著者 : ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ
愛する妻の貞節を信じ切れない夫は試しに妻を誘惑してみてくれと親友に頼みこむが…。突飛な話の発端から、読む者をぐいぐいと作者の仕掛けた物語の網の目の中に引きずりこんでゆくこの「愚かな物好きの話」など4篇を精選。『ドン・キホーテ』の作者(1547-1616)がまた並々ならぬ短篇の名手であることを如実にあかす傑作集。
前篇を読んでドン・キホーテとサンチョ・パンサの遍歴をおもしろがった冗談好きな公爵夫妻がしかけてくる新しいいたずらの数かず。相も変らず見当ちがいの正義感に燃えるドン・キホーテ。或る島の太守に任命され、島民のゴタゴタを見事に片づけ、予想外の手腕を発揮するサンチョ・パンサ。やがて公爵の館をあとにした主従はバルセローナへ向い、そこで銀月の騎士と決闘し、敗れ、長い遍歴の旅に終止符を打つ。
前篇の好評が偽作を生み、10年後にそれを正すべく書かれた後篇。前篇を読んだ人物が次々と登場する。みたび、世の不正をただすため、また魔法をかけられた魂の思い姫ドゥルシネーアを救うため、騎士道・従士道の本分をつくすべく旅に出るドン・キホーテとサンチョ・パンサ。彼らを連れ戻す役割を担った鏡の騎士(森の騎士)、思慮深き紳士らとの遭遇。そしてライオンとの対決、謎の洞窟モンテシーノスへの探検など、数々の冒険がくりひろげられる。
遍歴の旅をつづける騎士ドン・キホーテと従士サンチョ・パンサ。彼らをつれ戻すべく計られた村の住職と床屋による愉快な詭計。謎の高貴な人物カルデーニオと男装の美女ドロテーア、色男ドン・フェルナンドの絶世の美女ルシンダの明らかにされるロマンスをはじめ、親子愛、兄弟愛等々、旅篭を舞台にくりひろげられる悲喜劇。
スペインの片田舎の紳士が、騎士道小説の読みすぎで妄想に取り憑かれ、「世の不正を正すため」従者を引きつれ、遍歴の騎士となって旅に出る。狂気と正気の衝突、夢想へ向かっての猪突猛進、溌刺とした純愛ー世界文学に永遠の生命をもって登場した長篇小説を全4冊で贈る決定版。