著者 : ジョナサン・スウィフト
1726年にロンドンで刊行された『ガリバー旅行記』は、アイルランド出身の聖職者でジャーナリストのジョナサン・スウィフトが書いた4部構成の諷刺小説です。現在にいたる300年のあいだ、世界中の子どもと大人に読み継がれてきました。次々と起きる出来事、たっぷりの諷刺、理屈抜きの面白さ!本書は定評と実力をそなえた米文学者の柴田元幸が、「お茶の間に届くこと」を意識して、朝日新聞に好評連載した翻訳の書籍化です。夏目漱石は『ガリバー旅行記』の諷刺の特質を論じて「古今の傑作」と高く評価し(『文学評論』「スウィフトと厭世文学」)、20日世紀の傑作諷刺小説『動物農場』や『一九八四年』を描いたジョージ・オーウェルも「飽きることなどまずあり得ない本」と賞賛しました(「政治対文学ーー『ガリヴァー旅行記』論考」)。物語は嵐にあって船が難破、必死に泳いで辿り着いた島が小人国のリリパット。そして次には巨人国のブロブディングナグ、空飛ぶ島のラプータ、支配される島のバルニバービ、フウイヌムと呼ばれる馬たちが暮らす理想郷へと……4部構成で縦横無尽にすすみゆきます。訳者解説では『ガリバー旅行記』の出たとこ勝負で縦横無尽に進んでいくストーリの面白さの特質が分析されています。作品を創造的に描きこんで連載時より好評を博した挿絵の平松麻による口絵4頁つき。◯目次出版者から読者へ 第1部・リリパット国渡航記 第2部・ブロブディングナグ国渡航記 第3部・ラプータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリブ、日本渡航記 第4部・フウイヌム国渡航記 ガリバー船長から縁者シンプソンへの手紙 告 解説
英国十八世紀が生み出した最高傑作の一つ、ジョナサン・スウィフト作『ガリヴァー旅行記』(1726年)。諷刺と綺想に満ち、過去、多くの名翻訳者たちを魅惑してきたこの作品に「学魔」高山宏が挑戦。クラシックにして現代的な「神」訳、ここに誕生!リリパット、ブロブディングナッグ、ラピュタ、フウイヌム国などに「島居」するガリヴァーの物語をもって、英国十八世紀文学叢書はこれにて完結。
寝ている間に手足と体をしばられ、台車にのせられて小人国の都につれてこられたガリバー。小山のような人間に、都は大さわぎ! 左足を鎖でつながれたガリバーは、小さな皇帝と会うが……。
子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667-1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。