著者 : パトリシア・ハイスミス
天才的犯罪者トム・リプリーが若き日に殺した男、ディッキー・グリーンリーフの名を名乗る者から電話が来た。これは最近引っ越してきた妙なアメリカ人、プリチャード夫妻の仕業か。だが、何のために?敵の正体が見えないままに、トムの過去が暴かれようとしていた…トム・リプリーの物語、最終編。
新鋭の建築家ガイは不貞の妻を憎み、富豪の息子ブルーノは父を憎んでいた。二人が列車内で偶然知り合って語らう中、ブルーノは衝撃の提案をする。「ぼくはあなたの奥さんを殺し、あなたはぼくの親父を殺す」当然ガイは断るが、すでに二人は運命のレールの上にいた…ハイスミスを一躍人気作家にした第一長編、新訳決定版。
数々の殺人を犯しながらも逃げ切ってきた自由人、トム・リプリー。悠々自適の生活を送る彼の前に、億万長者の家出息子フランクが現れる。少年は父親殺しの罪を犯していた。トムは自分を慕う少年とともにベルリンへと旅立つが、その地で誘拐事件に巻きこまれる…男と少年の奇妙な絆を美しく描き切る、リプリー第四の物語。改訳新版。
イタリアに行ったまま帰らない息子ディッキーを連れ戻してほしいと富豪に頼まれ、トム・リプリーは旅立つ。その地でディッキーは、絵を描きながら女友達マージとともに自由な生活をおくっていた。ディッキーに心惹かれたトムは、そのすべてを手に入れることを求め、殺人を犯す…巨匠ハイスミスの代表作。
パリ郊外で自由な生活をおくるリプリーのもとに、ロンドンの画廊から連絡が入る。天才画家ダーワットの死を隠して贋作販売を行なう事業にトムも一枚噛んでいたのだが、贋作が露見しそうな事態が生じたという。トムは画家に変装して危機を乗り越えようとするが…トム・リプリーの新たなる物語が始まる。
クリスマス商戦のさ中、デパートのおもちゃ売り場でアルバイトをする十九歳の女性テレーズは、美しい人妻と出会う。彼女の名はキャロル。テレーズは恋に近い気持ちを胸に、キャロルに誘われ自動車旅行へ。二人を待つ運命を、彼女たちはまだ知らない…サスペンスの巨匠ハイスミスが匿名で出した幻の恋愛小説、待望の本邦初訳。
たまたま台所にあったボウルに入っていた食用かたつむりを目にしたのがきっかけだった。彼らの優雅かつなまめかしい振る舞いに魅せられたノッパート氏は、書斎でかたつむり飼育に励む。妻や友人たちの不評をよそに、かたつむりたちは次々と産卵し、その数を増やしてゆくが…中年男の風変わりな趣味を描いた「かたつむり観察者」をはじめ、著者のデビュー作である「ヒロイン」など、忘れることを許されぬ物語11篇を収録。
息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへ旅立った。息子のディッキーに羨望と友情の相半ばする感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画する…。ルネ・クレマンによる名作『太陽がいっぱい』の原作であり、再び『リプリー』として映画化された、ハイスミスの代表作。
『太陽がいっぱい』で人気を博したハイスミスの「トム・リプリー・シリーズ」の一作。暗黒世界を飄々と渡り歩く自由人、トムに執着するフランク少年。ふたりの奇妙な出会いは、「父親殺し」を軸に急展開する。少年を破滅から救おうとトムは奔走するが…。犯罪が結んだ、男と少年の危険な関係を描くハイスミス晩年の力作。
