著者 : マデリン・マーティン
社交界デビューの夜、バイオレットの夢は砕け散った。幼なじみのセスと最初のダンスを約束していたのに、彼女のドレス姿を見たとたん、彼は何も言わずに背を向け、そのまま別れの言葉もなく戦地へ行ってしまったのだ。わたしが美しくないから、きっとセスは幻滅したんだわ…。それからの月日は絶望のうちに過ぎ、6年が経った。夫を見つけられないなら出て行けと父に叱られたバイオレットの前に、戦地から帰還したセスが現れる。罪深いほどすてきな男性になって。兄亡き後ダルトン伯爵の称号を継いだ彼は、近く妻を迎えるという。そして、彼はバイオレットにきいたのだ。「なぜ君はまだ独身なんだ?」。
「今夜から、高級娼婦に教わるのです。男性を魅了する方法を」厳格な母のものとは思えない言葉に、エレナーは耳を疑った。衝撃さめやらぬエレナーだったが、破産寸前の伯爵家を守るためには“氷の女王”のあだ名を払拭し、今季中に結婚するしかないと言われ、やむにやまれず仮面とかつらで変装をして所定の館におもむいた。出迎えたのは麗しい“女性講師”と、すばらしくハンサムな紳士だった。チャールズと名乗る彼は、エレナーの相手役を依頼されたのだという。レッスンが始まり、教えをひたむきに実践するエレナー。だが、そのときの彼女には知るよしもなかった。チャールズが公爵であることを。そして、亡き父の宿敵であることを。互いの魅力に抗いながら続けたレッスンの成果で壁の花を卒業し、チャールズへの想いを押し隠して紳士たちと踊るエレナー。しかしある夜会で知人に秘密を暴露され、母娘は社交界を追放されて…。叶わぬ愛を夢見た乙女の、熱く儚いドラマチック・リージェンシー。
ある二人の居場所を突き止めるよう命じられたマリエル。その二人さえ見つけられれば、弟のジャックを返してもらえるうえ、自分たちは自由の身になれる。マリエルとジャックは両親亡きあと、スパイ、暗殺者、売春婦の元締めであるアーロンのもとに身を寄せざるを得なかった。そこでマリエルは、身分の高い者たちから秘密を聞き出すためのスパイとして教育されたのだ。彼女が最後の仕事を遂行するには、スコットランドから来た族長に取り入り、彼とともにスコットランドへと行く必要があってー。