著者 : ファン・マイケルズ
時は1838年、インディアンのセミノール族は土地を追われようとしていた。部族の窮地を救いに来た金髪の男スローンは、その中に美しい白人の娘を見つけ、驚いた。〈ワイルド・ハニー〉と呼ばれるその娘は、白い肌を持ちながらセミノール・インディアンとしてフロリダの自然の中で暮らすチャラ。美しさの中にも、インディアンとしての気高さを秘めたチャラに強く惹かれていくスローン。だが、チャラは誰かに似ている-スローンがその答えを見い出したときから、チャラの運命は、思いもかけない方向へと導かれていった。
25歳の美しい未亡人、ロイアル・バナーの船は、ブラジルに向かっていた。夫を亡くして間もない彼女だったが、自由への夢と希望に、胸はときめいていた。愛のない、みじめな結婚生活は終わったのだ。解放的な気持ちのまま、途中、リオの祭マルディ・グラーに行ったロイアルは、魅力的な男セバスチャンと、たちまち意気投合し、危険な誘惑と知りながらも、激しい抱擁に身をまかせてしまう。一夜かぎりのことと割り切ったつもりだったが、再びセバスチャンと顔を合わせることになろうとは。
オランダ人貿易商の養女、レンは18歳になったばかり。魅力的な男マルコームに、生まれてはじめての熱い思いを抱き、両親に結婚の許しを乞う。しかし、両親の反応は冷たかった。父リーガンは、海の旅から帰ったばかりの息子カレブに、レンの気を誘い、ひとときの恋の迷いから覚まして欲しいともちかけるのだった。両親の裏切りを知ったレンは、家をとび出し、愛するマルコームの許に走るのだが…。
レンが青春を賭けて愛した人、マルコームは財産めあての冷血漢だった。心も体も傷つき、自分の愚かさに打ちのめされたレンは、義兄カレブの船「シーサイレン号」に乗りこみ、懐しい故郷をあとにする。新大陸アメリカへ向かう船上で、レンを優しく労わるのは、かつての憎い人、カレブその人だった。逞ましい海の男に、次第にレンは心魅かれていくのだが…。執念の虜となったマルコーム、恋敵のセーラと共に、ふたりの運命をのせて、船は大西洋の荒波をわたっていく。