著者 : ヘレン・ビアンチン
職場の女性たち全員が、同じビルに事務所を持つ弁護士、高級スーツに身を包む独身貴族ザカリーに夢中になっている。ひょんなことから、ジェニーはザカリーと知り合うが、なぜか彼は、平凡なジェニーをこそ“理想の妻”だと思い込み、あっという間にプロポーズされてしまうのだった。しかし、ジェニーは5週間前に婚約者に捨てられたばかりで、少なくとも今は、どんな男性ともかかわり合いたくない。そう思っているのに、男っぽい魅力のザカリーを前にすると、田舎の娘みたいに、彼を意識せずにはいられなくて…。
テイラーは、姉の婚約者の兄であるイタリア人大富豪、ダンテに初めて出会ったときからひそかに憧れていた。数年後、彼女は思いがけない形で彼に再会する。姉夫婦が事故で亡くなり、テイラーは幼い甥を引き取ったが、それについてダンテが異議を申し立てたのだ。彼は自分にも後見人としての責任があると主張して譲らず、テイラーと甥に彼の大邸宅で一緒に暮らすよう迫った。彼の傍らで想いを抑えながら良い叔母を演じるなんて無理よ。でも、かわいい甥を一方的に奪われてしまうのは耐えられない。テイラーにはダンテの要求をのむよりほか、選択肢はなくて…。
ジアンナは電話に出るなり、相手が誰かすぐに気づいて青ざめた。-3年前から別居しているスペイン人大富豪の夫、ラウル。離婚の手続きを進めようという話だと思っていたが、驚いたことに、彼はジアンナに戻ってくるようにというのだ。末期癌を宣告されたラウルの母が、ジアンナに会いたがっていると。もう二度とあの家には戻らないと決めたのに…。初めて会ったとき、ラウルは情熱的で優しい完璧な恋人だった。だが、ジアンナの予期せぬ妊娠を機になぜかよそよそしくなり、結婚後、不幸にも流産した彼女に冷たく背を向けたのだ。いまだ燻る夫への想いを隠して、“名ばかりの妻”は旅立った。
リポーターのアリアンは、マノロ・デル・グアルドの屋敷を訪れた。著名な実業家であるマノロを、泊まり込みで取材するのだ。彼は妻を亡くしたばかりで、取材中も赤ん坊が泣く度に中座した。生後6カ月の娘がなつかず、ナニーがすぐに辞めてしまうのだという。その夜、アリアンは激しく泣く赤ん坊の声を聞きつけた。子供好きなのに子供をもてない体の彼女は衝動を抑えきれず、声を頼りに子供部屋へ向かうと、赤ん坊を懸命にあやした。アリアンの腕の中で安らかな寝息をたてはじめた娘を見て、部屋に入ってきたマノロは驚くべき提案をする。「このまま屋敷に残って、娘の面倒を見てくれないか」と。
幼くして両親を亡くしたクリスタは、これまでずっと、後見人のジャレッドが敷いたレールの上を走ってきた。高校を卒業するとすぐにヨーロッパの教養学校に通わされ、2年の留学期間を経て今、ようやく故郷へ戻ってきたところだ。これからは何事も自分で考え、自由に飛びまわりたい。そう決めた矢先、ジャレッドから信じられないことを告げられる。きみにはすでに決められた結婚相手がいるのだ、と。ジャレッドの暗く謎めいた瞳を見て、彼女はすべてを悟ったー相手とは彼自身のことで、この結婚には愛などないということを。
リーの逃げ口上は、「結婚するなら億万長者でなくちゃね」母子家庭で苦労して育ったため、端から結婚には興味がない。リーの唯一の目標は、経済的に自立したキャリアウーマンだった。あるとき姉を訪れるため飛行機に乗ると、隣に居合わせたのは、長身を高級スーツに包んだ、なんともセクシーなイタリア男。ひとめで惹かれたリーは、動揺のあまり彼を無視するが、そんな態度が逆に彼の興味を引いたのか、「どんな男が好みなんだ?」と強引に迫られてしまう。いつもの口癖で「お金持ちで健康な人よ」と返したところ、彼が姉の隣人の億万長者、マーク・レオーネだとわかって…。