著者 : ヘレン・ビアンチン
目を開けたくない。いまはまだーそこにあの人がいるから。誰もが羨む、ハンサムで献身的な理想の夫アレハンドロ。でも病室に横たわる、記憶喪失の私には見知らぬ、怖い人。若くして多国籍企業の頂点に君臨し、社交界でも際立つ存在、スペイン系の大富豪が夫だと言われても、何も覚えていない。なぜかしら?出会ってわずか1カ月で熱烈な恋愛結婚をし、2カ月の赤ちゃんまでお腹にいるというのに何も感じない。それどころか、瞳の奥にくすぶる夫の情欲の炎が私をおびやかす。今朝も彼は甘く囁き、私は目を開けた。「エリーズ。愛している」
サンドリンはフランス人実業家ミシェルと電撃結婚したが、新婚6カ月で、二人の結婚生活には早くも暗雲が立ちこめる。サンドリンが撮影の仕事で家を離れることを、夫が認めないのだ。そんなふうに妻を束縛するなんて、と若い彼女は反発し、書き置きを残して、仕事の待つゴールドコーストへ向かった。ところがトラブルが発生し、サンドリンは帰れなくなってしまう。滞在が延び、資金が底をついたサンドリンたち撮影チームの前に、夫ミシェルが救世主さながら現れ、資金提供を申し出た。彼は怒りを込めたキスで妻を罰し、投資の対象はきみだと告げる。サンドリンが断れないことを承知で、彼は激しく妻を求めた。
カーリーは夫ステファノの浮気に耐えきれず家を出たが、 その直後、妊娠していることに気がついた。 それから7年、娘のアンーマリーは今や何よりも大切な存在だ。 だがキャリアも積み、ささやかな幸せをかみしめていた矢先、 娘の病気が発覚して莫大な費用が必要となってしまった。 一刻も早く手術を受けさせたいと焦るカーリーは、 顔も見たくないはずのステファノを訪ねる決意を固める。 彼は子どもの存在を知ったらどんな反応をするかしら? そして私は……彼と再会したらどうなってしまうのだろう?
職場の女性たち全員が、同じビルに事務所を持つ弁護士、高級スーツに身を包む独身貴族ザカリーに夢中になっている。ひょんなことから、ジェニーはザカリーと知り合うが、なぜか彼は、平凡なジェニーをこそ“理想の妻”だと思い込み、あっという間にプロポーズされてしまうのだった。しかし、ジェニーは5週間前に婚約者に捨てられたばかりで、少なくとも今は、どんな男性ともかかわり合いたくない。そう思っているのに、男っぽい魅力のザカリーを前にすると、田舎の娘みたいに、彼を意識せずにはいられなくて…。
テイラーは、姉の婚約者の兄であるイタリア人大富豪、ダンテに初めて出会ったときからひそかに憧れていた。数年後、彼女は思いがけない形で彼に再会する。姉夫婦が事故で亡くなり、テイラーは幼い甥を引き取ったが、それについてダンテが異議を申し立てたのだ。彼は自分にも後見人としての責任があると主張して譲らず、テイラーと甥に彼の大邸宅で一緒に暮らすよう迫った。彼の傍らで想いを抑えながら良い叔母を演じるなんて無理よ。でも、かわいい甥を一方的に奪われてしまうのは耐えられない。テイラーにはダンテの要求をのむよりほか、選択肢はなくて…。
ジアンナは電話に出るなり、相手が誰かすぐに気づいて青ざめた。 ──3年前から別居しているスペイン人大富豪の夫、ラウル。 離婚の手続きを進めようという話だと思っていたが、 驚いたことに、彼はジアンナに戻ってくるようにというのだ。 末期癌を宣告されたラウルの母が、ジアンナに会いたがっていると。 もう二度とあの家には戻らないと決めたのに……。 初めて会ったとき、ラウルは情熱的で優しい完璧な恋人だった。 だが、ジアンナの予期せぬ妊娠を機になぜかよそよそしくなり、 結婚後、不幸にも流産した彼女に冷たく背を向けたのだ。 いまだ燻る夫への想いを隠して、“名ばかりの妻”は旅立った。 上流階級の夫とその妻のドラマチックな愛の再燃を、人気作家ヘレン・ビアンチンが描きます。小さな誤解やすれ違いが何層にも重なって渦となり、愛し合う二人が翻弄されていく描写は絶品です!
リポーターのアリアンは、マノロ・デル・グアルドの屋敷を訪れた。著名な実業家であるマノロを、泊まり込みで取材するのだ。彼は妻を亡くしたばかりで、取材中も赤ん坊が泣く度に中座した。生後6カ月の娘がなつかず、ナニーがすぐに辞めてしまうのだという。その夜、アリアンは激しく泣く赤ん坊の声を聞きつけた。子供好きなのに子供をもてない体の彼女は衝動を抑えきれず、声を頼りに子供部屋へ向かうと、赤ん坊を懸命にあやした。アリアンの腕の中で安らかな寝息をたてはじめた娘を見て、部屋に入ってきたマノロは驚くべき提案をする。「このまま屋敷に残って、娘の面倒を見てくれないか」と。
幼くして両親を亡くしたクリスタは、これまでずっと、後見人のジャレッドが敷いたレールの上を走ってきた。高校を卒業するとすぐにヨーロッパの教養学校に通わされ、2年の留学期間を経て今、ようやく故郷へ戻ってきたところだ。これからは何事も自分で考え、自由に飛びまわりたい。そう決めた矢先、ジャレッドから信じられないことを告げられる。きみにはすでに決められた結婚相手がいるのだ、と。ジャレッドの暗く謎めいた瞳を見て、彼女はすべてを悟ったーー相手とは彼自身のことで、この結婚には愛などないということを。
父の死後、マリサの弟はひどく荒れだし、飲酒運転や暴力沙汰に明け暮れる毎日を送っていた。法外な額の罰金、家賃の滞納ーーマリサは金銭問題に頭を抱え、銀行に相談に行こうと車を出すが、タイヤがパンクしてしまう。惨めな思いでたたずむ彼女を、身なりのいい男性が助けてくれた。チェーザレ・ジャネリー。どこかで聞いたことのあるような……後でわかったのだが、彼こそマリサが家賃を滞納している借家の家主であり、広大なたばこ農園を経営する大実業家だった。マリサの困窮を知った彼は、なんと突然彼女に求婚する。「家政婦代わりの妻が欲しい
リーの逃げ口上は、「結婚するなら億万長者でなくちゃね」母子家庭で苦労して育ったため、端から結婚には興味がない。リーの唯一の目標は、経済的に自立したキャリアウーマンだった。あるとき姉を訪れるため飛行機に乗ると、隣に居合わせたのは、長身を高級スーツに包んだ、なんともセクシーなイタリア男。ひとめで惹かれたリーは、動揺のあまり彼を無視するが、そんな態度が逆に彼の興味を引いたのか、「どんな男が好みなんだ?」と強引に迫られてしまう。いつもの口癖で「お金持ちで健康な人よ」と返したところ、彼が姉の隣人の億万長者、マーク・