著者 : マリオ・バルガス・リョサ
妻にして愛人、官能的な継母。非現実、幻想、追憶と欲望の女性。美貌の人妻ルクレシア、至上の美を求める夫リゴベルト、そして聖なる少年フォンチート。ラテンアメリカ文学の巨匠が描く巧緻を極めたエロティックな物語。
砂の降りしきる町の娼家「緑の家」、密林に覆われた尼僧院、インディオの集落。ペルー社会の複層性さながらに交錯する現代・中世・古代。盲目のハープ弾き、飲んだくれ、日本人の流れ者、そして女…。市民的規範には無縁のしたたかな人物群が多様多彩に躍動乱舞する。-ラテンアメリカ文学の豊かな土壌に育くまれ、前衛的な手法を駆使して濃密に織りなす、物語の壮大なる交響楽。
豊満で美しい継母ルクレシアの入浴姿を天井から覗き見る幼いアルフォンソ。耳や鼻など体のすみずみを磨きあげることに偏執的な喜びを見出している父親リゴベルト。ギリシア悲劇風の物語を織りまぜながら、少年の倒錯した心理、肉欲が昇華したエロス的世界を描く問題作。
19世紀の末、大旱魃に見舞われたブラジルの奥地に、突如現われた流浪の説教師。世界の終末と人類の滅亡を説く男は、たちまちにして貧困や飢えに悩む人々の心をとらえる。やがて、預言者を中心に安住の地カヌードスにたてこもる宗教的熱狂者の集団と政府軍の過酷な徹底的闘争が始まる。著者の円熟さを示す壮大な野心的大作。
1959年の夏、パリに到着したばかりのペルーの一留学生が買い求めた一冊の小説。それこそは、作家としての彼の人生を決定づけた「愛の物語」だった。現代ラテンアメリカ文学の最前線に立つ若き巨匠、マリオ・バルガス=リョサが、鍾愛の書『ボヴァリー夫人』をめぐってダイナミックに展開する、とびきり面白い文学論。
大人の世界に目覚める思春期の少年たち。彼らを取巻く堕落した社会。自己の衝撃的な体験を見事に昇華させ絶讃を博したラテンアメリカ文学の旗手、’63年の傑作。厳格な規律の士官学校で起こった試験問題盗難事件-密告、いじめ、軍事教練中の射殺…暴行、飲酒、喫煙、盗み、ばくち、カンニングなど、鬱屈しつつも虚勢を張った粗暴な振舞いをする少年たち。弱肉強食の悲情な世界での彼らの成長過程を通して、腐敗、堕落、暴力、不正、偽善にあえぐ現実社会を告発する!