著者 : ジュリー・オオツカ
わたしたちはどんな痛みからも解き放たれる。泳いでいる、そのときだけは。過食、リストラ、憂鬱症ーー地下の市民プールを愛し、通いつめる人達は、日常では様々なことに悩み苦しんでいる。そのうちのひとり、アリスは認知症になり、娘が会いに来ても誰なのかわからなくなって、ついに施設に入ることになる。瞬時にきえてしまうような、かけがえのない人生のきらめきを捉えた米カーネギー賞受賞作。
第二次世界大戦中のアメリカで、強制退去によって追われた日系人の一家。 彼らはユタ州の砂漠にある収容所に送られる。家族それぞれの視点から語られる、有刺鉄線の内側で過ごす日々……。 オオツカの長編デビュー作、待望の新訳。 「かつて、「日本人」であるというだけで、囚われたひとたちがいる。ひどいめにあわされたひとたちがいる。かれらの普通の日々を狂わせたのは、「神」だった」 ーー温又柔(小説家) 「歴史のけたたましい音の下でひっそりと息を殺していた、名もなき声の数々が、物語のなかでこだまする。不穏で、残酷で、そして美しい言葉が」 ーー藤井光(アメリカ文学研究者) 【内容紹介】 カルフォルニア州バークレーで暮らす日系アメリカ人家族に突然訪れた不幸。 パール・ハーバーの夜、父親が尋問のためFBIに連行された。 そして翌1942年春のある晴れた日、街のいたるところにあの告知が現れた。「強制退去命令十九号」。 残された母親とその子ども二人が、込み合う列車に乗り込み、たどり着いたのは、ユタの埃っぽい砂漠の有刺鉄線で囲われたバラックの町だった…。 「天皇が神だった」あの時代、名もなき家族の人生が深く、大きくゆさぶられる…。 『屋根裏の仏さま』でPEN/フォークナー賞を受賞した、ジュリー・オオツカのデビュー作が小竹由美子の新訳で復刊。 強制退去命令十九号 列車 あのころ、天皇は神だった よその家の裏庭で 告白 訳者あとがき
20世紀初頭、写真だけを頼りに、アメリカに嫁いでいった娘たちーー。その静かな声を甦らせる中篇小説。百年前、「写真花嫁」として渡米した娘たちは、何を夢みていたのか。厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、あるいは喪い、懸命に築いた平穏な暮らし。だが、日米開戦とともにすべてが潰え、町を追われて日系人収容所へーー。女たちの静かなささやきが圧倒的な声となって立ち上がる、全米図書賞最終候補作。