからず王宮に問い合わせるしかない身の上がつらかった。亡き兄の親友だったアントニオとは一度だけ会ったことがあったが、6カ月前、さる慈善パーティでティアが給仕をしていたとき、主賓のアントニオが声をかけてきて、二人は再会した。兄の思い出を語らううち、ホテルで一夜を共にし、そして…。アントニオにも、生まれてくる子供のことを知る権利があるはずだ。ティアは身重の体を押して、彼が住む地中海の王国へ向かったー。
両親の愛を知らずに育ったステンドクラス作家のインディゴ。あるとき仕事先で、さる公国の皇太子ロレンツォと知り合い、幼いころの境遇が自分と似ている彼に強く惹かれた。しかし、来月、新しく王になるロレンツォは、王侯貴族の女性と結婚する必要があった。彼との未来を思い描いたところで、それは永遠に訪れない。でも、せめて今だけは愛を分かち合いたい…。切に願ったインディゴは、彼と期限つきの契りを結んだ。やがてロレンツォが帰国し、愛を失った彼女はつらくてたまらなかった。そのうえ、結ばれるはずのない彼の子を、おなかに宿していたー
考古学博士のエヴァは、一人旅の途中で事故に遭い、目覚めたときには1週間分の記憶を失っていた。そして2ヵ月後、妊娠していることに気づいたー美しいドレスを着て舞踏会に出席した自分の写真以外、小さな命を授かった一夜の手掛かりは何も残っていないというのに。まったく自分らしくない行動とその結果に戸惑いながらも、エヴァは子どもを独りで産み育てる決心をした。そんなある日、エヴァが歴史ある子爵邸で発掘の指揮を執っていると、実家に立ち寄ったというすばらしく魅惑的な男性ハリーが現れた。彼はエヴァを見ると顔色を変え、傲慢ともいえる態度をとって…。
病院の救急科で働くベッキーの夢は、看護師長になること。振り返れば、これまでの人生は苦労の連続だった。若くして結婚し、つらい流産と離婚を経験したあと、二度と同じ轍は踏むまいと、恋を遠ざけ、仕事に打ちこんできた。だが、パーティで偶然逢った情熱的なスペイン人、レアンドロに惹かれ、めくるめく一夜を過ごす。今宵だけ…たった一度だけなら…。そして翌朝、眠る彼を残し、さよならも告げずに姿を消した。仕事に戻っても、レアンドロとのつかのまの幸せの余韻が頭の隅に漂い、同僚が噂しているハンサムな新任医師のことさえ、大して気にならない。ところが、休憩室に入ったベッキーがそこに見たのはーレアンドロ!