著者 : ショウコ・ハーディング
ミダスの汚れた手ミダスの汚れた手
現代化の波が押し寄せるギリシャの街アルカディア。パンデリス親子もまた、さらなる利益を求めて観光客誘致に躍起となり、人里離れてひとり静かに暮らしているガブリリス老人の土地を、ヴィラ建設地にしようと目論んでいた。そんななか、ガブリリスがひき逃げ事故で命を落とす。折しも故郷に戻ってきた太った男ヘルメス・ディアクトロスは、友人ガブリリスを偲びつつ、真相の究明に乗り出す。地元の警察、マスコミ、開発者…各々の利権や欲望が露呈し、事件は意外な結末を迎える。娘を黄金に変えた古代ギリシャのミダス王の悲劇が、再び現代に繰り返される。
アテネからの使者アテネからの使者
エーゲ海に浮かぶティミノス島。うららかな春の日、ひとりの女性が、崖の下からもの言わぬ姿となって発見される。警察は、漁師の妻である女性が、夫が漁に出ている間不貞をはたらいていたという噂をもとに絶望の果てに自殺したと結論づけ捜査を放棄する。数か月後、島に風変わりな男がやってくる。でっぷりと太った体に白いスーツとスニーカー。高価な鞄を携え、名前をヘルメス・ディアクトロスと名乗った。男は漁師の妻の死を究明するため、アテネの機関から遣わされて来たと言う。しかし、男の捜査の前には島の古い因習や淀んだ人間関係が立ちはだかっていた。
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