著者 : テリー・ブリズビン
冷酷非情な父の決めた政略結婚から逃れるため家出をしたエヴァは、外を彷徨い歩くうち、ひどい高熱に倒れて洞窟で気を失った。目を覚ますと、暗闇の中ほのかに、たくましい男の姿が。男の顔は天使のように見えた次の瞬間、悪魔のようにも見えた。誰なの?まさか、怒った父が送り込んできた追っ手?「おれはロバート・マッキントッシュだ。あんたの婚約者でもある」政略結婚の相手とわかって驚くエヴァだったが、意識不明の間、彼が看病してくれていたと知って胸が温かくなった。だがエヴァにはどうしても彼と結婚できない“秘密”のわけがあったーそれを口にしようものなら、生まれたばかりの小さな命に危険が…。
マリアンはある日、好色な輩に絡まれていたところを助けられ、見知らぬ救世主の魅力的な瞳が脳裏から離れなくなった。でも、私は“ロバートソンの淫売”と呼ばれ、一族から追放された身。誰かに恋するなんてありえない…。一方、美しい娘を助けたダンカンは彼女のことが気になりつつ、同盟を結ぶためにロバートソン氏族長のもとを訪れた。友好の印に酒がふるまわれ、不覚にも酩酊したダンカンは、マリアンの家に行くと、彼女を胸に抱いて唇を奪い、地面に倒れ込んだ。それを氏族長に見咎められ、二人は結婚を余儀なくされる。だが初夜の床でダンカンは驚いたー悪名高き妻はなんと、純潔だった!
3年前、逆境にいたところを、さる伯爵に救われて以来、伯爵夫妻が主のグレイストーン城に身を寄せている19歳のキャサリン。そこに集まったうら若き令嬢たちを前に、彼女は気後れしていた。伯爵の弟で、キャサリンが唯一心を許せる幼なじみのジェフリーが今、6人の花嫁候補と会うために、この城へ向かっているという。令嬢たちのように着飾ってもいないし、気の利いた会話もできない彼女は居たたまれず、以前いた修道院に今すぐ戻りたいとさえ願った。でも、もう少し耐えよう。ジェフリーの顔を最後にもう一度見るまでは。彼が結婚したら、キャサリンは修道誓願を立てるつもりだったー大好きなジェフリーの笑顔も、もう見納め。私は修道女になる…。
女子修道院に暮らすイリサは突然、非情な父の命令により連れ戻された。「お前は結婚することになった。相手には花嫁が、私には同盟が必要だ」政略結婚の相手はマクミラン氏族の支族長、ロス・マクミラン。視界を遮るようなベールをかぶせられ、式に臨んだイリサが知ったのは、相手方からは、花婿本人ではなく代理人しか現れなかったこと。そして、本当はイリサの姉が花嫁になる約束だったが、どういうわけか日陰の妹である自分が代わりに差し出されるという事実だった!修道女のような私に、美しい姉の代わりなんて務まらないのに…。一方のロスは、醜いと噂のイリサをあてがわれたと知って憤慨した。やがて、目の前に連れてこられた花嫁がベールを脱いだとき、ロスと氏族の者は一斉に息をのんだー花嫁の、その無垢な美しさに!
こんな寂れた路傍に、古ぎれのように行き倒れた女が…。爵位や本名をゆえあって隠して暮らしている騎士のウィリアムは、今にも息絶えそうな女性を捨て置けず、私宅へ運んで看護した。3週間後、ようやく意識を取り戻した彼女は、自分を介抱する男らしい彼をひたと見つめ、弱々しく口を開いた。「あなたは誰?誰なの…わたしは?」ウィリアムは名も生い立ちもわからぬ彼女を“イザベル”と名づけ、白魚のような指を見て、高貴な生まれかもしれないと考えた。そしてある日、イザベルが発した言葉に、彼は思わず息をのんだー「その振る舞いや話し方。あなたはまぎれもなく爵位を授けられた人ね」妹の命を守るため、ウィリアムはこの3年間、地位や特権を持つ騎士の爵位を隠し、風貌も変えて暮らしてきた。そんな彼の秘密を言い当てたイザベルの出自もまた、気になるが…?素性のわからない者同士、心と心が惹かれ合う、記憶喪失ロマンス。
和平のため敵対するマッキントッシュの城を訪れた族長の娘ベラは、花婿候補として、2人の男に引き合わされた。寡黙で野性味溢れるブローディ。女あしらいの上手い美男子ケイラン。氏族同士の争いに終止符を打つには、どちらかと結婚しなければならない。だが翌朝、ベラの弟が殺害され、犯人と断罪されたブローディは即刻追放、ケイランが次期後継者に指名された。4カ月後、ケイランとの婚礼を翌日に控えた嵐の夜、突然、ベラの寝室に侵入者がー!暗く険しいブローディの視線に瞳をとらえられた次の瞬間、ベラはたくましい腕で軽々と抱えあげられ…?!
愛なき結婚ーこれがわたしの宿命なのだろうか。反旗を翻したスコットランド王の軍により、ローンの城は陥落。父は城を追われ、ララと弟妹は敵の捕虜となった。スコットランド王の腹心の部下セバスチャンが、眼光鋭くララに迫る。花嫁になれ、さもなくば死を選べ、と。敵に身を捧げるのは屈辱だが、結婚を拒めば弟妹の命まで奪われてしまう。ララは敵の支配する城で、囚われの花嫁となるほかなかった。その夜、従順な新妻を演ずるべく、ララはベッドに身を横たえ、そして、待った。夫を欺こうという企みなどおくびにも出さず。
“野獣”が新しい花嫁を探しているー子ができぬ妻を殺した、残忍な城主コナー・マクレリーが妻の喪も明けないうちから花嫁を求めているという噂を耳にし、村人たちは震え上がった。やがて、“野獣”は没落氏族の娘ジョスリンに白羽の矢を立てた。弟を人質として城に囚われた今、結婚を承諾する以外、彼女に道はない。そして婚礼の日、現れた長身のたくましい体躯のコナー・マクレリーが欲望もあらわに無遠慮なまなざしでジョスリンを見た。昼間は存在を無視され、夜だけベッドで情熱を交わすー世継ぎをもうける道具としての虚しい結婚生活の幕開けだった。