著者 : ディック・フランシス
弁護士のジェフリイ・メイスンは、法律事務所に勤務しつつ、休日はレースに出場するアマチュア騎手。ある日、トップ・ジョッキーのバーロウが干草用のピッチフォークで串刺しにされるというショッキングな殺人事件が起き、ライバル騎手のミッチェルが逮捕された。あくまでも濡れ衣を主張するミッチェルだったが、被害者と犬猿の仲であったことは周知の事実で、凶器が本人のものであったこと、被害者の携帯電話に彼の名前で脅迫メールが送られていたことなど不利な状況証拠も揃っていた。騎手仲間であるメイスンは弁護を依頼されるが、その直後から「弁護を引き受けてわざと負けろ」という奇妙な脅迫の電話やメールが届き始める。恐怖と職業倫理の間で揺れ動くメイスン。時同じくして、彼は事務所の前で待ち伏せしていた男にバットで手ひどく殴りつけられる。暴漢はかつての依頼人トレントという男で、有罪になったことを逆恨みしての凶行だった。トレントの報復とバーロウの殺人事件には何らかの関連が?真実を白日の下に晒すため、そして自身の誇りを取り戻すため、満身創痍のメイスンは法廷に立つ。競馬シリーズの興奮にリーガル・サスペンスの醍醐味を盛り込んだ巨匠フランシスの意欲作。
元騎手で調査員のシッド・ハレーは、上院議員のエンストーン卿から持ち馬の八百長疑惑に関する調査を依頼された。しかしその直後八百長への関与を疑われた騎手が死体となって発見され、殺人容疑で逮捕された調教師も証拠不十分で釈放されたあと、不可解な自殺を遂げてしまう。真相究明に奔走するハレーだが、謎の刺客が最愛の恋人マリーナを襲う。不屈の男シッド・ハレーを四たび主役に迎えて、競馬シリーズ待望の再開。
マックス・モアトンは史上最年少でミシュランのひとつ星を獲得した若きシェフ。ニューマーケット競馬場の近くにみずからがオーナーのレストラン“ヘイ・ネット”を構えている。平日なら1週間以上、週末は1カ月前には予約が必要な人気店だ。ロンドン進出のオファーもあり、前途は洋々だった。しかし、彼が料理を担当した伝統の2000ギニーレースの前夜祭で食中毒が発生すると、将来に暗雲が立ちこめる。店の常連だった競馬界の有力者が次々と激しい腹痛と嘔吐に襲われ、〈ヘイ・ネット〉の厨房は食料基準局によって閉鎖されてしまう。マックス自身も毒に冒され、ベッドの上でのたうち回るはめに。彼と店のスタッフはつねに清潔を心がけ、食材の選定にも心を配ってきたはずだが…。必死に築き上げた評判も、このままでは地に落ちる。しかもレース当日、マックスは競馬場の貴賓席で催されるスポンサー企業のパーティをまかされていた。弱った体でなんとか料理をこなしたが、パーティ会場で爆弾テロが発生し、多くの死傷者が!前日の食中毒と爆弾事件になにか繋がりがあると直感したマックスは、汚名返上のため調査を開始する。『再起』で奇蹟の復活を遂げた人気シリーズの最新作がはやくも登場。
障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された。持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ。彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという。ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた。そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた。レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという。やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される。こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する。彼は証拠不十分で釈放されるが、やがて事件が起きた。そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく。だが、卑劣な敵は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた!『大穴』『利腕』『敵手』に続き、不屈の男シッド・ハレー四たび登場!巨匠が六年の沈黙を破って放つ待望の競馬シリーズ最新作。
初の短篇作品である「強襲」、長篇も含めてグランド・ナショナルをあつかった唯一の作品である「敗者ばかりの日」、めずらしくも婦人誌むけに書かれた「春の憂鬱」などの傑作に、本書のために書き下ろされた五篇の作品を加えた全十三篇の輝きが、ディック・フランシスの魅力のすべてを照らし出す。
貴族の血を受け継いでいながら、ひとりスコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、アリグザンダー・キンロック。ある日、彼は自分の山小屋で待ちかまえていた四人の暴漢に襲われ、あやうく命を落としかける。闇雲に「あれはどこにある?」と脅されたあげく、わけのわからぬままに崖の上から突き落とされたのだ。事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷へ行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義理の父が、心臓発作に倒れたとの知らせを受けたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義理の父の会社が倒産寸前であることを知る。経理部長が莫大な資産を横領して姿を消したらしい。しかも、会社が主催する障害レースの賞品である純金のカップも行方がわからない。会社の危機を救うべく奔走をはじめたアリグザンダーは、自分を襲った暴漢は横領事件に関係があるのではとの疑念を抱くが…。
