著者 : サラ・クレイヴン
レイシーが12歳のとき、最愛の父が再婚した。金目当ての継母にとって彼女は邪魔者でしかなかったらしく、ほどなくしてレイシーは修道院の音楽学校へ預けられた。だが卒業目前になって事態が一変する。父が病に倒れると同時に事業の経営も悪化。継母から助けてほしいと泣きつかれたのだ。海運王トロイを満足させ、資金を引き出せれば父は助かるのね?レイシーにしかできないという継母の口車に乗せられ、妖艶なドレスで飾り立てられた彼女はトロイに身を投げだすが、荒々しく唇を奪った彼から思いがけない言葉をかけられる。一夜だけの相手は必要ない。結婚してほしい、と。
キャシーは広告代理店で働きながら、女手一つで幼い娘を育てている。力を誇示する男性に対して恐怖心があるため、いっさい身を飾らず目立たぬようにして異性を遠ざけ、娘との生活を大切にしてきた。ある日、化粧品会社に向けたプレゼンテーションを任されることになり、急遽、上司から、化粧をしてセクシーな服を着ていくよう命じられる。相手先へ向かったキャシーは、精悍な顔だちの男性に正面衝突して驚いた。高級スーツをまとった長身の彼こそ、化粧品会社の社長ローハンだった!怖れとともに、胸の奥に甘い疼きを覚え、キャシーは戸惑った。やがて、そんな彼女の心を見透かすように、ローハンは宣言した。「堅物を演じても無駄だ。その殻を破って、いずれ必ず君を手に入れる」。
ターンは里親夫婦の娘イーヴィと本当の姉妹のように育った。あるときイーヴィが、ひどい失恋をして寝込んでしまう。キャズという金持ちの男に弄ばれ、婚約破棄されたというのだ。ターンはいても立ってもおれず、その男に会おうと決めた。妹の絶望を知れば、彼は思い直してくれるかもしれないわ。ターンは素性を伏せて、キャズが経営する会社に職を得たが、意外なことに彼は有能で人望も厚く、すばらしい男性だった。しだいに募るキャズへの想い。こんなはずではなかったのに…。何も知らない彼はターンを熱く見つめ、囁いた。僕は本気だ、と。
母を肺炎で亡くしたルーは、父の再婚相手と暮らしてきた。要求の多い継母から家政婦のように家事をさせられる日々も、恋人と結婚すれば終わりを告げると思えば、耐えられる。ところがある日、大富豪と婚約を発表したばかりの義理の妹が、なんと、ルーの恋人と駆け落ちをしてしまった!青ざめ、涙の跡も乾かぬ顔で家を出ようとしたルーに、妹の“元”婚約者アレックスが、車で送ると申し出た。そして、驕慢さを漂わせる唇がぞっとするほどセクシーな彼は、弱りきったルーを鋭く光る目で見ながら、言い放った。「君の妹の代わりをしてくれたら、住む家も慰謝料もあげるよ」。義理の母にこき使われるシンデレラが主人公の物語を特集。僕と偽装結婚をすれば誰にも哀れみをかけられずにすむと言うアレックス。戸惑いつつも、寄る辺ないルーはやむなく…。
恋人と別れ、傷心旅行でイタリアへ向かったルーシー。運良く格安の料金で豪華なトスカーナの別荘を借りられた。3日後、町の広場でひったくりに遭ったところを、目が眩むほど高貴でセクシーな男性に助けられた。ジュリオ・ファルコーネ伯爵。噂に高い名門貴族だった。ところが、同じ別荘に泊まった旅行客たちのパーティーの最中、誰あろうファルコーネ伯爵が現れ、みなを追い出した。別荘を貸した男は詐欺師で、本当の持ち主は自分だという。彼は、一行が別荘と調度品に与えた多大な損害をつぐなうために、ルーシーに「ここに残るように」と冷ややかに命じた。
大富豪のニック・テンペストと結婚したキャリーは、式を挙げた直後に夫の浮気現場を目撃し、家を飛び出した。2年経った今もショックと傷心は消えず、逃亡生活を続けている。だがある日、ニックは不意に現れた。ずっと彼女を追っていたという。頑なに離婚を求める彼女に、ニックは無慈悲な条件を突きつけた。「戻ってきて僕の子を産んだら、きみを解放しよう」彼から逃げ続けることはできないーキャリーは受け入れた。毎夜夫の情熱に灼かれても、そこに愛がないことは明確で、相変わらず彼のまわりには、浮気相手の女性の影がちらつく。つらすぎる2カ月が過ぎたころ、キャリーは妊娠に気づくが…。
父の死後、初めて母の遺品を見ることを許されたサビーヌは、実の父がほかにいるという事実を知って愕然とした。生前、母はフランスの生まれ故郷について多くを語らなかったが、かの地に行けば、本当の父親がわかるかもしれない。不安を胸に抱えて、サビーヌは母の故郷の村を訪ねた。すると一人の男がサビーヌを見たとたん、怒鳴りつけてきた。目に軽蔑の色を浮かべて、二度とここに来るなと言って。危険な香りと、鮮烈な魅力を放つ男の剣幕に思わず凍りつく。彼は、私の父が誰か知っているのだろうか…?
