著者 : ジャニス・メイナード
姉から預かっている生後半年の甥テディをかわいがるフィービー。ある日、彼女が管理するコテージに、大企業の重役レオが静養に訪れる。権力で人を従わせることに慣れた堂々たる態度の、容姿端麗な男性だ。ひょんなことから彼と一つ屋根の下で過ごすことになり、身の上話やクリスマスの飾りつけを一緒にするうち、打ち解けていく。そんななか、フィービーは赤ちゃん用の木馬のオーナメントを見て、3年前にお腹の子を亡くしたつらい記憶が甦り、思わず涙をこぼした。レオの慰めに救われた彼女は、そのまま身も心もゆだねるのだった。ところが翌日、気まぐれに現れた姉がテディを連れて帰ってしまい、フィービーはふたたび喪失感にさいなまれて…。
まさかブロディがまた戻ってくるなんて…ケイトはうろたえた。ハイランドの戦士を思わせる長身にがっしりとした体、魅力的な青い瞳を持つ大富豪と出会ったのは4カ月前のことだった。祖母を訪ねてスコットランドからはるばるこの町にやってきた彼とケイトは恋に落ち、熱く激しい2週間を過ごしたーもう二度と会えない。これはひとときの夢なのだと自分に言い聞かせて。ブロディは高齢の祖母を故国へ連れ帰るために来たが、祖母は拒み、ケイトと一緒に住めば問題ないと主張し始めた。なんてこと!困ったわ。もうこれ以上、隠し通すことは無理よ。でも彼はどうするだろう?あなたの子供がおなかにいるの、と聞いて。
マリアは上司とともに、マイアミの最高級ホテルを訪れ、紺碧の海に臨む豪華なパーティ会場で、富豪モントロ一族と対面していた。目的は地中海の国アルマの王制復活のため王家の末裔たちを呼び戻すこと。だが先ほどから上司のアレックスは、一族の一人に口説かれる胸元のあいたドレス姿のマリアを渋い顔で見ている。でも、どんなハンサムな王子様にも大富豪にも私は惑わされないー初めてアレックスの秘書になって以来、ずっと彼に夢中だから…。貴族の彼をどんなに想っても、この恋が報われることはない。タキシード姿の今夜の彼は、いつにもましてセクシーだけれど。ところがロマンチックな曲が流れだすと、彼はマリアの手を取って…?
姉の死後、姪を引き取ったハッティは一縷の望みを胸に、かつての恋人で大富豪ルックのオフィスを訪ねた。赤ん坊を抱いたハッティを、黒い瞳が射るように見つめる。彼女は挨拶もそこそこに切り出した。「わたしと…結婚してほしいの」そしておずおずと打ち明けた。卑劣な義兄一家に姪を渡したくない一心で、“資産家の婚約者がいる”と嘘をついてしまったことを。いちだんとセクシーさを増したルックのハンサムな横顔は険しかった。こんなばかげた頼み事、承知してくれるはずがないわよね…。「いいだろう。すぐにぼくの家に引っ越すんだ」冷たい光を宿すルックの目に、欲望の炎がともった。