落馬事故によって片腕となった元チャンピオン・ジョッキイ、シッド・ハレー。現在は競馬界専門の調査員となっていたが、放牧中の馬の脚を切断するという残忍な犯罪が連続して発生、かわいがっていたポニイを襲われた白血病の少女から、犯人を捜してほしいと依類される。だが、容疑者とした浮かび上がったのは、ハレー自身が犯人とは信じたくない人物だった。エリス・クイント-騎手時代のよきライヴァルで、私生活でもハレーの親友だった男。引退後は、テレビ・タレントとして国民的な人気を博し、誰からも愛される好男子だった。もちろんクイントは犯行を否定し、世間も彼が犯人とは信じなかった。かえって、恵まれているクイントを妬むあまり間違った告発をしたと、ハレーはマスコミからごうごうたる非難を浴びる。ところが、この執拗なマスコミの攻撃には、じつは裏があることが次第にあきらかになってくる…。『大穴』『利腕』につづき、不屈のヒーロー、シッド・ハレーが三度目の登場を飾る、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
東京に赴任していた英国外交官ピーター・ダーウィンは、本国へ転勤になり、帰国休暇の途中マイアミに立ち寄った。そこでクラブ歌手のヴィッキイと知り合った彼は、なりゆきで、娘の結婚式のために英国へ行く彼女とその夫を送って行くことになる。ヴィッキイの娘ベリンダの住む、チェルトナム競馬場近くの町は、偶然にも、騎手を父にもつダーウィンが幼年時代を過ごした場所だった。ベリンダは勤めている動物病院の獣医ケンと婚約していたが、ケンの周囲には暗雲がたちこめていた。優秀な獣医である彼が手術した馬が、なぜか次々と原因不明の死をとげ、病院に悪い噂がたちはじめていたのだ。さらにダーウィンらが到着して早々、病院は放火され、焼け跡から身元不明の死体まで発見された。ケンの窮地を救おうとダーウィンは調査を始めるが、やがて幼年時代のこの町での思い出がじょじょに甦り、その記憶の中に、事件の謎を解く重要な手がかりが隠されていることに気づく。
周囲の反対を押し切って、先祖代代敵対するアラデック家の息子と結婚した妹ホリイ。ところが、何者かの扇動による中傷記事によって二人が営む厩舎が窮地に追い込まれてしまった。憎悪に満ちた記事を陰で操る黒幕は誰か?チャンピオン騎手のキット・フィールディングは、妹夫婦の唯一の味方として背後関係を調べ始めるが、やがて彼の身にも魔手がのび始めた。徒手空拳の騎手がマスコミ界を相手に奔走するシリーズ第24弾。
サンテミリオン、マコン…私は一本一本、慎重に香りを嗅ぎ、味見をしては吐き出した。どれも同じワインだー酒屋を営むビーチは、あるレストランで偽ラベルで売られている酒を発見した。しかも、それは氷山の一角で、偽酒は大量にでまわっていたのだ。さらに件のレストランのウェイターが惨殺されるに及び、事件は複雑な様相をみせはじめた…。利き酒の能力と知識を買われ、警察の捜査に協力するうち、ビーチは巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく。酒の世界を舞台に、謙虚な勇気と該博な知識を武器に闘う男の孤独な姿を描く傑作サスペンス。
モントリオールからヴァンクーヴァまで、ロッキイ山脈を越えて驀進するカナダ大陸横断鉄道。各地の競馬場でレースをしながら、車内ではミステリ劇を楽しむという趣向の特別列車が、競馬振興のためにカナダ・ジョッキィ・クラブの支援で企画された。ところが、乗客の中に危険な男が1人いた。英国人の馬主ジュリアス・アポロ・フィルマー。脅喝によって名馬をおどしとったり、さまざまな不正を働いている国際競馬社会の敵である。今度は何を企んでいるのか?かねてからフィルマーを内偵中の英国ジョッキィ・クラブは、保安部員トー・ケルジイをカナダに送った。ケルジイは身分を隠し、ミステリ劇の覆面俳優として、ウェイターに化けて特別列車に乗込んだ。馬、馬主、厩務員、競馬ファン、そしてひそかな陰謀を満載して、大陸横断列車はスタートした。行手には、ロッキィの大自然と大いなる危険が待ち構えている。サスペンスが鉄路を走る。待望のシリーズ第27弾。
障害騎手キット・フィールディングは、レースで勝ち鞍をあげながらも心の晴れぬ日々を送っていた。馬主のカシリア王女の親類である婚約者ダニエルが、他の男に心を移しそうになっているのだ。その男は王女の甥リツィ王子。身分、財産ともにキットとは雲泥の差、しかも容貌、人柄もすぐれた紳士である。また、キットに恨みを抱く理事アラデックはレースのたびにキットをつけまわし、破滅させるチャンスを狙っていた。そんな時、カシリア王女の夫が会社の共同経営者ナンテールから脅迫を受けるという事件が起きた。王女から助力の依頼を受けて、キットは身を挺してナンテールと闘う決意をするが…。共にレースを勝ち抜いてきた王女の愛馬が殺され、デニエルやリツィの身辺にも危険が及びはじめた!前作『侵入』の主人公キット・フィールディングを再び登場させ、鮮やかなプロットに万人を魅了するレース・シーンを配して贈る、待望の最新作。