パリ近郊のトム・リプリーのもとにロンドンの画廊から連絡が入った。天才画家ダーワットの個展を前にして、贋物を掴まされたと蒐集家が騒いでいるのだという。それも当然のこと、トムと画廊の仲間でダーワットが数年前に死んだことを隠し、贋作を作り続けていたのだ。トムは画家に変装して記者会見で健在ぶりを示すが、そこに当の蒐集家が現われ…。名作『太陽がいっぱい』に続くリプリー・シリーズ第二弾。
息子を呼びもどしてほしいという、富豪グリーンリーフの頼みを引き受け、トム・リプリーはイタリアへと旅立った。息子のディッキーに羨望と友情という二つの交錯する感情を抱きながら、トムはまばゆい地中海の陽の光の中で完全犯罪を計画するが…。精致で冷徹な心理描写により、映画『太陽がいっぱい』の感動が蘇るハイスミスの出世作。
エゴイストの女、男を替えて生きていく放蕩な女、作家をきどり、芸術にのぼせあがる女、善人面をして宗教や道徳を説く偏執狂の女…。ハイスミス一流の冷めた視線が〈女〉たちの嫌らしさとその残酷な最期を赤裸々に描きだす。女嫌い、女好き、フェミニスト、男性讃美者ー。その全ての人に贈る〈女嫌い〉というショート・ショート。待望の翻訳。
ニューヨークの喧噪を離れ、ペンシルバニアの片田舎で、執筆活動のかたわら夫や息子と穏やかに暮らすことを夢見たイーディス。だが、夫の伯父ジョージの突然の闖入によってその夢は脆くも崩れ去ってゆく。そんなときイーディスに残されたものは、一冊の厚い日記帳だけであった。やがて彼女は日記に描かれたもう一つの別の世界、彼女自身の幻想を生きはじめる…。
寝たきりの生活を続ける伯父ジョージと成人後も無気力でまったく働く気のない息子クリッフィー。息のつまるような現実のなかで、イーディスは次第に自らの狂気に陥ってゆく。やがて彼女は日記に記す…。「現実と夢の世界との差は、耐えられない地獄だ」。ハイスミスが現代の“狂気”を冷たく、乾いた筆致で描き切った傑作、待望の翻訳刊行。
父親の代から資産家で、趣味として印刷所を営む物静かで実直な夫、ヴィクター。一方、美しく奔放な妻、メリンダは、彼とのあいだに娘までもうけながら、次々と新しい男友達を家に誘い込む。やがて、二人のわずかな関係の軋みから首をもたげる狂気と突発的に犯される殺人。郊外の閑静で小さな町を舞台に、現代人が、かかえこまざるを得ない分裂症的な病理を、一人の男の心理と行動を通して、イメージ豊かに、また冷徹に描き出した、ハイスミスの傑作長編。
結婚に失敗し、精神的に疲れていたロバート・フォレスターにとって、幸せそうに生活する女性ジェニファーの姿をこっそり眺めることが、唯一のやすらぎだった。ある夜、ついに見つかってしまった彼を、意外にもジェニファーは暖かく迎え入れてくれる。その上、彼の孤独感に共鳴し、出会いを運命的なものと感じた彼女は恋人グレッグとの婚約を破棄してしまった。嫉妬と復讐にかられたグレッグは、ロバートを執拗にねらうが…。
結婚4年めの弁護士ウォルターと妻クララの間にはすでにすきま風が吹きはじめていた。ある夜、クララはパーティーの席で夫と会話をかわしていた女性との仲をかんぐり、夫婦喧嘩の末、自殺未遂の騒動をおこしてしまう。神経質な妻の性格に嫌気がさして、ウォルターはある新聞記事を思い出す。妻殺しの完全犯罪をおこなったとおぼしい男の記事を…。『太陽がいっぱい』、『見しらぬ乗客』の原作者、サスペンスの巨匠パトリシア・ハイスミスの初期傑作長篇。
動物学教授のクレイヴァリングはひとり南海の孤島へ船出した。伝説の巨大かたつむりを見つけ、歴史に名を残そうというのだ。だが運よく発見には成功したものの、船が流され、彼は島でたったひとりに…。孤立無援の男を襲う異常な恐怖を描く「クレイヴァリング教授の新発見」他、人間心理の歪みが生みだす恐怖と悪夢に彩られたサスペンスの鬼才の傑作短篇集。