著者 : セルバンテス
贋作と本物とが交錯するパロディとしての騎士道物語! サラゴサからバルセロナへと偽者が本物のドン・キホーテの旅程を変えてしまう破天荒な旅。 「貧乏郷士アロンソ・キハーノすなわちドン・キホーテは、心根の極めて優しい温厚な性質の人物であって、彼を憎む者は誰もいない。言葉の端々にその人柄が窺え、作品の全体からそれがにじみ出している。狂った騎士の冒険を読み終えて、ドン・キホーテにほのかなりとも親しみと労(いたわ)りを感じていただければ幸いである。」(「『ドン・キホーテ』の背景とセルバンテス」)
物語も終盤にさしかかり、ドン・キホーテ主従は、当時実在のロケ・ギナール率いる盗賊団と出会い、さらにガレー船とトルコの海賊との交戦を目撃することになる。さて、待望の本物の冒険に遭遇したわがドン・キホーテの活躍は…。
「後篇」では、ドン・キホーテの狂気は大きく様変わりする。もはや彼は、自らの狂気に欺かれることはない。旅篭は城ではなく旅篭に見え、田舎娘は粗野で醜い娘でしかない。ここにいるのは、現実との相克に悩み思案する、懐疑的なドン・キホーテである。
十六、七世紀スペインの片田舎で、意気軒昴たるドン・キホーテが「冒険」を演じているとき、そこには、実は何ひとつ非日常的なことは起こっていない。彼の狂気が、けだるく弛緩した田舎の現実を勇壮な「現実」に変え、目覚ましい「冒険」を現出させる。
その名も高きドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャとその従士サンチョ・パンサ、例によって思い込みで漕刑囚たちを救ったあげく、逆に彼らに袋だたきにされ、身ぐるみはがれる散々な目に。主従はお上の手の者の目を逃れ、シエラ・モレーナの山中に。
騎士道本を読み過ぎて妄想にとらわれ、古ぼけた甲胄に身を固め、やせ馬ロシナンテに跨って旅に出る。その時代錯誤と肉体的脆弱さで、行く先々で嘲笑の的となるが…。登場する誰も彼もがとめどもなく饒舌な、セルバンテス(一五四七ー一六一六)の代表作。
愛する妻の貞節を信じ切れない夫は試しに妻を誘惑してみてくれと親友に頼みこむが…。突飛な話の発端から、読む者をぐいぐいと作者の仕掛けた物語の網の目の中に引きずりこんでゆくこの「愚かな物好きの話」など四篇を精選。『ドン・キホーテ』の作者(一五四七ー一六一六)がまた並々ならぬ短篇の名手であることを如実にあかす傑作集。
騎士道物語の読み過ぎで妄想に陥った農民のアロンソ・キハーダ老人は、 みずからを伝説の騎士と思い込み、痩せ馬のロシナンテと従者サンチョ・パンサを引きつれ、 家族や友人の心配をよそに冒険の旅に出る……。 自意識や人間の成長などそれまでになかった「個」の視点を物語に盛り込み、 「はじめての近代小説」ともいわれる16世紀の傑作を漫画化。