著者 : ジャニス・プレストン
小さな娘に、愛を注ぎたい。 たとえ母だと名乗れなくても。 孤児のグレースは9歳で女学校に入り、家庭教師になる訓練を受けてきた。 16歳のとき、ハンサムな青年と恋に落ちて妊娠したが、 相手は恐れをなして軍隊に逃げたすえに戦死した。 ひっそり出産したグレースはやむにやまれず娘を養子に出したものの、 自身の愛されぬ少女時代に娘を重ね、そのことを悔いない日はなかった。 娘が幸せでいるか、いつか絶対にこの目で確かめようと心に誓った。 今、養親を亡くした娘が、人々から恐れられる侯爵に引き取られたと知り、 心配でたまらないグレースはレイブンウェル侯爵邸を訪れた。 そして、運よく住み込みの家庭教師として雇われることにーー 2歳の侯爵家令嬢クララの生みの母であることは、極秘のままで。 切ないけれど、もしもクララの母であることを知られたら即解雇は免れないと恐れるグレース。一方のレイブンウェル侯爵もまた、人里離れた地で隠遁生活を送っているのには、深く切ない理由がありました。感涙必至のクリスマス・リージェンシー・ロマンス!
リバティは、妹の社交界デビューのためロンドンに出てきた。もっかの悩みは、ある貴族の影響で妹に悪い評判が立ちそうなこと。ここは姉として抗議しなければ、と件の人物の屋敷へ向かうが、悲しいかな、田舎娘の彼女は貴族の顔に疎く、相手を間違えてしまう。そこにいたドミニクは、英国随一の家柄を誇り、ハンサムで品行方正、社交界でいま最も理想的な結婚相手と目される公爵家の御曹司だった。「君の訪問や見当違いな抗議はレディの作法にもとる」と切り捨てられ、リバティは落ち込むが、彼はそんな彼女の評判まで気にかけてくれた。まるで貴族の鑑のような紳士だわー思いがけずリバティの胸が疼く。彼が妻に求めるのは、きっと完璧なレディでしょう…私とは正反対の。
平民の父を持つロザリンドは、母方の親戚の貴族たちに疎んじられ、そのつらい経験のせいで上流階級を避けて生きてきた。足の不自由な弟と幼い義理の弟妹のため、結婚もとうにあきらめていた。ある日、優しかった継父の死を機に、あくどいおじに家を奪われ、逃げた先で美しい銀の瞳の旅人レオと出会って心を通わせる。だがいずれロンドンへ帰る彼を思い、ロザリンドは胸を締めつけられた。そして生涯でただ一度だけ、愛しい人に身を捧げることを自分に許すが、ロザリンドが無垢だとわかるやいなや、レオの態度が豹変した。じつは公爵の彼は、自分に群がる女たちに辟易し、こう思っていたー彼女も僕の身分を知って、公爵夫人になるために誘惑の罠を張ったのか!
フェリシティは良家に生まれながらも、一生結婚せずに世のために身を尽くすつもりでいた。華やかな母や姉と違い“見劣りする娘”と囁かれる彼女は、母たちのように愛に溺れ、愛に裏切られる人生を望んでいなかった。ところが母が再婚し、義父にいじめられる日々が始まると、彼女は家を出たい一心でやむなくお見合いをしたいと願い出る。持ち上がった縁談の相手は、スタントン伯爵リチャードー社交界随一の花婿候補で、フェリシティが心密かに慕っていた男性。跡継ぎをもうけるための便宜結婚を望む伯爵に、彼女の心は揺れた。私はきっと彼を愛してしまう…決して、愛されるわけもないのに。