著者 : フィツジェラルド
老人として生まれ、若者へと時間を逆行して生きるベンジャミン・バトン。しかしその心は同世代の人間と変わらず、青春時代の苦悩や恋愛や結婚を経験し、戦争などの逆境に果敢に挑んでいく。不思議な人生を歩みつづける彼を、最後に待つものは…(「ベンジャミン・バトン」)。20世紀を代表する伝説的な作家による、ロマンあふれるファンタスティックな作品を集めた傑作選。
ハリウッドでその名を知らぬ者はいない大物プロデューサー、モンロー・スターの栄光と挫折、亡き妻の面影をもつ未亡人との情事、そして死を、ひとりの少女の視点を通して描く。フィツジェラルドは心臓発作に襲われ急逝するまで、自身の傑作『華麗なるギャツビー』を超えたいと本書に全力を傾けていた。遺された原稿と創作ノートから、本書がいかに素晴らしい作品となりえたかは想像に難くない。まさに未完の最高傑作である。
若き優秀な精神科医ディックは、富豪の美しい娘ニコルと出会う。医師と患者という垣根を越えて、恋に落ち、結婚した二人。富も名声も持ち、人を惹きつけて止まないこの夫婦は、多くの友人から敬われ慕われていた。二人の子に恵まれ結婚生活も順調に思われたリヴィエラでの夏、若き女優ローズマリーが現れディックに激しい恋をしたことから、彼らの運命が大きく揺さぶられ始めるー。自伝的色彩を強く放つ、著者最大の長篇傑作。
スイスで友人と病院経営をはじめたディック。ニコルとの関係はおだやかに見えるが、ローズマリーの出現以後、何かが決定的に変わっていた。ニコルの父の危篤、ディックを襲う疲弊とアルコール中毒、ローズマリーとの再会、そしてニコルの病からの目覚めー運命が結んだはずの二人の絆が崩れゆく様は、荒漠とした哀しみを湛えずにはいられない。賛否両論を浴びながらなお世界中のフィツジェラルド読者に最も愛される作品。