著者 : ホルヘ・ルイス・ボルヘス
黄道十二宮を用いたイスラム教の加入儀礼の最中に宗派の導師が殺され、容疑をかけられた新聞記者。急行列車内で起きたロシア皇女のダイヤをめぐる犯罪に巻き込まれた舞台俳優。パンパの大草原を望むテラスで雄牛の行進を眺めつつ刺殺された農場主。下町の安ホテルに集う人々に新来の田舎者がもたらした波紋とその結末。雲南奥地の至聖所から盗まれた宝石を追ってブエノスアイレスへやって来た中国人魔術師の探索行……。身に覚えのない殺人の罪で投獄され、服役中の元理髪店主イシドロ・パロディが、面会人が持ち込む数々の難事件を対話と純粋な推理のみで解き明かしていく。熱心な探偵小説ファンでもあるボルヘスとその盟友ビオイ=カサーレスがH・ブストス=ドメック名義で合作。二十世紀文学の最前衛に位置する二人の作家のもうひとつの貌を教えてくれる、奇想と逆説と諧謔に満ちた探偵小説連作集。 H・ブストス=ドメック 序文 世界を支える十二宮 ゴリアドキンの夜 雄牛の神 サンジャコモの先見 タデオ・リマルドの犠牲 タイ・アンの長期にわたる探索 訳者解説
死の宣告、魔法による創造、死者と生者の邂逅、予測しえない悲劇、夢の中の処刑、王の約束、不滅の種族…古代ローマ、中国、インドの故事や、千夜一夜物語、カフカ、ポオなど、古今東西の書物から選びぬかれた92の短くて途方もない話。
ボルヘス、コルターサルを始め、アンデルソン=インベル、ムヒカ=ライネスなど本邦初訳10編を含む15作品が描き出す、ラテンアメリカの不思議な怪。「魔法の書」や「断頭遊戯」など未体験ゾーンをあなたに!
『伝奇集』はアルゼンチンが生んだラテン・アメリカ文学の旗手、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの代表作である。不思議な『百科事典』をめぐる奇譚「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」、夢の世界の〈秘儀〉を描いた「円環の廃墟」、永遠なる図書館の神秘を語った「バベルの図書館」、占星術や“無限のくじ引き”の歴史を考察する「バビロンのくじ」他、全17篇を収録。伝説、神話、博物誌等、虚実織り混ぜた、さまざまな書物に対する限りない偏愛に満ちた作品集。
『砂の本』は1975年に刊行された、ボルヘスの4冊目の小説集である。収められた13の作品は、一口に短篇小説というものの、そのなかでも長短さまざまあり、いずれの場合にも、ホルヘ・ルイス・ボルヘスならではといった刻印が、あざやかに読みとれる。