著者 : サイモン・ブレット
失業中の俳優に、仕事の選り好みは許されない。というわけで、食品会社の会社案内ヴィデオに出演する話がきたとき、パリスは一も二もなく飛びついた。役柄は倉庫で働くフォークリフトの運転手。芸術とはほど遠い仕事だが、演技することに変わりはないし、実入りもまあまあ。いうことなしに思えたが…。フォークリフトの運転-、これが意外と難物だった。しかも、昼休みで目を離した隙に、そのフォークリフトが暴走して、女子社員の命を奪ってしまったのだ。エンジンが掛かりっぱなしのところへ、何かの拍子でギアが入ったためだという。だが、パリスは撮影現場を離れるとき、たしかにエンジンを切った。もしかして、これは殺人では?俄然興味をひかれたパリスは、素人探偵を気取って、死んだ女子社員にまつわる噂を集めはじめた。社内の勢力争いと複雑な人間関係に隠された真相にパリスが挑む、ユーモアと皮肉たっぷりの英国ミステリ。
パージェター夫人にとっては、拷問にもひとしい旅だった。ロンドンを発つ飛行機は遅れるし、パック旅行のメンバーときたら、つまらない冗談ばかりとばす男に、やかましい赤ん坊づれの家族、等々…。だが、それだけではすまなかった。目的地ギリシアの村に着くそうそう、一緒にパック旅行に参加していた親友ジョイスが一見自殺と思われる死をとげたのである。そもそも今回の旅行は、夫をなくしたばかりで落ち込んでいるジョイスを元気づけるのが目的で、酒びたりのジョイスは、いつ自殺してもおかしくはなかった。だが、手首を切るのに、手近にあるナイフを無視してわざわざウーゾの瓶を割り、その破片を使うだろうか?疑問を感じたパージェータ夫人は自殺説に固執する地元警察に対抗して独自の調査を開始した。人生をエンジョイする未亡人パージェター夫人が異国の地で起きた難事件に挑む、英国ミステリの好篇。
小道具部屋は惨憺たる有様だった。棚が落ち、そこらじゅうに小道具が散らばっているのだ。と、その時、妙なものが目に飛びこんできた。急いでがらくたをどけてみると、下からは新進女優シッピーの死体が…。ずっこけ警官役のパリスが死体を発見するまえから、名探偵ブレイドを主人公とするテレビ・ドラマの撮影は暗礁にのりあげていた。いちばんの原因は、名探偵の娘役のシッピーだった。主役のテレビ・スターは、こんな大根女優が相手では嫌だとへそを曲げるし、原作者の老女流作家とその妹は、シッピーが原作のイメージとちがうと文句をいうしで、彼女の死は番組にとっては天の恵みのようなものだった。だが、誰にとってもこんなに都合のいい事故などありうるだろうか?撮影が順調に進みだしたのを尻目に、パリスはグラス片手に犯人探しにのりだすが…!テレビ界の内幕を才気溢れる筆致で描くユーモア本格。
『マクベス』の上演には必ず災厄がふりかかる-パリスもその言い伝えは知っていた。しかし彼自身が死体の発見者となり、殺人の容疑をかけられることになろうとは…売れない俳優パリスにひさびさに舞い込んだ仕事は、地方劇場で上演される『マクベス』の端役だった。共演者は皆、一癖ある俳優ばかり-思わぬ殺人事件に巻き込まれたパリスの悲喜劇を、才人ブレットが達者な語り口で描いた人気シリーズ最新作!
あれはやっぱり事故じゃない。殺人だったんだわ!-ホテルの階段から落ちて死んだ老女の宝石が盗まれたのを知ったとき、パージェター夫人の疑念は確信に変った…〈デヴェルー〉は上流階級の人々が老後を送る、長期滞在客専用の高級ホテル。泊り客は貴族、退役軍人、元女優-誰もが申し分のない地位と富を持っている。亡き夫の遺産で優雅な生活を楽しむパージェター夫人は、その新しい住人だった。老女の転落死が起ったのは、夫人がホテルに到着した日の夜のことだ。老女は以前から目が悪く、事故であるのは明白に見えた。だが、あれは宝石目当ての殺人だったのではないか?だとしたらこのホテルに殺人者がいることになる…夫人は夫に伝授された特殊な“技術”を使って独自の調査を始めたが、まもなく第2の殺人が-陽気でリッチでちょっと謎めく、未亡人の素人探偵パージェター夫人登場。鬼才ブレットの新シリーズ第1弾!