著者 : ソン・ウォンピョン
どこにでもいる平凡な中年男、キム・ソンゴン。仕事にも家族にも運にも見放され、彼はついにこの世に別れを告げる決意をする…が、それさえもあえなく失敗してしまう。この世に舞い戻ったソンゴンが見つけたのは、とある一枚の写真ーそこには若かりし頃の彼が家族とともに写っていた。何もかも今の自分とは違いすぎることに愕然とした彼は、写真の中の自分を真似てみようと、まずは姿勢矯正から始めることに。そんな取るに足りない小さなチャレンジが、やがてソンゴンの人生を大きく変えていくー。2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位 扁桃体が小さく“感情”がわからないユンジェ。 怪物と呼ばれた少年が愛によって生まれ変わるまでーー。 日韓累計150万部のベストセラー、待望の文庫化! 扁桃体が小さく、怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生、ユンジェ。祖母から「かわいい怪物」と呼ばれた彼は、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、黙ってその光景を見つめているだけだった。事件によって一人ぼっちになった彼の前に現れたのは、もう一人の“怪物”ゴニ。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくーー。
彼氏に振られ、職場をクビになり、賃料の値上げによって、今住んでいる部屋からの退去を余儀なくされた、踏んだり蹴ったりのシヨン。部屋探しのアプリで、格安の超優良物件に出会った彼女は即、入居を決める。格安なのには、理由があったー本来二人で暮らすはずの部屋を、四人で違法にルームシェアしていたからだ。優雅な独り暮らしには程遠いものの、そこそこ不自由のない生活を送っていたシヨンだが、ある日、オーナーが急遽、部屋を訪れる。慌てた四人は共同生活の痕跡を消すべく、その場しのぎの模様替えをし、借主の親族のふりをするが…(「他人の家」)。表題作ほか、人間心理の深淵をまっすぐに見つめた、傑作揃いの短編集!
年老いた女になるつもりはなかった。 その日その日を生きているうちに、いまにたどり着いただけ。 いまという日は、自分とはまったく関係のない他人のものでなければならなかった。 6人の女性作家が描く“おばあちゃん”アンソロジー おばあちゃん世代の作家オ・ジョンヒ(李箱文学賞、東仁文学賞と、韓国の二大文学賞を受賞。『鳥』で2003年ドイツのリベラトゥル賞受賞。現在は東仁文学賞の審査委員)は次のように述べている。 この小説集は、現代韓国文学の中心で熾烈な執筆活動をしている作家、六人六色の饗宴であると同時に、長い人生を送ってきたすべての「おばあちゃん」に捧げる賛歌でもある。老いていく私自身の姿や複雑な内面が見え、また、私が通過してきた道を生きている娘が、私自身が向かっている時間を生きた母親の姿がはっきりと見える。この作品集は老年に対する通念や偏見を破り、かといって下手なあきらめや和解も見られず、むしろ生の不可解さ、人間の存在の神秘さ、長い年月に堪えてきた人が放つ香りのようなものを読み手に伝える。紆余曲折と悲しみと心の傷によって、人間はかくも愛すべき存在でもあるのだということも。 (訳者あとがきより) <あらすじ> いつかおばあちゃんになることを夢見ていたのに「きのう見た夢」(ユン・ソンヒ)。 残されたフランスでの日記を手掛かりに孫が想像で描いたおばあちゃんの最後の恋「黒糖キャンディー」(ペク・スリン『惨憺たる光』)。 認知症になったおばあちゃんが何度も繰り返し伝えたのはトラブルの多い孫の未来のためだった「サンベッド」(カン・ファギル『別の人』)。 厳しかったおばあちゃんから遺された屋敷を処分するために久しぶりに足を運んだ私は、取り返しのつかない過去に引き戻される「偉大なる遺産」(ソン・ボミ『ヒョンナムオッパヘ』収録「異邦人」)。 女三世代で行ったテンプルステイで母の意外な一面を知り、母にだんだんと似てくる自分に気づく、ある穏やかな秋の日「十一月旅行」(チェ・ウンミ『第九の波』)。 ひとりで堅実に生きてきたはずが、いつの間にか老人だけのユニットに暮らす羽目に。二十一世紀後半の近未来を描くディストピア小説「アリアドネーの庭園」(ソン・ウォンピョン『アーモンド』『三十の反撃』)。 ミステリー、SF、ロマンス、家族ドラマなど、老いを描いた6編 きのう見た夢 ユン・ソンヒ 黒糖キャンディー ペク・スリン サンベッド カン・ファギル 偉大なる遺産 ソン・ボミ 十一月旅行 チェ・ウンミ アリアドネーの庭園 ソン・ウォンピョン 訳者あとがき
キム・ジヘ。平凡な彼女は、世の中にも会社にも期待することを諦めていた。だが、一癖ある同僚との出会いにより社会へ小さな反撃を始める。次第にジヘは自分らしい生き方を模索するようにー。第5回済州4・3平和文学賞受賞作品。
扁桃体が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記されることで、なんとか“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちになってしまう。そんなとき現れたのが、もう一人の“怪物”、ゴニだった。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくー。怪物と呼ばれた少年が愛によって変わるまで。