著者 : ピーター・ラヴゼイ
公園のブランコから女性の死体がぶらさがっているとの報を受け、ダイヤモンド警視は現場に急行した。自殺かと思われたが、まもなく女性が絞殺されたうえで吊るされたことが判明する。元夫、現在の恋人、レストランのヘッド・ウェイター、ビジネスマン、次々と容疑者が浮上するが、ダイヤモンド自身は捜査に集中できない状況に陥っていた。彼のもとに不可解な恋文や贈物が執拗に届いていたのだ。ダイヤモンドは今も亡き妻を愛しているというのに、誰がこんないたずらを?そんななか、失踪していた元夫が首吊り状況で死体となって発見される。それは類例を見ない首吊り処刑の連鎖だった…。男と女の愛と業を謎に絡め、英国ミステリ界の巨匠ラヴゼイが放つ意欲作。
出版社を経営するエドガー・ブラッカーが放火により殺された。彼は歯に衣を着せぬ物言いで作品を批判したり、出版の約束を反故にするなどして作家たちから恨みをかっていた。容疑者は12人、アマチュア作家の集まり“チチェスター作家サークル”の面々に絞られた。無実を訴えるメンバーの身辺を、サークルの新入りであるボブ・ネイラーは調べ始めるが、まもなく第二、第三の犠牲者が…。ラヴゼイが円熟のトリックを施した、極上の本格ミステリ。
英国最大の避暑地ブライトン。光学器械店を営むモスクロップは、海岸でゼナという女性に一目惚れし、やがて彼女と近づきになる。ある朝、水族館で女性の片手が発見された。地元警察はスコットランド・ヤードに応援を求め、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査が駆けつけ捜査を開始する。一方、ゼナを見かけなくなったモスクロップは、彼女が殺されたのだと思い警察に赴くが…英国ミステリ界を代表する著者の初期の話題作。
双子の姉と暮らすミス・オイスター・ブラウンは、五十歳を迎える現在までいつも汚れなき生活を心がけてきた。ところが、姉の留守中に犯したささやかな犯罪をきっかけにオイスターは思いもかけない窮地に立たされることに…模範的市民の中年女性に降りかかった皮肉な運命を描く表題作をはじめ、ブラック・ユーモアや洒落た味わいなど短篇巧者ラヴゼイの魅力が堪能できる18篇を収録。『煙草屋の密室』に続く第二短篇集。
パリを訪れた英国皇太子バーテイを、驚くべき知らせが待ち受けていた。長年の知りあいである伯爵家の娘の婚約者が、ムーラン・ルージュで衆人環視のなか射殺されたというのだ。やがて、娘に思いを寄せていた画家が容務者として浮かんだ。が、納得のいかないバーティは、旧知の女優サラ・ベルナールとともに、独自に調査を開始した。19世紀末の花の都に舞台を移し、英国ミステリ界きっての才人が贈る殿下シリーズ第三弾。
月曜日、イングランドでも有数の大邸宅で、一週間にわたる狩猟パーティーが始まろうとしていた。そんな矢先、招待客の一人の女優が、突然食卓に突っ伏し、息絶えた。しかも火曜日にはさらなる死体が飛び出し、そしてそのあとにも…館の女主人に招かれていたわれがパーティ殿下は、ここぞとばかりに名探偵ぶりを見せつけようとするが…。アガサ・クリスティーを思わせる設定で才人ラヴゼイが贈る殿下シリーズ第2弾。
戦争が終わり、平和をとりもどしたロンドンの街角で、2人の女が再会した。大戦中はともに空軍司令部に勤務していたが、今は2人とも相手を見つけて結婚していた。一方の女は公務員の夫のつましい給料で不自由な生活に耐えており、片一方の女は富豪の夫の金を湯水のごとく使い、しかも不倫の真っ最中だった。対照的な2人には、しかしひとつだけ共通点があった。自分の夫がうとましくてならなかったのだ。そして、片方の女がある危険な計画を耳打ちしたとき、運命の歯車がひそかに、ことりと動き始めた。強烈なサスペンスと意外性の最新傑作。
ロンドンのビジネス街にあるささやかな煙草屋の二階に、切手商が間借りしていた。間借りといっても、切手商は週に二回しか部屋に来ず、しかも部屋には家具もカーテンも絨毯もなかった。ある日切手商のことを調べに刑事がやってきて、煙草屋の主人は俄然好寄心にかられた。切手商は、なんのために部屋を借りたのか。空っぽの部屋で何が行われているのか…築二百年を経た建物の意外な来歴が惹き起こした犯罪を描く表題作はじめ、ブラック・ユーモア、とぼけた味わい、あざやかなツイスト等、さまざまな趣好の逸品16篇を収録した初短篇集。