著者 : サラ・クレイヴン
無上の愛は打ち砕かれ、 乙女は密かに姿を消した。 妹の夫に懇願され、セレナは2年ぶりにリムノス島を訪れた。 重病のはずの妹は元気だったが、彼らの軽食堂の経営権を ある有力者に奪われそうになっているので助けてほしいという。 その人物とは、かつて愛したギリシア富豪アレクシスだった。 愛をささやく低い声、生まれて初めて知る愛の喜び……。 鮮やかによみがえる甘美な記憶を振り払いながら、 セレナは勇気をかき集めてアレクシスのもとへと向かった。 密かに産んだ子どもの存在を知られているとはーー 自分がすでに彼の罠にかかっているとは夢にも思わずに。 父親の卑劣な嘘によってセレナを金目当ての悪女と思い込む彼は、妹を助けたければ子どもを置いて島を去れと命じて……。引き裂かれた恋、命の芽吹き、残酷な再会ーー美しいギリシアの島で花開く切なくもドラマチックなシンデレラストーリーをご堪能ください。
レインは幼い頃から、10歳上の兄の親友ダニエルに恋していた。兄が亡くなったあとも彼は親身にレインを気遣ってくれ、ある日唐突にプロポーズされたときは、天にも昇る心地だった。だがふたりの初夜、彼が亡き兄への義務感から求婚したと知り、打ちのめされたレインは、花婿に婚姻無効を訴えた。それから2年。無垢なままのレインの前に、ダニエルが現れる。今や実業界の大立者で、美女たちとの噂も絶えない彼は、清掃員として働くレインにとって、もはや別世界の人だった。そんな彼が、私の小さなアパートメントになんの用かしら…。実はダニエルには、レインが想像もしない、ある計画があった。
7年前に、忽然と姿を消したライアンが町に戻ったと知り、 ジャナの胸に、一瞬にして暗い影が差した。 16歳のころ、ジャナは屋敷に住むライアンと愛し合っていた。 だが、部屋に踏み込んできた彼のおじに見つかって、思わず、 「ライアンに連れ込まれたの」と嘘をついてしまったのだ。 その日のうちにライアンは勘当され、翌日には屋敷を去った。 そうして、ジャナの初恋は無残な形で終わりを告げたーー 長い空白の時を経て再会した彼は、いまや別人のように、 彼女を嘲笑していた。「復讐を受ける覚悟はできているか?」と。
豪奢な屋敷で何不自由なく育ったチェシーだったが、父亡きあとは使用人部屋に移り、マイルズに雇われていた。頬に傷跡が残る孤独な主人の影に、チェシーは心惹かれるが、ある日、マイルズに求婚されて、悩んだ末、退職届をだした。彼に愛などないのは明白だったから…。だがマイルズは、仕事を辞めるまでの4週間は少なくとも僕に従うべきだと、執拗に婚約指輪を買おうとする。だから、チェシーは値崩れしないアンティークものを選んだのだ。別れてから彼が売れるように。凍りついた涙のような結晶を。
母親の押しつける結婚から逃れる手助けをしてほしい。広告代理店に勤めるローラは顧客からそう懇願され、言われるままに恋人を装って、イタリアを訪れた。ローラを待っていたのは、息子の恋人に敵意を抱く母親と、滞在先の館の主で、顧客の従兄にあたるラモンテッラ伯爵だった。伯爵は到着直後から何くれとなくローラの世話をやき、観光へも連れだしてくれた。黒い瞳に黒い髪。なんて神秘的なの?すっかり伯爵に夢中になったローラは彼の誘惑の罠に落ちるが、彼女がバージンだと気づいた伯爵にベッドから追いだされてしまう。いったいなぜ?伯爵の企みを知らないローラは困惑し…。
ロンドン郊外に立つ由緒ある豪壮な屋敷、マニオン邸──この屋敷の正統な継承者はあなたなのよ。デイナは亡き母から、繰り返しそう説かれ、それはまるで呪いの言葉のように、その後のデイナの人生をがんじがらめに支配していくことになる。彼女は屋敷の家政婦である伯母に引き取られた貧しい少女だった。母のためにも、かならずこの屋敷を手に入れてみせるわ。だがその企みも、屋敷に出入りする敏腕実業家ザックに見破られ、非難されたあげく、デイナは屋敷を追い出されてしまう。そして7年後、ふたりは予想外の再会を果たすことになるが……。
アリーは若くして放蕩貴族の花嫁となったが、義母から跡継ぎの誕生を熱望され、心を病んでしまう。事故で不能となった夫の子を産むことなど不可能だったから。療養のためフランスの大叔母のもとへ身を寄せた彼女は、医師レミー・ド・ブリザと出会う。指輪は置いてきていた。レミーと激しく惹かれ合い、生きる喜びを見出したのも束の間、彼に身の上を知られ、激怒され、リリーは追い払われてしまう。義母は身ごもっていた彼女を責めるどころか、跡継ぎだと喜んだ。このままでは愛する人の子を奪われる……リリーはある決心をする。