18歳のとき、エミリーはイタリアの伯爵ラファエレと結婚した。亡き父の遺言どおり、21歳になるまでの便宜上のもので、それは名ばかりの結婚だった。初夜でさえ別々の寝室で、指一本触れようと彼はしなかった。エミリーは愛していたのに。3年が過ぎても、愛人たちと浮き名を流し続ける夫に耐えかね、エミリーは、この婚姻自体を無効にするよう要求した。しかし、それを夫は裏切りと受け止めた。彼の逆鱗に触れたのだ。怯えて逃げ込むエミリーを彼はたやすく追いつめ、捕らえてー「これで夫婦になるんだ。誰もが認める夫婦に」と唇を貪った。
ひと月ぶりに愛する我が家へ戻ってきたジュリアは愕然とした。留守中に父が破産し、屋敷を売り払うことになっていたのだ。買い手は悪名高いギリシア人富豪、アレックス・コンスタンティス。アレックスと顔を合わせた瞬間、ジュリアは驚きを隠せなかった。さっき私が不法侵入者と間違えた礼儀知らずな人だわ!アレックスはあろうことかジュリアを気に入り、誘惑したばかりか、ぼくのものになれば屋敷を手放さずにすむと言って求婚してきた。尊大な物言いと冷たい微笑に、不本意にも感じたかすかな胸のときめき。ジュリアはそれを無視して、彼の申し出を受けた。これはすべて家のためーそう自分に言い聞かせながら。
フランスのオーヴェルニュ地方に立つ古城ーその城主ブレーズの妻となった若きアンドレアは怯えていた。彼女は従妹が安易に交わした便宜結婚の約束を取り消すため、イギリスからたったひとりでこの城へやってきた。ところがブレーズから執拗に責め立てられて、結局、彼女が身代わりの花嫁になるしかなくなったのだ。私欲のために見知らぬ女性を妻にするなんて、残酷すぎるわ!彼を憎もうとしたアンドレアだったが、美しくも顔に傷をもつブレーズの、閉ざされた心を知り…。名作復刊!
ジェンマは兄の誘いにこたえてクレタ島に到着した。ところが島に滞在しているはずの兄は、約束の日時に空港に降り立ったジェンマを迎えに来なかった。空港近くのホテルに落ち着いて数日後、やっと兄からメッセージが届き、ジェンマは小さな村の別荘を訪ねていった。だがそこに兄の姿はなく、代わりに前日遺跡で出会った男性が現れた。なぜか怒りに燃える目でじっとジェンマを見つめていた、あの男性だ。そのとき、ジェンマは知りもしなかったー謎の男性がアンドレアス・ニコライデスというホテル王の富豪で、冷酷にも彼女を誘惑し、身も心も虜にしようと企んでいるとは!
ある日、リサのもとに、義妹から一通の手紙が届く。来月には結婚するので、実家に帰ってきてほしいという。捨てたはずの過去とわだかまりが残る、あの豪奢な屋敷に?18歳の夜ー脳裏を2年前の、冷たい義兄デーンの顔がよぎる。不品行な義妹をかばったせいで、リサはふしだらな娘と蔑まれ、デーンに力ずくで組み伏せられたのだ…心から慕っていたのに。耐えきれないリサは家を出た。二度と帰らないつもりで。義妹の頼みを断る理由を考えていたとき、ふいにドアベルが鳴る。扉を開けると、そこには鋭い嘲笑を浮かべたデーンがいた。
「ザンダー…」アラナは友人の招待で訪れた由緒ある邸宅で、苦い一夜の恋の相手と再会した。1年前、襲われかけたところを助けてくれたハンサムな実業家、ザンダーの魅力に抗えず、彼のペントハウスで純潔を捧げた。けれど翌朝、身分違いの恋が怖くなって逃げ出したのだ。まさか彼が覚えているはずもない。1年前に彼の寝室から逃げ出した、臆病な娘のことなど…。ところが、巨万の富を持つ彼はアラナが勤める会社を買収し、あろうことか新しい上司として赴任してきた!
