著者 : ビートたけし
駆け出し芸人・綾小路きみまろは、雇われ支配人の多田や用心棒ヤクザの高橋に励まされてステージに立つ毎日。酔っ払い相手の漫談から、いつか売れる日を夢見るが…。70年代に花開いたキャバレーを舞台に綴る、笑いと哀愁とノスタルジー溢れる長編小説。
これまで語られることのなかった、芸人たけしが生まれた街と唯一無二の師匠の物語。 『フランス座』といえば浅草の伝説的ストリップ劇場、そしてビートたけしさんが修業時 代を過ごしたことでも有名です。が、芸人を志すきっかけとなった師匠の名は浅草の外に広く知られることはありませんでした。師匠との出会いと別れを、自伝小説に昇華させたのが本作です。 大学をドロップアウト、特に夢もなく浅草フランス座でエレベーター番のアルバイトを始めた主人公・北野武を、劇場で働くからにはコメディアン志望だろうと決め付けて「タケ」と呼んで可愛がり、仕事と住居を与えたのは浅草で誰もが“師匠”と呼ぶ芸人・深見千三郎。時は七〇年代、お笑いの中心がテレビやラジオに移りつつある中で、舞台でのコントを極める師匠に導かれながらも、「売れてみたい」という気持ちを抑えられないタケはやがて漫才という別の道を選びーー。尊敬しながらも超えてゆかねばならない師弟の姿を笑いと切なさで描く傑作青春小説。
みんな、一人で生まれて一人で死ぬ。だから今は一緒にいよう。鬼才ビートたけしが贈る冴えない男と愛犬の、笑いと涙の物語。たけし節全開のネタに笑い、とつとつとした語りに泣き、最後は胸があたたかくなる。大人のための、孤独と慈しみの寓話。画才溢れる挿絵17点を収録!
たけしがたどりついた“究極の愛”。狂暴なまでに純粋な、書下ろし恋愛小説。「お互いに会いたいという気持ちがあれば、絶対に会えますよ」すべてがデジタル化する世界で悟とみゆきが交わした、たったひとつの不器用な約束。素性も連絡先も知らないまま、なぜか強烈に惹かれあう二人の、「アナログ」な関係が始まった。いまや成立しがたい男女のあり方を描き、“誰かを大切にする”とは何かを問いかける渾身の長編。
弱体の草野球チームに“神様”がやってきた。弛みきったチームに、やる気を甦らせ、基本を徹底させ、秘策奇策を授けていく。やがてチームは連勝街道に乗るが、彼は人知れず姿を消した。神様が教えてくれた野球の神髄。それはどこか、生きる道にも通じていた…。表題作のほか、どんづまりの人生に風穴をあけようと一念発起するやるせなき男たちを、たけしが愛情こめて描く大人の童話5編。
「教祖来る。神と出会う集会開催」手渡された一枚のチラシ。そして、目前で実演される感動的な奇跡。うぶな和夫は、インチキを信じ教団職員となるが、そこに宗教はなかった。初代教祖が亡くなると、実権を握る総務主管・司馬は、二代目教祖に和夫を抜擢した。彼は教祖の聖性を否定し、自らの力で完璧な唯一神を創造しようとしていた。「現代の教祖」が、神への試練に挑んだ長編小説。
「ものにならなくてもいい、“あのひと”の弟子になって一度は芸人の世界に身を置いてみたい」-。気弱で目立たない青年が、一念発起、憧れの人たけしに弟子入りする顛末「あのひと」。高二の夏、女の子にもてたい一心で、ひたすら三浦海岸まで自転車を漕ぎ続ける少年の話「やじろべえ」。花火の音に喚起された少年の日の思い出「黒貌」など、小説家たけしが直木賞をねらった短編五編。