著者 : パオラ・マストローコラ
〜 自分がだれかなんて そんなこと どうしたらわかる!? 〜 アヒルに訪れた 人生を哲学するような難問! 次々と登場する まるで人間社会さながらのキャラクター達と一緒に、 楽しく そして一生懸命に でも時には ちょっと切なくもなりながら、 こたえを見つけていく物語 この世に生まれてくるとき、自分が何者かなんて知っている者は1人もいない。 でももしそれをずっと誰も教えてくれなかったら? そしたらもちろん、人生はかなりややこしくなる。 たとえば、このアヒルの女の子。彼女は自分が何者かを知らなかった。 なぜなら、クリスマスの夜、生まれたばかりだったこの子は、ジャックのトラックの荷台から転がり落ちて、突然ひとりぼっちになってしまったからだ。そして、たまたまそこにあった、ふさふさした毛に覆われたねずみのスリッパをお母さんだと思い込み、ぽかぽかと暖かく気持ちのよいスリッパの中で、まだ自分が生まれていない夢を見ながら、すやすやと眠った。彼女はこのネズミのスリッパのお母さんを持てたことがうれしかった。 こうしてすべてがこのまま変わらずに時が過ぎていくはずだった、もし、世界をもっと知りたいという願望が彼女に芽生えなければ。そしてみんなが彼女にこう尋ねなければ・・・『君はだあれ?』。 アヒルが「スリッパよ」と答えるのを聞いて、ジョージ・カストールはあっけにとられた。「ビーバーよ」と答えるのを聞いて、ポルトロン・ストレールは大きな黒いマントをひるがえし、彼女の周りをばたばたと羽ばたいた。そして、たくさんの出会いと冒険を経た後、彼女はトルマー先生と出会い、ついに自分の真の正体を知ることになる。 じゃあ物語はここで終わり?とんでもない。自分が何者であるのかを知ることは素晴らしいこと、なにより私たちに安心感を与えてくれる。でもだからといって、それだけで人が心から安らかに暮らせるわけじゃない。それにはさらに、たくさんの想像力と、何人かの素敵なともだちが必要だ。ひょっとすると、君に恋に落ちる孤独な狼も必要、かも・・・ 『君はだぁれ?』 (目次) 1 ふさふさした毛におおわれたスリッパの中で 2 考えるか、それともかじるか 3 ポルトロン・ストレールの黒い翼 4 足長族ゾーン 5 その朝、ある狼は… 6 カモクラブへのデビュー 7 お姫様 8 地界からの声 9 海辺にて 訳者あとがき
〜 何が生まれる!? 〜 3つのたまごを授かった、アヒルと狼の夫婦。 実践的になりたい狼は、妻(アヒル)の代わりに自分がたまごを温めると言い出す。 生まれてくるまでの「待つこと」をテーマにしたストーリー。 【帯コメント】 わたしたちはみな希望という名のたまごを温めている 大切なのは、未来を想像し温め続けること 今を信じて待ち続けること 作家・寒竹泉美 【装丁】 シャルロット井上 【作品解説】 この物語のテーマは「待つこと」である。 著者が提案しているのは、「待つこと」がもはやできない現代人に対して、「待つことはそう難しいことじゃないし、そう悪いことでもない」ということである。「待つこと」、それはすなわち、つまり一瞬だけでもいいから立ち止まってみようとすること、そして一瞬だけでもいいから周囲をじっと静かに見渡してみること、一瞬だけでもいいから自分の心に問いかけ対話してみることである。そのような目に見えないくらい本当に小さな個人的な変化が、信じられないかもしれないけれど、実際に世界を動かす大きな変化への一歩になるのだということを、この愛らしい登場人物たちが繰り広げるおとぎ話風の物語の変遷は語っている。 その可能性を信じるも、信じないも個人の自由。でも私たちはそろそろ、その小さな個人の変化が潜在的に持っている大きな世界への影響力を信じなければならない時代に来ているのかもしれない。と、そんなことをあれこれ思索したりするのも、本書でいう「待つこと」の一部なのだろう。 「訳者あとがき」より (『君はだぁれ?』の続編、ですが新展開ですので本作品のみでも楽しめます!)