著者 : ポーラ・マーシャル
平凡な容姿のスザンナは4年前に婚約を破棄されたのを境に、継父に財産を奪われたあげく、行き遅れとして厄介払いされた。今、彼女はロンドンで令嬢の付き添いをして生計を立てていたが、令嬢の婚約を機にまた新たに働き口を探さなければならなかった。そんなある日、スザンナは何者かによって誘拐されてしまう!一文無しの私をさらうなんて、いったい何が目的なの?連れていかれた豪壮な屋敷で待っていたのは大富豪ベンジャミン・ウルフ。漆黒の髪に冷たい灰色の瞳の彼は、その名のとおり狼のような男性だ。先日、舞踏会で私のことをじっと見つめていた社交界の寵児だわ…。だがスザンナはまだ知らなかったー令嬢と間違われて誘拐されたとは!
亡き伯爵の遺言状が、今まさに読み上げられようとしている。後継者のジャックは、12年前に勘当されて行方知れず。莫大な遺産は、いったいだれが受け継ぐのか?ざわめく人々を、伯爵の養女キャスは部屋の片隅でそっと眺めていた。“スクラップ”-厄介者と親類に呼ばれる彼女は、今日で屋敷を追われる運命なのだ。そのとき、ひとりの男が現れて、全員が息をのんだ。ジャック…放蕩息子は生きていた。遺産も爵位も彼のものとなる。ところが、驚きはそれだけでは終わらなかったー新伯爵はいきなり、キャスに結婚を申し込んだのだ!
「叔父さん、ぼくを猿と結婚させるなんてひどいよ!」紅顔の美少年が口にしたその言葉が、幼き花嫁ベスの心をえぐった。訳もわからず父に手を引かれて祭壇に連れてこられただけなのに…。少年の名はドルー。将来、高貴な伯爵家の跡を継ぐ、若き花婿だ。ベスは泣きながら結婚したくないと訴えたが、結局儀式は行われた。しかし、まもなくしてドルーは妻を置いて去っていった。歳月が過ぎ、ベスは外出先でばったり再会したー10年ぶりに、夫と。誰もが振り返るその美貌は以前と変わらず、すぐに彼とわかった。だがドルーのほうは、目の前にいるのが妻のベスとはわからぬ様子で、彼女のうなじに唇を寄せ、囁いた。「美しい妖精さん、きみの名は?」
ダイアナは17歳のとき、両親に借金の形として老公爵へ差し出され、以来白い結婚を続けてきたが、夫亡き今は社交界で噂の的だ。“跡取りを産まなかった”“むこうみず”と後ろ指を指されても、彼女は臆することなく社交を楽しんだー嘆くな、これからは自由に生きろ、という老公爵の遺言に従って。貴族もそうでない者も男は皆、この若き貴婦人のあとを追いかけたが、彼女が惹かれたのはただ一人、准男爵ネヴィルだけだった。まじめで堅物との評判に反して、そつない会話と華麗なダンスでダイアナを魅了したネヴィルはしかし、彼女の前評判に眉をひそめていた。鼻の下を伸ばした求愛者リストなんぞに、我が名を連ねてたまるか!
10年前、富豪の一人娘エミリアは、アポロ像のようにハンサムでエレガントなドミニクに恋をした。太っていて不器量なエミリアに、彼はとても優しくしてくれた。だが、ドミニクに求婚されたとき、彼女は断ったーそれが財産目当てと知ったから。その後、父親が破産して自殺。エミリアの人生は一変した。今は痩せて、見違えるほど美しい女性に生まれ変わり、エマという名で家庭教師をしている。そして今度の雇い主は…伯爵となったドミニク!変貌したわたしを見て、彼は過去を思い出すだろうか?