著者 : サラ・クレイヴン
7年前に、忽然と姿を消したライアンが町に戻ったと知り、ジャナの胸に、一瞬にして暗い影が差した。16歳のころ、ジャナは屋敷に住むライアンと愛し合っていた。だが、部屋に踏み込んできた彼のおじに見つかって、思わず、「ライアンに連れ込まれたの」と嘘をついてしまったのだ。その日のうちにライアンは勘当され、翌日には屋敷を去った。そうして、ジャナの初恋は無残な形で終わりを告げたー長い空白の時を経て再会した彼は、いまや別人のように、彼女を嘲笑していた。「復讐を受ける覚悟はできているか?」と。
豪奢な屋敷で何不自由なく育ったチェシーだったが、父亡きあとは使用人部屋に移り、マイルズに雇われていた。頬に傷跡が残る孤独な主人の影に、チェシーは心惹かれるが、ある日、マイルズに求婚されて、悩んだ末、退職届をだした。彼に愛などないのは明白だったから…。だがマイルズは、仕事を辞めるまでの4週間は少なくとも僕に従うべきだと、執拗に婚約指輪を買おうとする。だから、チェシーは値崩れしないアンティークものを選んだのだ。別れてから彼が売れるように。凍りついた涙のような結晶を。
母親の押しつける結婚から逃れる手助けをしてほしい。広告代理店に勤めるローラは顧客からそう懇願され、言われるままに恋人を装って、イタリアを訪れた。ローラを待っていたのは、息子の恋人に敵意を抱く母親と、滞在先の館の主で、顧客の従兄にあたるラモンテッラ伯爵だった。伯爵は到着直後から何くれとなくローラの世話をやき、観光へも連れだしてくれた。黒い瞳に黒い髪。なんて神秘的なの?すっかり伯爵に夢中になったローラは彼の誘惑の罠に落ちるが、彼女がバージンだと気づいた伯爵にベッドから追いだされてしまう。いったいなぜ?伯爵の企みを知らないローラは困惑し…。
ロンドン郊外に立つ由緒ある豪壮な屋敷、マニオン邸ーこの屋敷の正統な継承者はあなたなのよ。デイナは亡き母から、繰り返しそう説かれ、それはまるで呪いの言葉のように、その後のデイナの人生をがんじがらめに支配していくことになる。彼女は屋敷の家政婦である伯母に引き取られた貧しい少女だった。母のためにも、かならずこの屋敷を手に入れてみせるわ。だがその企みも、屋敷に出入りする敏腕実業家ザックに見破られ、非難されたあげく、デイナは屋敷を追い出されてしまう。そして7年後、ふたりは予想外の再会を果たすことになるが…。
アリーは若くして放蕩貴族の花嫁となったが、義母から跡継ぎの誕生を熱望され、心を病んでしまう。事故で不能となった夫の子を産むことなど不可能だったから。療養のためフランスの大叔母のもとへ身を寄せた彼女は、医師レミー・ド・ブリザと出会う。指輪は置いてきていた。レミーと激しく惹かれ合い、生きる喜びを見出したのも束の間、彼に身の上を知られ、激怒され、アリーは追い払われてしまう。義母は身ごもっていた彼女を責めるどころか、跡継ぎだと喜んだ。このままでは愛する人の子を奪われる…アリーはある決心をする。