著者 : マリオン・レノックス
最愛の祖母を失い、シャーロットは悲しみに暮れていた。英国貴族カーライル男爵の名をかたる詐欺師に騙された祖母ベティは、心労がたたり、愛犬たちをシャーロットに託して急死したのだ。さらに愛犬のうちの1匹、フロッシーが逃げだしてしまい、愕然とする。だが捜し疲れた彼女の前に、見知らぬ美男がフロッシーを連れて現れた。ようやく安堵したのもつかのま、悪天候で立ち往生した彼、ブリンを家に泊めることになり、シャーロットはたちまち緊張した。ああ、こんなにすてきな人と、ひとつ屋根の下で夜を明かすなんて…。ところが、真夜中になり、雷鳴に叩き起こされた彼女と犬たちは、恐怖のあまり、別室で寝ていたブリンのベッドの中に飛び込んだ!まさか彼こそが本物の、第12代カーライル男爵とも知らずに。
ホテルの清掃係のサニーは、とある客室で修羅場を目撃した。新生児を乗せたベビーカーを押していきなり入りこんできた美女が、その部屋の客、魅力的な大富豪マックス・グレイランドを相手に、赤ん坊の父親であるマックスの老父をさんざん罵って出ていったのだーにわかに事態をのみこめず呆然とする彼に、幼子を押しつけて。それは、急逝したマックスの父親が女性に産ませた子だという。彼がこちらの存在に気づかぬよう、サニーはじっと息を殺していた。だが、マックスはすかさず彼女に目を留め、鬼気迫る声で言った。「その掃除用具を置いて、この子を受け取ってくれ!」サニーは退けられなかったー彼の無茶な願いも、胸のときめきも。
貧しい家に生まれたクレアは幼少期にいじめられ、今は身寄りもない。苦学のすえ弁護士になるも、同僚の陰謀で失業してから孤島暮らしだ。ある日、嵐の海で溺れかけていた男性ラウールを助け、彼女はしだいに友情以上の気持ちを抱くようになっていった。そんな中、ラウールが衝撃の告白をする。「僕はさる国の皇太子なんだ」驚き、動転するクレアに、彼は一緒に王国へ来ないかと提案した。彼女は悲惨な身の上から、人前に出るのが怖く、内気だった。妃なんて務まるはずがない。つかのまの慰み者になるのがおちだわ。しかし、平民と皇太子の間に未来なんてないと知りつつも、彼を愛してしまったクレアはつかのまの夢に溺れていくのだった…。
病院で働くティナは、姉とその3人の幼子と暮らしている。姉は浮気性の夫に金品を持ち出されたうえに借金まで背負わされ、産後鬱を患っているので、ティナが支えなければならなかった。とはいえ、彼女自身も学費を返済中で生活に困窮しているため、子守りも雇えずやむなく生後5週間の姪を職場へ連れていった。すると、ハンサムで優秀と評判の産科医ジョックに見咎められ、未婚の母であることを隠して不正に職を得たといわれなき非難を浴びる。あまりに一方的な言葉に、怒りと悲しみに打ち震えたティナは、彼の頬に平手打ちをくらわせ、その場で仕事を辞めてしまうが…。
伯爵家の家政婦ジーニーの人生は苦労の連続だった。亡き夫が遺した借金の返済のため、義理の両親が営む店の掃除や弁護士事務所のパートタイム、伯爵未亡人の臨時秘書を務め、希望もなく働きどおしの毎日を送ってきた。その後、伯爵未亡人の城の家政婦として雇われ平穏な暮らしを得たが、雇い主が亡くなった今、思いもよらない遺言が明らかになった。現伯爵アラスデアと結婚しなければ、城が他人の手に渡るというのだ。さらに代々一族が支配してきた金融帝国も城と同じ運命にあると知り、怒りに打ち震えた伯爵は彼女に向かって蔑みもあらわに言い放った。「きみは家政婦以外の何者でもない。ぼくには近寄らないでくれ!」
アニーは海辺の町の病院で働き始めて8カ月になる。病院を取り仕切っているのは、百戦錬磨の医師トム・マカイバー。あまたの恋を経験する色男で、仕事の腕も超一流だ。赴任して間もなく、アニーはトムの衝撃的な言葉を耳にしていた。“ひどく地味な女性だから、ずっと独身のまま働いてくれそうだな”それでも病院を辞めないのは、彼が学生時代からの憧れの人だから。ある晩、アニーはトムの家の前に赤ん坊が置かれているのを見つけた。一夜をともにした女性が、こっそり押しつけていったらしい。突然幼い娘の父親になって奮闘するトムに、アニーは協力を申し出たーまさか、彼から結婚を申し込まれるとは思いもせずに。