早くに親を亡くしたナターシャは、ギリシアの養父のもとで育った。今は養家を離れ、ひとりロンドンで家事代行業を営んでいる。ある日、養父の死後、海運事業を引き継いだ義兄たちから呼び出された。悪賢い目をした義兄たちは家業が倒産寸前だと説明したあと、1枚の紙をナターシャの前に置いて言った。「おまえがここにサインさえすれば、この家は守られる」ナターシャは文面を読んでショックを受けた。悪名高きプレイボーイ大富豪ーアレクサンドロス・マンドラキスと結婚しろですって?ひどいわ、ライバル会社の社長に私を売るだなんて!
モルウェンナは、父カースレイク卿と兄を一時に失うと、爵位も領地もすべてを父の従弟に剥奪された。一文無しの彼女を親族は煙たがり、藁にもすがる想いで、亡き母がこよなく愛した故郷、トレヴェンノン一族が住む崖の館をモルウェンナは訪ねるのだった。ところが母の娘だと告げると、出てきた館の後継者ドミニクは、美しい唇を皮肉に歪ませ、何をしに来たと言い放ったのだ。モルウェンナはまだ知らなかった。この荒涼たる地で、母が禍を起こし、ドミニクから蔑まれているということを。
秘書のリサは、あるとき仕事を通じて出会った若いフランス人貴族から、熱烈な求愛を受ける。その気になれないリサがどう断ろうか考えあぐねていると、“急に都合が悪くなった”とデートの誘いを取り消す報せが。伝言を届けたのは、ラオール・デ・サンドニと名乗る男性ー彼はフランスの大企業の経営者であるばかりか、くだんのプレイボーイ貴族の兄で、軽率な弟を心配しているという。リサは、威厳をたたえたハンサムなラオールに激しく惹かれるが、フランスに城を持つ貴族の跡取りである彼は、雲の上の人だ。そしてリサのことを、金目当てに弟に近づいたと思い込んでいる…。
かつては“地上の楽園”に見えたクリストフォロ島ー今のサマにとっては一刻も早く逃げだしたい場所だ。母が亡くなり、サマは冷酷な義父の経営するホテルで、ただ同然にこき使われたあげく学費さえ出してもらえないのだ。母と暮らしたイギリスへ帰りたい。彼女はその一心で観光客相手に似顔絵を描き、費用を貯め始めた。その日も仕事で港にいたサマは、妙な視線を感じて苛立った。海賊のような荒っぽい男。なぜ彼は私をあんな目つきで見るの?男はサマ近づくや絵をこき下ろし、強引に彼女を誘惑しだした。
会ったこともないギリシャ人の祖父から手紙が届いた。病床に伏し、死ぬ前に一目ヘレンに会いたいと言うのだ。ヘレンは同情をおぼえるも、父と駆け落ちした母を勘当し、亡くなるまで許さなかった祖父を恨む気持ちもある。迷う彼女の前に、ある日、祖父の使者だという謎の富豪が現れる。その男、デイモンは美しいが、微塵の甘さも感じさせない野獣のような鋭い目で、力ずくでも君を連れていく、と告げた。容赦なく追いつめられて、怯えるヘレンは思いもしなかった。このあとの船旅で、デイモンの激情の炎に焼かれようとは。
妹の夫に懇願され、セレナは2年ぶりにリムノス島を訪れた。重病のはずの妹は元気だったが、彼らの軽食堂の経営権をある有力者に奪われそうになっているので助けてほしいという。その人物とは、かつて愛したギリシア富豪アレクシスだった。愛をささやく低い声、生まれて初めて知る愛の喜び…。鮮やかによみがえる甘美な記憶を振り払いながら、セレナは勇気をかき集めてアレクシスのもとへと向かった。密かに産んだ子どもの存在を知られているとはー自分がすでに彼の罠にかかっているとは夢にも思わずに。