著者 : ユベ-ル・モンテイエ
スイスの保険調査員ペーター・ロッスリはサルティーヌに同行してパリのレストラン巡り。次から次に出てくる料理とワインに胃の休まる暇もない。取材先のレストラン〈フロリレージュ〉で酷評されるのを恐れた店主からとっておきのコニャック〈ドリュモン〉を贈られる。ところがそれを飲んだサルティーヌ七転八倒のすえ死に至ってしまう。コニャックのなかから毒物が検出され保険調査員ロッスリは急遽コニャック地方の名門メーカードリュモン社へ調査に出向くことになった。
元老院議員の息子カエソは、パウロによって洗礼を受け、それによって、からくも義母との近親相姦の危険から逃れる。しかしそれも束の間、今度は男色家ネロの淫らな誘いを受けてしまう。皇帝の機嫌を損なうことは、即ち一家の破滅を意味する。宿命的ともいえる美貌ゆえに、カエソの困惑はますます深まっていく。やがて大火災がローマを襲う。ネロが火を放ったという噂が広がると、ネロはキリスト教徒に罪をかぶせ、彼らの大虐殺を決意する。彼らが建設しようとしている美徳の都と、ネロが永久にその名を冠することを望んでいる新しいローマ、輝くばかりの逸楽と背徳の都ネロポリスとは、永遠に相容れない存在だからだ…。主人公カエソはキリスト教徒として、ペテロと共に牢獄に因われる。
紀元一世紀半ばの帝政ローマ-それは歴史上最も劇的で絵画的な時代である。陰謀渦巻く宮廷での酒池肉林の狂宴、壮烈な戦車競走、円形劇場での流血の格闘、そして永遠の都ローマを紅蓮の炎で染めあげた大火災に代表されるスペクタクル-。物語は、元老院議員マルクス・アポニウスが、狂気の皇帝カリグラの気まぐれにより破産に追いやられる場面から始まる。そこに突然押しかけてきて彼と結婚する若くて美しい姪マルキア。そして、たぐいまれな美貌と鋭敏な感受性に恵まれた、マルクスの先妻の息子カエソ。やがて成人したカエソは、義母マルキアとの近親相姦の誘惑から逃れるために、折からローマに滞在していたパウロとルカに接近し、洗礼を授けてもらおうとする。パウロもこれを貴族階級への布教の足掛かりにするために、キリスト教の教義を熱心に説く…。逸楽と背徳の都ローマで繰り広げられる壮大な歴史絵巻。